食べ物が上手に飲み込めない、戻してしまう、胸が痛い…。食道アカラシアという病気は、食道の機能異常と考えられています。
今回は食道のしくみや食道アカラシアについてご紹介します。

目次

食道のしくみとは

食道は、喉と胃を繋ぐ管状の器官です。胃や腸などと同じ消化器官ですが、消化作用はなく、食べ物を胃へ運ぶ輸送路の働きをしています。

食道は、上部から頸部、胸部、腹部の三つに分けられ、頸部食道は気管に、胸部食道は気管、気管支や大動脈などに接している部分で、腹部食道は、横隔膜から胃との接合部(噴門部)までの部分です。

食道には狭窄部(狭くなっている部分)が三か所あります
食道の入口部分、気管支と大動脈に抑えられている部分、そして胃に繋がる食道の出口部分です。

食道の働きとは?

食べ物を胃へ運ぶ

食道の働きは、口の中で噛み砕いだ食べ物や水分を胃に送り込むことです。
口から入った飲食物は重力にしたがって食道から胃へと自然に落ちているのではなく、食道の働きである「蠕動運動(ぜんどううんどう)」によって胃へと運びこまれています。

蠕動運動とは、筋肉が次々に収縮運動を起こす運動のことです。
蠕動運動のおかげで、横になっていても、逆立ちをしていても重力に関係なく食べ物は胃に届きます。

こういった、喉から食道、食道から胃へと食べ物を運ぶ運動は、意識とは無関係に起こっています。

食べ物が胃から逆流することを防ぐ

胃は強力な消化作用がある酸と消化酵素を分泌しているため、胃の内側は胃液に障害されないように強いバリア機能を備えた粘膜で保護しています。
食道の内側も粘膜によって保護されていますが、食べ物がスムーズに通り抜けることを目的としているので、熱いものやアルコールなどの刺激物から守ることはできますが、胃液を防御するほどのバリア機能はありません。

そのため、食道と胃の接合部分である「噴門」には「下部食道括約筋」があり、普段は胃の内容物が逆流しないように収縮して閉じています。
食べ物が噴門に着いたときに反射的に下部食道括約筋が緩んで噴門が開き、飲食物が胃へと流れこみ、再び閉じる仕組みになっているのです。

食道アカラシアとは?

食事をする女性-写真

食道アカラシアは、下部食道括約筋がうまく機能しない病気です。「アカラシア」とは「動かない」を意味するラテン語です。

下部食道括約筋の緊張感が高まり、食べ物を飲み込んでも噴門が開かなくなってしまいます。
同時に食道の蠕動運動も弱まるので、いつまでも食べ物が食道に溜まってしまい、狭くなっている部分より上の食道が次第に拡がっていくのが特徴です。

稀な病気で10万人に1、2人程度が発症すると言われています。
原因はまだ明らかになってはいませんが、食道の壁の神経細胞の変性によって起こるのではないかと考えられています。

良性の疾患なので、直接の死因になることは基本的にはありません。ただし、通常の方より食道がんになるリスクが高まるので注意が必要です。

食道アカラシアの症状は?

  • 食べものが飲み込みにくい
  • 胸やけがする
  • 胸がつかえる
  • 嘔吐
  • 胸の痛み

など

このような症状が精神的ストレス、冷水で悪化することが食道アカラシアの特徴です。

食べ物が胃の中に入らず食道内に留まるために、詰まるような感じがしたり、溜まったものが逆流してしまい嘔吐することもあります。

食道が拡張することで一時的に食事が入るようになっても、実際は食道の中に溜まっているだけなので、症状が悪化すると次第に食道が蛇行して食事がとれなくなる可能性もあります。

蠕動運動の機能が障害されると食道の筋肉が異常収縮を起こし、心筋梗塞のような激しい胸の痛みが起こることもあります。

逆流性食道炎との違いは?

下部食道括約筋の収縮力が低下して胃の内容物が食道に逆流するのが逆流性食道炎です。
主な症状は食道アカラシアと同じく胸やけや胸のつかえ感などですが、逆流性食道炎では食道に胃液が上ってきており、原因の面からも食道アカラシアとは全く異なる疾患です。

まとめ

食道アカラシアとは、食道の蠕動と胃食道接合部の弛緩の両方がうまくいかなくなる病気です。
原因はまだ明らかになっていませんが、食道の壁の神経細胞の変性によるものではないかと考えられています。

主な症状は、胸やけ、胸のつかえ感や嘔吐などです。
逆流性食道炎も似た症状が起こりますが、食道アカラシアは胃の内容物が食道に逆流はしません。