「悪性黒色腫(メラノーマ)」は皮膚がんの一種です。名前をご存知の方は多いかもしれません。悪性黒色腫(メラノーマ)は見た目がほくろと似ているため、ほくろが急に大きくなったり数が増えたときに、この病気が不安になった方もいるのではないでしょうか。悪性黒色腫(メラノーマ)の特徴や分類を中心に紹介します。

目次

悪性黒色腫とは?

基本情報

悪性黒色腫はメラノーマとも呼ばれ、皮膚がんの一種です。

皮膚は表面から、表皮(ひょうひ)、真皮(しんぴ)のふたつの組織で構成され、表皮の最下層には基底(きてい)層があります。基底層にはメラノサイトという、メラニン色素を産生している細胞があります。このメラノサイトががん化したものが悪性黒色腫です。

悪性黒色腫は、早期からリンパ節などの他の臓器に転移しやすいこと、他の皮膚がんと比べ悪性度が高く、再発しやすいことが特徴です。できるだけ早期発見し、治療することが重要となります。

白人に発生しやすいがんで、黄色人種である日本人では10万人あたり1~2人の発生頻度です(日本皮膚悪性腫瘍学会より)。

わかりやすい特徴は?

悪性黒色腫では、ほくろに似た黒い色素斑(しきそはん)が発生しますが、ほくろとは異なるのは次のような点です。

  • 左右非対称の不規則な形をしている
  • 正常な皮膚との境界がはっきりしない
  • 色合いがまだら
  • 大きさが6~7mm以上で、ふつうのほくろより大きい
  • 表面がもりあがっている

ほくろにしては大きいのが気にかかる、という場合には放置せずに早めに受診するのが良さそうですね。

悪性黒色腫の原因は明確ではありませんが、紫外線皮膚への摩擦(まさつ)、圧迫(あっぱく)といった外からの刺激が関係していると考えられています。

悪性黒色腫の分類

女医-写真

悪性黒色腫は、大きくの5つのタイプ(病型)に分類されます。病型は、見た目や顕微鏡(けんびきょう)による所見予後の観点などから分類されていますが、実際には明確に分類することが難しいケースもあります。

  • 悪性黒子(あくせいこくし)型
  • 表在拡大(ひょうざいかくだい)型
  • 結節(けっせつ)型
  • 末端黒子(まったんこくし)型
  • 粘膜(ねんまく)型

悪性黒色腫の症状、特徴、できる箇所

悪性黒色腫はそれぞれのタイプ(病型)によって症状予後に違いがあります。ここでは各病型における症状や特徴を解説します。

悪性黒子型

高齢者の顔面に発生しやすいタイプです。比較的長い期間に慢性的にうける紫外線の影響との関連を指摘されています。

境界がはっきりしないまだら状の平らなシミが現れ、次第に拡大し、腫瘤が出現したりします。10年以上かけて水平方向に徐々に大きくなり、ゆるやかに成長することが特徴です。

日本人では最も少ないタイプです。

表在拡大型

体幹や下腿(膝下)に発生しやすいタイプです。短期間で受ける強い紫外線が影響していると考えられています。

境界がはっきりしない、少し盛りあがったシミとして現れ、色調は濃い部分、淡い部分が混ざったまだら状です。黒色調だけでなく、赤色調が混在するケースや、全体が赤色調の場合もあります。比較的成長はゆるやかです。

白人に多い病型ですが、最近では日本人にも増加しています。

20歳から高齢者まで幅広い年齢層で発生します(愛知県がんセンター中央病院より)。

結節型

全身のあらゆる部位に発生し、黒色または濃淡の混ざった結節(硬いしこり)ができます。しこりのまわりにシミのような病変は生じないことが多いです。

はじめから急速に成長することが特徴で、腫瘍(しゅよう)の成長は垂直方向に進み、腫瘍の厚さが予後に関係します。この病型は、予後がよくありません。

40~50歳代に最も多くみられます(オノオンコロジーより)。

末端黒子型

日本人に最も多い病型で、足の裏、手のひら、手足の爪に発生し、なかでも足の裏に多く発生します。機械的刺激外傷が誘因となると考えられています。

形がはっきりせず、色調はまだらで褐色や黒褐色のシミが出現し、数カ月~数年を経て進行し、しこりや潰瘍(かいよう、ただれて穴があいた状態)ができます。爪に発生する場合は縦に黒い筋(すじ)ができ、徐々に爪全体に広がります。褐色~黒褐色の色素のしみ出しが爪の周辺の皮膚に出現することが、爪の悪性黒色腫の特徴です。

いろいろな年齢層に発生しますが、50歳代・60歳代以降に多く発生します(愛知県がんセンター中央病院オノオンコロジーより)。

粘膜型

メラノサイトは粘膜にもあるため、眼瞼(がんけん)、鼻腔(びくう)、口唇、口腔、消化管、外陰部(がいいんぶ)などの粘膜にも発生するケースがあり、日本人の場合は悪性黒色腫のうち7にみられます(オノ オンコロジーより)。

皮膚表面にできる悪性黒色腫と比較すると、発見しにくく、手術で広範囲に切除することが困難であること、粘膜には血管やリンパ管が豊富であるため、早期から転移しやすく、予後不良であることが多いです。

中年から高齢者に多く発生し、繰り返しの機械的刺激外傷が誘因となるといわれています。

まとめ

悪性黒色腫は皮膚がんの一種で、悪性度も高いため、いかに早期に発見し、治療につなげるかが大切となります。悪性黒色腫は一見ほくろやシミと似た所見を示しますが、違いを知り、早期発見につなげたいものです。