身体がかゆくなるけれどもブツブツは出ていない、原因は分からないけれど全身がかゆい…季節の変り目にこんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。すぐに治る場合もありますが、もし続くようであれば何か原因があることも。
今回は主に皮膚が乾燥することによって起こる皮膚そう痒症という病気についてご紹介します。

目次

皮膚そう痒症とはどのような病気?

皮膚には何もできていないのにかゆみを感じる病気です。全身がかゆくなる場合と陰部など限られた部位だけかゆくなる場合があります。
発作的にかゆみが襲ってきたり、身体の中からかゆみがわいてくる感じがするなど、かゆみの程度は人によって異なります。

皮膚の構造とかゆみのメカニズムって?

皮膚は三つの層からできている

皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」の三つの層からできています。

表皮は皮膚の一番外側で外部の刺激から守り、体内の水分を保つ役割を果たしています。
真皮は主にコラーゲンと呼ばれるたんぱく質で構成されて皮膚の強さを支えるものとなっています。この真皮内にはかゆみや痛みなどを感じる神経、皮脂を分泌する皮脂腺や汗を分泌する汗腺などがあります。
皮下組織は皮下脂肪を蓄えて外部からの衝撃を和らげるクッションの役割をしています。

健康な皮膚の表皮は、水分と油分(皮脂)に覆われることで外部から異物が入るのを防ぎ、刺激から皮膚を守っています。

しかし、皮膚が乾燥する(ドライスキン)と皮膚の表面から水分や油分が失われ、バリア機能を保てなくなるため、外部からの刺激に無防備な状態となってしまうのです。
その結果、ささいな刺激にも敏感に反応してかゆみを引き起こしてしまいます。

ヒスタミンがかゆみの悪循環を引き起こす

かゆみが起こるメカニズムについてはまだすべて明らかにはなっていませんが、皮膚にある肥満細胞から分泌される「ヒスタミン」という物質がかゆみを引き起こすのではないかと考えられています。

ヒスタミンは、かゆみや痛みを感じる「知覚神経」に作用して、その刺激がかゆみとして脳に伝えられます。
さらに刺激が神経の末端にも伝えられて「神経ペプチド」という物質を出します。この神経ペプチドが肥満細胞を刺激して、さらにヒスタミンを分泌させていきます。

皮膚がかゆいからかくという行為は、知覚神経を刺激して神経ペプチドを放出させる原因となり、さらにかゆみ物質のヒスタミンの分泌を促します。
そのために、かゆみがどんどん広がり悪循環となっていくのです。

何が原因で発症する?

かゆみ

皮膚そう痒症の大きな原因はドライスキン、乾皮症です。
ドライスキン、乾皮症は加齢によって多く発症しますが、加齢とともに皮脂腺や汗腺の機能が弱り、さらに皮膚にあるセラミドや天然保湿成分の量が減ることが原因です。

ドライスキン、乾皮症の状態が続くと、かゆみを感じる神経が皮膚の表面の近くまで伸びてきて外部からの些細な刺激でもかゆみを感じ、さらに敏感になっていきます。
そのほかの原因としては、以下のようなものも考えられています。

  • 甲状腺の病気
  • 糖尿病
  • 腎臓の病気
  • 肝臓の病気
  • 血液の病気
  • 精神的なストレス

皮膚そう痒症は、空気が乾燥する冬に悪化して、湿気が多く汗が出やすい夏には改善します。エアコンや電気毛布などの暖房器具の使用や石鹸の使いすぎなどによっても悪化します。

どんな治療が行われる?

皮膚そう痒症は皮膚科で診断されます。強いかゆみがありながらも、発疹の症状が出ていない場合に皮膚そう痒症と診断がつきます。

その治療法としては、まずかゆみのきっかけとなる病気がないかを調べます。皮膚が乾燥しているときは保湿をします。
原因が見つからないときには、抗ヒスタミン薬やステロイド薬などでかゆみをコントロールします。

自宅でできるケアはある?

お風呂グッズ-写真

食事

身体が温まるとかゆみが増してしまうため、かゆみを感じる時には血行をよくする食べ物(アルコール類、香辛料の強い食べ物など)を控えます。

入浴

皮膚の乾燥を防ぐためには、入浴のしすぎや石鹸の使い過ぎ、に気を付けましょう。これらは皮脂膜を必要以上に落としすぎるので肌の乾燥を招きます。
また、熱すぎる風呂、長湯、ナイロンタワシなどでごしごし身体を洗うことも皮膚の刺激になるので注意しましょう。

温度・湿度

からだが温まるとかゆみが増すため、暖房器具の使用には注意しましょう。
かといって、夏場の高温多湿もかゆみを招きますので、適宜部屋の温度設定をしてください。
また、空気の乾燥は皮膚の乾燥を招くので、暖房を使うときは設定温度を低めにして同時に加湿器を使い部屋の湿度を保つようにしましょう。目安の湿度は40~60%です。(国立がん研究センター|かゆみ(皮膚掻痒)より)

衣類

肌に刺激となりやすい素材の衣類を避けるようにします。ポリエステルなどの化学繊維やウールはかゆみを誘発しやすいといわれています。
木綿や絹などやわらかい肌触りの良いものを選びましょう。洗濯は洗剤のこりのないようにしっかりすすぎましょう。

精神的ストレス

緊張、不安といった精神の不安定でかゆみは大きくなります。
できるだけストレスのかからないような生活をするようにしましょう。

髪型

おでこ、首筋、背中などに髪の毛の先が当たることでかゆみが起こることがあります。
髪を結わく、ピンで留めるといった工夫が必要です。

アクセサリー

イヤリング、ピアス、ネックレス、ブレスレット、腕時計などの金属の刺激でもかゆみが出ることがあるので、少しでも異変を感じたら身に着けないようにしましょう。

まとめ

皮膚がかゆいのにブツブツなどの発疹が現れないときに、皮膚そう痒症と診断されることがあります。ドライスキンが原因となることが多く、特に加齢によって高齢の方に発症することが多い病気です。
保湿剤の外用や抗ヒスタミン薬を内服して治療しますが、生活習慣が悪化要因となることもあるので、毎日の生活を見直すことも大切です。
肌の刺激を防ぐ、保湿する、規則正しい生活を送るなどを意識してみましょう。