皆さんは“不整脈”という言葉を聞いたことがありますか?その字面から、なんとなくイメージは湧くと思いますが、「不整脈って何?説明して」といわれるとちょっと困りますよね。今回は、不整脈の原因やメカニズムなど基本的な知識について解説します。
不整脈ってそもそも何?
不整脈とはその名の通り“脈が整わない”状態ですが、そもそも脈が整わないとはどういうことでしょう?
私たちの脈は、通常1分間あたり60~100回のペースで、かつ規則正しいリズムで拍動しています。
不整脈とは、大まかにいうとこれ以外の脈、つまり、ペースが100回より多かったり、60回より少なかったり、リズムが不規則だったりする脈すべてのことをいいます(実際には、脈拍は正常でも心電図に異常が現れるものも指し、QT延長症候群やWPW症候群などがこれにあたりますが、今回は省略します)。次項から、不整脈が生じる原因を説明します。
不整脈はどうして生じるの?
少し難しい話になるのですが、不整脈の原因を考えるためには心臓の生理学の知識が必要になるので、簡単に説明します。
心臓は、刺激伝導系と呼ばれる心臓内の経路を使って、電気的な興奮を心臓全体に伝え、心臓を収縮させます。
この経路のトップにはペースメーカーとなる細胞が存在します。ペースメーカー細胞は自律神経(交感神経と副交感神経)の支配を受けており、この細胞が脈のペースとリズムを決定して、興奮を下流の経路に伝えます。
いわゆる指令塔ですね。
指令塔から指令を受けた下流の経路は、秩序立って興奮を心臓全体に伝えます。秩序立った興奮の伝導には、ナトリウム、カリウムやカルシウムなどのミネラルが重要な役割を果たしています。
こうして、心臓全体に興奮が行き渡ると心臓が1回収縮します。
不整脈はこの一連の流れ、つまり、自律神経やペースメーカー細胞、下流の経路、血中ミネラル濃度のどこかに異常が生じることで起こります。
それでは、それらの異常を生じさせる原因についてもう少し掘り下げて説明します。
1.ペースメーカー細胞の異常
緊張や不安、運動などによって交感神経が活性化した状態、低酸素や循環血液量の少ない状態(貧血や脱水など)、 甲状腺機能亢進症などの病気では、ペースメーカー細胞がいつもより活性化してしまい、ペースの速い脈となります。
逆に、副交感神経が活性化した状態、心臓の病気(心筋梗塞、心筋炎、心筋症など)や心臓手術によるペースメーカー細胞の障害、甲状腺機能低下症などの病気では、ペースメーカー細胞の機能が低下し、ペースの遅い脈になります。
2.下流の経路の異常
主に心臓の病気によって心筋細胞が傷害されることで経路が障害され、興奮が伝わりにくくなります。脈のペースが遅くなる原因です。
一方、心筋傷害によって異常回路が形成されることもあります。
この場合、異常回路を興奮がぐるぐると回り続けるため、興奮が伝わる頻度が多くなります。脈のペースが速くなる原因として最も多いです。
3.血中ミネラル濃度の異常
カルシウムやカリウムなどは、心臓の興奮伝導に重要な役割を果たしているため、これらの血液中の量が変化すると、不整脈を生じます。ある種の薬剤や腎機能の異常など、様々な原因によってミネラル異常が出現します。
まとめ
以上、不整脈のメカニズムや原因についてお話ししてきましたが、いかがでしたか?少し難しかったかもしれませんが、今回の話のポイントは2つ!
①「1分間あたり60~100回のペースで、かつ規則正しいリズムで拍動している脈」以外はすべて不整脈
②不整脈は、様々な原因によって心臓の電気経路に異常が生じた状態
今回はとりあえずこの2点を押さえておきましょう。