水溶性ビタミンである葉酸は、植物に広く含まれており、妊娠中や妊娠を考えている女性には特に重要な栄養素です。新生児においては、不足すると神経管閉鎖障害という先天性の異常のリスクが高まります。

それでは、葉酸の具体的な効果や多く含まれる食べ物、妊娠を計画している時の摂り方などについて解説していきます。

目次

葉酸の働きは?

葉酸には、主に次のような働きがあります。

核酸合成や細胞分裂、アミノ酸代謝に関わる

食品から摂取した葉酸は、腸内細菌が合成したものと一緒に吸収されて、テトラヒドロ葉酸となり、補酵素としての働きをし、遺伝物質のDNAの合成や、細胞分裂ホモシステインのメチオニンへの代謝などに関わります。

造血作用

葉酸は、ビタミンB12とともに、赤血球を造る働きがあります。また、皮膚や粘膜を強くするためにも重要です。

葉酸の欠乏症について

葉酸が不足すると、正常な赤血球を造りだすことができなくなり、巨赤芽球性貧血となることがあります。巨赤芽球性貧血の症状としては、食欲不振、口内炎、出血傾向などがあります。

また、胎児の脳神経の発育にも重要で、新生児においては神経管閉鎖障害を引き起こす場合もあります。

神経管閉鎖障害とは

神経管閉鎖障害は、神経管が形成される妊娠4〜5週頃に起こる、胎児の先天性の脳や脊髄の閉鎖不全のことをいいます。さらに細かく分けると、二分脊髄脳瘤、脊髄瘤、無能症などがあり、葉酸の摂取が深く関係しています。

神経管閉鎖障害は、遺伝的な要素も関わっているので、葉酸だけで予防できるというわけではありませんが、葉酸の摂取によって発症するリスクが低くなるということがわかっています。

葉酸を多く含む食品と摂取基準

葉酸を多く含む食品

食品 1食あたりの量 葉酸の含有量
菜の花 100g(1/2束) 340μg
なばな 100g(1/2束) 240μg
ほうれん草 100g(小1/2束) 210μg
枝豆 80g(さや付き80g) 141μg
モロヘイヤ 50g(1/2袋) 125μg
ブロッコリー 50g(1/2株) 105μg
芽キャベツ 40g(5個) 96μg
春菊 50g(1/4束) 95μg
レバー 50g 500μg
ひよこ豆(乾燥) 30g(1食分) 105μg

出典:「栄養の基本がわかる図解事典」を元にいしゃまち編集部が作成

葉酸は、緑黄色野菜やレバー、肉、果物、豆類などに多く含まれています。

葉酸の摂取基準

単位μg( )内は耐容上限量

男性 女性
1〜2(歳) 90(200) 90(200)
3〜5(歳) 100(300) 100(300)
6〜7(歳) 130(400) 130(400)
8〜9(歳) 150(500) 150(500)
10〜11(歳) 180(700) 180(700)
12〜14(歳) 230(900) 230(900)
15〜17(歳) 250(900) 250(900)
18〜29(歳) 240(900) 240(900)
30〜49(歳) 240(1,000) 240(1,000)
50〜69(歳) 240(1,000) 240(1,000)
70歳以上 240(900) 240(900)

付加量 妊婦+240μg  授乳婦+100μg

出典:「改訂新版 栄養の教科書」を元にいしゃまち編集部が作成

厚生労働省では、妊娠可能な女性に対して、妊娠の1ヶ月前〜3ヶ月までは通常の食事に上乗せして、1日0.4mg(400μg)葉酸サプリメントの摂取を勧めています(参照:神経管閉鎖障害の発症リスク低減に関する報告書)。

胎児の健全な発育のためには、日頃から葉酸を意識しながらも、他の栄養素もバランス良くとり入れた食事をしていくことが大切です。妊娠中だけではなく、妊娠前からも健康管理に気をつけましょう。

まとめ

葉酸は、胎児の発育や造血に不可欠の栄養素です。保存や調理で損失されやすい性質を持つので、購入後はなるべく早く食べるようにしましょう。また、水溶性ビタミンは水に溶けてしまうので、スープや煮物など、汁まで摂取できる調理法がオススメです。