群発頭痛は、1年のうち1~3ヵ月のあいだに集中して起こる激しい頭痛発作です。それは「目の奥を鋭い刃物でえぐられるような痛み」と経験した人は表現します。発作のあいだは、脳が異常な興奮状態にあり、頭を自分で叩く、頭を壁に打ちつけるなどの行動が見られることもあります。

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根本的な治療はないが、それでも

群発頭痛の発生するメカニズムは、男性に多い病気であることから「男性ホルモン」が関係しているとする考えや、毎日決まった時刻に起こりやすいことから「体内時計の狂い」が関係しているとするなど、様々な説があります。しかし、その病態はいまだ解明されておらず、現在まで根本的な治療法はありません

群発頭痛に対する治療は大きく2つに分けられます。

  • 頭痛が出現したときの治療
  • 頭痛を予防するための治療

頭痛が出現したときの治療

病室壁のスイッチ

群発頭痛は激しい痛みなので、効果が早く現れる治療が望まれます。ロキソニンなどの市販の鎮痛薬(痛み止め)は効果がほとんどありません。治療にはスマトリプタンの「皮下注射薬」や「点鼻薬」と「純酸素吸入」が推奨されています。

自己注射や点鼻薬で痛みを抑える

群発頭痛には「スマトリプタン」という薬を一般的に用います。スマトリプタンには脳血管を収縮させる作用があり、片頭痛の治療薬としても知られています。

皮下注射をする場合は、ペン型の注射器を使い、太ももから自己注射(自分自身で注射をすること)を行います。また保険適応ではありませんが、点鼻薬も有効です。

発作が起こったときは、すみやかに使用することで、その後の症状を軽減できます。効果が出るまでの時間は皮下注射の方が早いと考えられています。

ある報告によれば、注射後10分で効果があらわれます。患者さんの63.6%が投与後10分で頭痛が軽減し、93.9%の人が投与後30分で完全に症状が落ち着くといわれています(慢性頭痛の診療ガイドライン|P311より)。

自己注射に抵抗がある場合や手技に難がある場合は、点鼻薬(や内服薬)を選択することもあります。

純度100%の酸素を吸入する治療

医療機関で行う「純酸素吸入法」も効果的で、ある比較試験によれば約80%の患者さんに改善がみられたと報告されています(慢性頭痛の診療ガイドライン|P227より)。

これは、医療用の純度100%の酸素をボンベからフェイスマスクを通して、毎分7リットルを15分間吸入する治療法です。酸素ボンベとマスクを自宅にレンタルすることもできます。

頭痛を予防するための治療

頭痛発作の起こる頻度を抑える予防治療には、カルシウム拮抗薬(ベラパミル)の服用が有効とされています。ベラパミルはもともと狭心症や不整脈の薬ですが、2011年9月より群発頭痛での保険適用外使用が認められています(慢性頭痛の診療ガイドライン|P230より)。

予防薬のなかでは最も効果がある薬の一つといわれており、服用をはじめて一週間以内で発作頻度が減少する、頭痛の程度が軽くなるといった報告が寄せられています。

日常の「心がけ」と「発作の予兆」

そのほか、次のような心がけが、大事であると考えられています。

  • 飲酒や喫煙はなるべく控える
  • 疲れを残さないために、睡眠不足は避ける
  • 夜にしっかり眠るため、昼寝をしない
  • 気圧が急激に変化する、飛行機の搭乗や登山は控える

まとめ

群発頭痛は病態に不明な点が多いため、根本的な治療は確立されていません。現在、対症療法として「頭痛が出現したときの治療」「頭痛を予防するための治療」の2つの治療があります。これらの治療を行うことで、発作の程度や頻度を抑えることができます。また、飲酒や喫煙を控えるなど生活習慣をかえることで、群発頭痛による苦悩は軽減できるようです。