日本では乳癌の患者数が年々増加しており、一生のうちに乳癌にかかる女性は12人に1人といわれています。検診を受けないと見つからない乳癌も多いのですが、日本における検診の受診率は欧米に比べてまだ低いのが現状です。乳癌を早期に発見すれば、生存率も高くなります。これを機会に、ちょっと時間を見つけて乳癌検診を受けてみませんか?

目次

なぜ乳癌は早期発見が大切なの?

乳癌では早期発見がとても大切です。しこりがなくリンパ節への転移がない(ステージⅠ)場合、10年後の生存率は約93.5%です(全国がんセンター協議会より)。つまり、早期の乳癌はほぼ完治し、命を脅かすことはほとんどないのです。また、早期であれば乳房を温存するなど治療の選択肢が広がるとともに、治療期間も短くなり、経済的負担も少なくすみます。

乳癌検診の種類

乳癌の発症ピークは40代から50です。40歳を過ぎた女性は、自覚症状がなくても2年に1回は乳癌検診を受けることが推奨されています。若年での乳癌発症も近年では多く報告され、親族に乳癌がいるとリスクは高まるので、40歳以下の若い方でも、超音波検診などを受けてみるといいかもしれません。また、自覚症状がある女性は年齢に関係なく医療機関を受診してください。

乳癌検診には、問診・視診・触診・マンモグラフィ・超音波(エコー)検診などがあります。

「視触診単独」による検診も以前は行われていましたが、現在では、ガイドラインにより行わないことが推奨されており、マンモグラフィや超音波などの画像検査を必ず受ける必要があります。自治体ではマンモグラフィ検診が広く行われていますが、近年では、マンモグラフィと超音波を組み合わせることにより、精度が上がることが多施設共同研究で示され(2016, 大内ら、Lancetより)、両方受けるのもよいでしょう。

問診

問診は、医師と対面して乳癌にまつわる様々な質問に答える形で行われます。主に、月経周期、初潮・閉経時期、妊娠・出産経験の有無、病歴、家族の病歴、未婚・既婚、気がかりな症状などについて聞かれます。

乳がんの問診で重要なのは

  • 初潮開始年齢
  • 生理があるか、閉経しているか
  • 妊娠、出産歴の有無
  • 授乳歴の有無
  • 血縁のある家族の乳癌、卵巣癌の病歴
  • 女性ホルモン治療歴の有無

ですので、これらの項目は事前に確認しておくと良いでしょう。

月経周期は乳癌のリスクとは直接関係ないのですが、マンモグラフィや超音波、MRIなどを受ける上で必要な情報となります。なぜかというと生理前には乳房の濃度が高くなっており、どの画像検査でも診断がつきづらくなってしまうためです。

そのほか、遺伝子変異による乳癌を「遺伝性・家族性乳癌」というのですが、遺伝性・家族性乳癌になりやすい家系(遺伝子変異を持つ家系)ですと、卵巣がんの既往歴も重要になってきます。

視診

視診は、医師が乳房を観察するものです。具体的には、乳房の左右対称性、ひきつれや陥没、皮膚の変化がないかを確認します。

触診

触診は、医師が乳房に触れて異常がないか確認するものです。座った状態と仰向けの状態の両方で行いますが、自治体検診などの場合は、座った姿勢だけのこともあります。具体的には、指で乳房やわきの下のリンパ節を触診し、しこりや異常がないかを確かめます。

マンモグラフィ

乳房専用のX線撮影装置を使ったレントゲン検査で、放射線技師によって行われます。乳房を圧迫板とフィルムの入った板ではさんで撮影します。左右それぞれ、上下と斜め方向から、最大で4回行われます 。

