パジェット病をご存知でしょうか?あまり聞き慣れない病名ですから、イメージがわきにくい病気かと思います。ここではパジェット病がどんな病気で、どのような症状に注意すればよいか解説していきます。

目次

パジェット病とは?

パジェット病は、皮膚に発生するがんの一種です。乳頭に発症する乳房パジェット病、外陰(がいいん)部、肛門の周囲、わきの下に発症する乳房外パジェット病の2種類があります。どちらもパジェット細胞というがん細胞が表皮に広がったものです。ちなみに、骨パジェット病という病気がありますが、これは骨の代謝異常によるもので全く違う病気です。

乳房パジェット病は、乳頭に近い乳管上皮(にゅうかんじょうひ)から発生し、乳管内を進行して乳頭まで達し、乳頭表面の皮膚に症状が現れたものです。乳がんとして扱い、非浸潤型(ひしんじゅんがた、乳管にとどまるもの)乳がんに分類されています。

乳房外パジェット病は表皮の中にパジェット細胞が発生し、それが広がったものです。皮膚がんとして扱います。

パジェット病の原因は不明で、遺伝や生活習慣から発生するリスクは現在のところわかっていません。しかし、発症が中年から高齢者に多く、ターンオーバーの乱れによる影響など加齢が何らかの要因となっている可能性があります。

パジェット病の症状、見た目の特徴

医師-写真

下記の表に示したように、症状や発症しやすい年齢や性別など、乳房パジェット病と乳房外パジェット病では特徴に違いがあります。

どちらのタイプも赤い湿疹、かぶれのような症状として現れ、単なる皮膚炎インキンタムシと思ってしまいそうな症状です。自分ではパジェット病を疑いにくいですが、市販もしくは皮膚科で処方された外用剤を塗布しても改善がなければ、時間を置かずに病院を受診することが大切です。

乳房パジェット病

好発年齢/性別 出現部位 症状
中高年

/女性に多い

乳頭部

乳輪部

(多くは、片側に出現する)

境界明瞭な紅斑・湿潤・かさぶた

かゆみや痛みを伴う

進行すると乳房内にしこりが出現

年単位で徐々に進行

乳房外パジェット病

好発年齢/性別 出現部位 症状
高齢者

/男性に多い

外陰部

肛門部

わきの下

へその周囲

境界明瞭な湿疹に似た紅斑・びらん

かゆみを伴うことが多い

進行すると病変内に結節や腫瘤が出現

出典:あたらしい皮膚科学を参考にいしゃまち編集部作成

パジェット病の進行は?見逃さずに早期発見するには?

パジェット病は、パジェット細胞が表皮にとどまっているものをいい、表皮の下の真皮まで広がっているものは「パジェットがん」と区別して呼びます。

表皮内(乳房パジェット病では乳管内)にとどまっていれば、転移のリスクも少なく、手術で切除ができれば予後も比較的良好です。しかし、診断や治療が遅れて進行してしまい、パジェットがんの状態になると、リンパ節への転移を生じやすくなります。他臓器に転移した場合には予後は良いとはいえず、できるだけ早期に発見して治療することが大切になります。

しかし、見た目がかぶれや湿疹、インキンタムシと似ているため、パジェット病とは思わず病院に行くのが遅れて悪化してしまうケースが多いのが現状です。乳房パジェット病で初期にはしこりがないため、乳がんを疑いにくいことも発見が遅れる原因となっています。加えて、病変が発生する箇所を医師に見せるのが恥ずかしいという気持ちから、受診に至らないケースもあるようです。

乳がんは、定期的な検診により早期発見を心がけましょう。また、なかなか治らないかぶれや湿疹がある場合は、放置せずに受診することが大切です。

まとめ

パジェット病には乳房パジェット病、乳房外パジェット病があり、皮膚に出現するという点は共通しています。一方で、症状や好発する年齢、出現する部位などに違いがあります。早期発見できれば予後が良いので、ぞれぞれの特徴を知っておくことは大切ですね。