子供の視力が低下する原因はいろいろとあり、その中に眼自体に異常はみられず心理的なストレスによって起きているケースが存在します。このケースは心因性視力障害といわれます。今回は子供たちによくみられる心因性視力障害について、原因や視力低下以外の症状、治療方法などについて詳しく紹介していきます。

目次

心因性視力障害とは

心因性視力障害は、心理的ストレスによって視覚の障害が現れる心因性視覚障害(眼心身症)の中で、特に視力低下がみられた場合を指します。眼球や視神経に異常はありません。

心因性視覚障害の中でも、視力障害は最も多くみられます。8~12歳に多く、性別でみると女子は男子の3~4倍ほどになります(日本眼科医会より)。ほとんどの場合、本人は視力の低下に気づいておらず、学校の眼科検診で判明します。

心因性視力障害で現れる症状

視力を測る度に視力が変わったり、見ようとすると見えなくなったり、時と場合によって視力が変動します。近視や遠視、乱視になったからといって眼鏡をかけても視力はでません。一方で、凸レンズと凹レンズを組み合わせた度なしレンズの眼鏡をかけるとよく見えることもあります。

視野が狭くなる求心性狭窄や、視野を測っているときに視野が狭くなっていく螺旋状視野がみられることもあります。他にも色覚や立体視の異常、夜盲(周囲が暗いときに視力が特に落ちる)を伴うこともあります。

心因性視力障害を引き起こす原因

古い民家の縁側で、思いつめている様子の少年

心理的なストレスが原因とされていますが、はっきりしているものは約3分の2といわれていて、原因が特定できないケースもあります(学校保健より)。

原因は多岐に渡りますが、基本的には家庭内や学校での問題が発症のきっかけとなります。家庭内の問題としては、親の死や両親の離婚、親による差別・過干渉、兄弟げんか、塾や習い事の負担などが挙げられます。学校の問題には、転校やクラス替えといった環境の変化、友達関係・部活での悩みなどが考えられます。また、中には眼鏡への憧れが原因の場合もあります。

心因性視力障害の診断

視力の低下がみられた場合、上で述べたような状況に当てはまった場合に心因性視力障害が疑われます。また、ストレスとなるできごとがないかどうかも併せて聞き取ります。

  • 近視や遠視などの屈折異常がなく、眼鏡で矯正しても視力がでない
  • 眼球や視神経には異常がないにもかかわらず視力の低下がみられる
  • 度なしレンズ眼鏡をかけて測ると視力がでる(トリック検査)

網膜や視神経の電気生理学的検査(ものを見たり、眼に光の刺激を浴びせたりしたときに出る反応を調べる眼科検査)や、頭部のX線やCTなどの画像診断で異常がないか確認して診断することもあります。

心因性視力障害を回復させるのにできること

心因性視力障害は一時的に起こる症状で、いずれ必ず視力は戻ってきます。治るまでの期間は数ヶ月から1年以内が多く、数年ストレスが原因となっている場合は、ストレスにさらされない環境にするなどして症状が良くなることもあります。しかし、心理的な悩みやストレスは簡単に解決できるものではありません。原因がはっきりしない場合は、これといって決めつけないことも重要です。

保護者は医師と協力しながら、焦らず長期的に経過をみることが大切です。ときには学校の担任の先生と連携することも必要です。適度な距離を保ちつつ、スキンシップをとるなど子どもを理解・受容する姿勢を持ちましょう。点眼薬(目薬)をさしたり、度なしレンズの眼鏡をかけたりもします。

まとめ

心因性視覚障害は心理的なストレスによって眼に現れる反応です。自然に治ることが大半なので過剰に神経質な対応をとることや無関心な態度は避け、適度な距離を保って子供を温かく見守ることが大切です。医師と学校と連携をとることも重要です。