マンモグラフィについては、長所と短所があります。

長所

  • 無症状のひとにおいても、乳癌の初期病変のひとつである微細石灰化を検出できる。
  • 乳腺の密度が濃くない50歳以上の女性では、早期発見につながる可能性が高い
  • 通常は認定を受けた施設で、講習および認定を受けた技師により撮影され、マンモグラフィ読影認定医により読影される(日本乳がん検診精度管理中央機構による認定)。そのため、検査の客観性や読影の正確性は比較的高い

短所

  • 乳房を圧迫して薄く引き延ばすため、痛みを伴う。
  • 乳腺の密度が濃い方(40歳以下の女性、もしくは高齢でも乳房密度が高い人)はしこりの発見が難しい。
  • 微量だが放射線被曝があり、流産や催奇形性などを引き起こす被曝量ではないが(両側1方向撮影で0.36mSv以下、2方向で0.72mSv以下)、妊娠中には通常検査できない

超音波(エコー)検診

乳房に超音波を当て、反射してくるエコーを画像化し、その様子を診る検査です。横になって乳房にゼリーをぬり、乳房の上で超音波を出す機械を動かしてしこりの有無を確認します。

こちらの検診も、長所と短所があります。

長所

  • 触診ではわからない小さなしこりを見つけることができる。5mm程度のしこりから見つけることが可能。
  • 乳腺の密度が高い40歳以下のしこりも発見することができる。
  • 検査中の痛みや放射線被曝がない。

短所

  • 乳癌の超初期の症状である微細な石灰化を見つけるのが難しい
  • 再現性に乏しい。超音波技師の技術や医師の判断能力によって結果が左右されやすい

超音波に関しても、マンモグラフィ同様に施設認定や認定医師などの話が進んでいますが、完全に整備されるのはまだ先のことと思われます。

上記以外に、MRI検査という画像診断を行うことがあります。この検査は主に乳癌とわかった場合に、癌の広がりを確認するために行われます。まれに、診断が難しい場合などに乳がんかそうでないかを判断するためにも行われます。家族性乳癌では、年1回MRIでスクリーニングすることが勧められています。

乳癌検診を受けたい―費用の目安は?どこで受診?

乳癌_悩む

費用の目安

40歳以上の女性

40歳以上の女性に対しては、自治体(市区町村)による乳癌検診が実施されており、2年に1受診することができます(地域によって条件が異なり、実施しないこともあります)。その場合、費用負担は市区町村によって異なりますが、たいだい0円~3,000円くらいです。

企業に勤務している場合は、企業の検診制度に従って受診できる場合があります。費用負担は企業ごとに異なりますので確認してみてください。

40歳未満の女性

40歳未満の女性の場合、自治体による検診で費用が負担されることはほとんどありません。

自身や配偶者が企業に勤務している場合は、企業の検診制度に従って受診できる場合があります。費用負担は企業ごとに異なりますので確認してみてください。

それ以外の場合は、全額自己負担になります。

自己負担の場合、マンモグラフィ検診5,000円前後・超音波検診(エコー)3,500円前後・両方受診した場合は10,000円前後になります。ただし、診察やその他のケアなど含めて、15,000円~20,000になる医療機関もありますので、事前に問い合わせるとよいでしょう。

どこで受診?

乳癌検診は市や区の検診センター、自治体指定の病院、がん検診センター等で受けられます。そこでまず触診やマンモグラフィ、超音波検査等を受け、疑わしい場合は要検査の通知が送られてきます。

再検査の場合や、最初から乳癌の検査をきちんと受けたい場合は、乳腺外科か外科、外科のある総合病院などを受診してください。

まとめ

乳癌の発症率が上がる40代から50代は、家族のケアや仕事など、自分のことをかえりみる時間があまりない多忙な世代ともいえます。でも、少しだけ自分の健康のために乳癌検診の時間を見つけてみませんか?怖いのは知らないまま放っておくこと。何も見つからなければホッとひと安心。もし乳癌が見つかっても、早期であればほぼ完治できるのです。検査に興味を持った方は、こちらからレディースドックを予約できますよ(「人間ドックのここカラダ」のページが開きます)。