妊娠期のサプリとして有名なものの一つに「葉酸」があげられます。

ではなぜ妊娠期に葉酸を積極的に摂取する必要があるのでしょうか?
今回は妊娠期の葉酸の役割について、詳しく見ていきたいと思います。

目次

葉酸とは何か?

葉酸とは水溶性ビタミンB群の一種で、ほうれん草やレバーなどに多く含まれています。細胞を増殖させるために必要となるDNAの合成などにかかわっているビタミンで、赤血球を作る際にも必要となります。

それでは妊娠期に葉酸が欠かせない理由について詳しく見ていきましょう。

1.胎児の神経管閉鎖障害の発生を減少させる

妊娠の初期は胎児の細胞増殖が頻繁に行われているため、この段階で葉酸が不足している状態であると、正常に細胞増殖が行われず、胎児の神経管閉鎖障害の発生につながる恐れがあるといわれています。

神経管閉鎖障害とは妊娠初期に神経管がうまく形成されず、脳や脊髄が正常に成長できずに生じてしまう障害のことで、妊娠4~5週目に起こります。

神経管の閉鎖部分によって二分脊椎無脳症に分けられ、出産後に何らかの治療が必要となったり、最悪の場合流産・死産につながることもあります。

二分脊椎

神経管の下部が閉鎖障害を起こした場合に生じます。

脊椎の管の中に納まるべき脊髄が外に出てしまったために、くっついてしまったり、傷をつけてしまったりして色々な神経障害を引き起こすことがあります。

知覚や運動機能が麻痺してしまったり、排泄がうまくできなかったり、合併症を起こすこともありますが、個人差が大きいため一概にはいえません。

無脳症

神経管の上部が閉鎖障害を起こした場合に生じます。
脳の形成がうまくいかず、流産や死産となることが多いです。

このような障害の発生頻度を抑えるために、厚生労働省からも妊娠を考えている女性への積極的な葉酸摂取を促進しています。実際に行われた臨床試験でも、葉酸摂取における神経管閉鎖障害の発生抑制は明らかにされています。

2.妊娠期の貧血を改善する

妊娠中は血液を通して赤ちゃんに栄養分を送るため、血流量が増加して貧血となることが多いです。葉酸はビタミンB12と協力して赤血球を作る役割を担っているため、貧血を改善するためにも用いられます。また葉酸だけではなく鉄分も一緒に取ると、より効果が表れやすくなります。

妊娠中の貧血は母体だけではなく胎児にも影響を及ぼしかねないため、しっかりとした対策が必要となります。

また妊婦検診などで貧血と診断され薬が出る場合がありますが、その際は必ず今服用しているサプリのことを医師に伝えて、続けて飲むべきか、辞めるべきか判断を仰ぎましょう。

3.妊娠高血圧症の予防に効果があるとされている

妊婦に約20人の一人の割合でおこるとされている妊娠高血圧症は、血圧が上がった状態が続き、むくみや頭痛、めまいなどの症状がでます。

重症化すると母体の脳出血や内臓の機能障害、また胎児の発育不全、胎盤早期剥離、胎児死亡などが引き起こされるため、慎重な対応が必要とされています。

この妊娠高血圧症の予防に関係しているとされているのが葉酸といわれています。

まとめ

葉酸は胎児の先天的な障害に対する関連性が報告されており、上記で紹介した神経管閉鎖障害のほかにも口唇口蓋裂、ダウン症などのリスク軽減にも効果があるとされています。

また妊娠2か月前から葉酸を摂取することで、神経管閉鎖障害を72%減らすことができるとされています(日本家庭医療学会より)。海外ではこのようなことを踏まえ、穀類に葉酸が添加されている場合もあります。

葉酸さえ摂取していれば障害が発生しなくなると言わけではありませんが、そのリスクを軽減することができるのです。妊娠を考えている女性は、葉酸についてもっと知識を深め、当たり前に葉酸を摂取するようにしていく必要があるでしょう。特に、神経管閉鎖障害の予防目的の場合、妊娠が分かってから摂取するより、妊娠前から摂取し続けておいた方が効果的です。「妊娠中の葉酸、正しい摂取量って?食事とサプリはどちらが優先?」の記事も、あわせてご覧くださいね。