ほくろがだんだん大きくなっている…、と不安に感じている方はいませんか?皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)は、ほくろと似ているといわれていますが、見分け方のポイントはあるのでしょうか?また、悪性黒色腫が疑われる場合、どのような検査を受け、治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。
悪性黒色腫と通常のほくろとの違いは?どうやって見分ける?
悪性黒色腫 | ほくろ | |
色調 | 濃淡あり色調がまだら
複数の色調が混ざる |
均一な色調
褐色・茶色・黒色などの単一色 |
正常な皮膚との境界 | はっきりしない | はっきりしている |
形 | 左右非対称
不規則な形 |
左右対称
きれいでなめらかな円形 |
大きさ | 直径6mm以上 | 直径6mm以下 |
出典:オノオンコロジーを参考にいしゃまち編集部作成
ほかにも、
- 短期間のうちに大きくなる
- ほくろの一部が硬くなりしこりのようなものがある
- ほくろから出血や膿が出る
といった場合には、悪性黒色腫の疑いがあります。また、爪に黒い縦の筋(すじ)が出現し、色調が濃くなってくる場合にも注意が必要です。
病変部にかゆみや痛みがあることがたまにありますが、悪性黒色腫は皮膚病変以外には症状がほとんどありません。心配な場合には定期的に皮膚を観察し、新しく増えたほくろはないか、大きくなっているほくろはないか確認することが、早期発見するためには必要になります。
悪性黒色腫を診断するにはどのような検査が必要?
ダーモスコピー検査
ダーモスコピー検査とは、皮膚を10~20倍に拡大して観察する実体顕微鏡を用いた検査方法です。この検査は痛みが全くないうえ、色素の状態を詳しく診察でき、ほくろやシミと悪性黒色腫を見分けるのに役立ちます。
皮膚生検
皮膚生検とは、病変部を切りとり、採取した組織を顕微鏡で調べる診断方法です。しかし、悪性黒色腫では部分的に切りとると転移を引き起こすリスクがあると考えられてきたため、日本国内では、ダーモスコピー検査などで診断がつかない場合に行われ、手術で腫瘍全体を切除する全切除生検を行うことがすすめられています。
エコー検査
病変の厚さやリンパ節転移の有無などを調べるために実施されます。
CT検査・PET検査
治療前にCT検査、PET検査などの画像検査を行い、病変の広がりやリンパ節転移、他の臓器への転移を確認します。
悪性黒色腫(メラノーマ)の治療法
手術療法
他の臓器に転移がない悪性黒色腫では手術療法が選択されます。
悪性黒色腫は転移、再発しやすいがんであるため、病変部を残さず取り去ることが重要で、がんの端から数cmほど外側まで広めに切除します。
リンパ節転移があらかじめ分かっている場合は、所属リンパ節郭清(かくせい、リンパ節を切除すること)を同時に行います。術前に、リンパ節転移が明らかでない場合、手術中にセンチネルリンパ節生検(がんが最初にたどりつくリンパ節に転移が及んでいないか手術中に検査を行うこと)を行うことがあります。センチネルリンパ節に転移を認めた場合は所属リンパ節郭清を行います。
切りとる皮膚の範囲が広く、傷をぬい合わせることができない場合は、植皮(しょくひ、自分の皮膚の一部を切りとり、手術で切りとった部分にあててぬうこと)が行われることがあります。
放射線療法
悪性黒色腫は放射線療法が効きにくいがんです。脳や骨への転移に対して、症状をやわらげる目的で行われるケースがあります。
薬物療法
他の臓器に転移がある場合や再発例では薬物療法が選択されます。薬物療法の目的は、腫瘍を小さくし、進行を遅らせることです。従来の抗がん剤に加え、がん細胞の特性が研究によってわかってきて、それらの特性に働きかける薬剤の開発が進み、悪性黒色腫の治療にも用いられるようになってきました。
悪性黒色腫に用いられる薬剤を下記に挙げています。
抗がん剤
作用 | がん細胞を攻撃して増殖をさまたげる |
薬剤の種類 | ダカルバジンなど |
副作用 | 吐き気、嘔吐、脱毛、だるさ
骨髄抑制、肝機能障害など |
サイトカイン療法
作用 | がん細胞に直接働きかけ、増殖を抑える。
免疫を活性化し、間接的に がん細胞の増殖を抑える。 |
薬剤の種類 | インターフェロン |
副作用 | 発熱、頭痛、食欲低下、
白血球・血小板減少、肝機能障害など |
免疫チェックポイント阻害剤
作用 | がん細胞が免疫を抑制する働きに
ブレーキをかけ、自身の免疫が がんを攻撃する機能を高める |
薬剤の種類 |
ニボルマブ イピリムマブ |
副作用 | 間質性肺疾患、重度の下痢、皮膚障害、
肝機能障害、甲状腺機能障害、 白斑、重症筋無力症、Ⅰ型糖尿病 |
分子標的薬
作用 | がん細胞の増殖・進行に
関与するBRAF、MEKを阻害し、 がん増殖を促す信号をブロックする |
薬剤の種類 |
ベムラフェニブ ダブラフェニブ トラメチニブ |
副作用 | 関節痛、発疹、
だるさ、光線過敏症、眼障害、 皮膚がん(有棘細胞がん) |
出典:がん情報サービスを参考にいしゃまち編集部作成
免疫チェックポイント阻害剤、分子標的薬の登場により、抗がん剤とあわせて、メラノーマの治療の選択肢が増えてきました。しかし、いずれの薬剤にも副作用があります。
治療開始前にあらかじめどのような副作用が起きるのかを知り、副作用が出現したときにどう対処すればよいか担当医に確認しておきましょう。また、体調の変化があれば我慢せずに担当医に伝えることも大切です。
ほくろから悪性黒色腫になることはあるのか?

ほくろから悪性黒色腫になるかどうかについては、まだはっきりしていません。生まれつきあるほくろの中で特に大きいもの(先天性巨大色素性母斑)のうち、数%は将来がん化する恐れがあるといわれており、幼少時のうちに切除をすすめられるケースもあります。
悪性黒色腫の患者さんのなかには、ほくろを傷つけたことがきっかけだった、という方もいます。ほくろを自分でとろうとして傷つける、といったことは避け、できるだけ外からの刺激を与えないようにしましょう。
病変の厚さが転移のしやすさを左右する?
悪性黒色腫のうち、結節型(けっせつがた)では腫瘍(しゅよう)の成長は垂直方法に進み、腫瘍の厚さが予後に関係するといわれ、転移することが多い病型です。また、悪性黒色腫の進行具合を示す病期(ステージ)は、厚みや転移の有無によって決定され、厚みが増すほど進行していると判断されます。厚みがあるほど、より血管やリンパ管と接し、転移しやすくなります。
まとめ
悪性黒色腫とほくろは似ていますが、特徴に違いがあります。しかし、見た目だけで判断するのは難しいものです。悪性黒色腫は大きくなるほど転移しやすく、早期発見がキーポイントとなりますから、判断に迷った場合にはためらうことなく皮膚科を受診することが大切です。