食道アカラシアは良性疾患のため、アカラシアが直接の原因となって死亡することは基本的にはないと言われていますが、通常より食道がんになるリスクが高いと言われているために、定期的に検査を受けるなどの注意が必要となる病気です。今回は食道アカラシアの治療法についてご説明します。

食道アカラシアの概要については、「食べものが飲み込みにくくなる、食道アカラシアの原因は何?」 をご覧ください。

目次

食道アカラシアの検査

一般的な検査として、食道造影検査と食道内視鏡検査があります。外来で実施できます。

食道造影検査

バリウムと呼ばれる造影剤を飲んでバリウムが食道を流れる様子を観察して食道の形状などを調べます。バリウムが通るときの食道は、健康な人は直径2~3センチほどになりますが、食道アカラシアにかかると噴門が閉じたままなので、食道が拡がっていることが多く、直径が6センチ以上になることもあります。また、食道と胃の境界の部分が狭くなっていること、胃泡が見えなくなることも診断の目安となります。

食道内視鏡検査

食道の拡がりの程度を観察して唾液や食べ物が食道に残されている様子や食道の粘膜に異常がないか調べます。アカラシアは食道がんを合併する頻度が高いため、腫瘍があるかないかなども調べて、逆流性食道炎や食道がんなど他の病気の可能性も考えます。

治療方法は?

食道アカラシアの治療方法は、薬物療法、内視鏡を使った療法、手術療法と大きく三つに分けられます。

薬物療法

下部食道括約筋を緩めるために、カルシウム拮抗薬や亜硝酸製剤などが使われます。残念ながら自覚症状が強い場合では薬物療法だけでは回復しません。一時的な症状の緩和の治療や軽症の場合などに用いられます。

内視鏡を使った療法

内視鏡-写真

バルーン拡張療法

アカラシア専用のバルーンを使って狭くなった下部食道括約筋を拡げる治療が行われます。内視鏡を使って食道の狭くなった箇所でバルーンを膨らませることによって、下部食道括約筋を引き延ばして食べ物を通りやすくさせます。拡張後に再発した場合は、バルーンの直径を大きくして2回目を行う場合もありますが、繰り返し行うことによって下部食道周囲が炎症することもあります。

POEM

最近では、内視鏡を使った新しい治療のPOEM(内視鏡的筋層切開術)が開発されました。内視鏡できつくなっている食道の筋層を切り、食べ物の通りを改善する治療方法です。手術と比較して身体の表面に傷がつかないことや、バルーン拡張術や手術が行われた方に対しても治療を行えることが利点と考えられています。この治療法はまだ新しいため、長期的な効果が明らかになっていませんが、一部の施設で行われて良好な成績であったことが報告されています。

バルーン拡張療法、POEMともに、通過が良くなると同時に胃の内容物が食道へ逆流する恐れもあります。

手術療法

最も確実性の高い療法だと考えられています。食道の拡がりが大きい場合や食道が蛇行している場合、バルーン療法を行っても効果がみられなかった場合などに手術療法が行われます。

初めに下部食道活約筋とその前と後ろの筋肉の一部を切開して、食べ物が胃にスムーズに流れるようにします。そのままにしておくと、胃の内容物が食道に逆流してしまうので、胃の一部を使って食道を覆い、逆流を防止する手術を行います。

手術を行っても約2%の方が再発すると報告されていますが、内視鏡でのバルーン療法を施すことで効果が得られています。5%前後の方に逆流性食道炎の症状が認められていますが、薬物治療を行うことで改善しています。

日常生活の注意は?

食道アカラシアになると、食事中に食べ物がつかえるので、つかえた食べ物が食道を通過するまでに時間がかかり、水を飲んで流し込む経験をしていることが多いようです。

このような症状が長く続くときは、消化器内科、消化器外科を受診しても良いかもしれません。食事をしやすくするためには、喉通りが良い柔らかい食べ物を食べたり、よく噛むことが大切です。また、食道アカラシアにかかると食道がんの発生リスクが一般の方に比べて高くなることが知られています。アカラシアの治療後も食道がん検診のために、一年に一回の内視鏡検査をすることが勧められています。

まとめ

食道アカラシアの検査には食道造影検査と食道内視鏡検査があり外来で受診することができます。治療方法は、薬物療法、バルーン療法、手術療法の三種類があり、アカラシアの進行状況によって方法を選択します。食道アカラシアにかかると食道がんにかかるリスクが高くなるので、治療が終わっても食道がんが発生していないか調べるために一年に一回は内視鏡検査を受けましょう。