風が当たっただけでも痛いという「痛風」。名前を聞いたことのある方は多いと思います。しかし、この病気の詳しい病態や症状についてまでは知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?今回は痛風の病態や症状、治療について解説します。

目次

痛風を知る前に高尿酸血症を知ろう!

痛風を知るためには、まず高尿酸血症という病気について知っておく必要があります。なぜなら、痛風は基礎疾患に高尿酸血症を持っている人に起こりやすい病気だからです。

高尿酸血症とは、血中の尿酸値が7.0mg/dlを超えたものをいいます。この状態を放置しておくと、痛風を始め、腎臓機能の低下、動脈硬化や脳出血、心筋梗塞、尿路結石など様々な合併症を引き起こすことになってしまうのです。

痛風発作が起こるまで~痛風発作のメカニズム~

痛風とは、関節内に尿酸塩結晶と呼ばれる物質が現れることによって引き起こされる関節炎です。

尿酸塩結晶は、普段は尿酸として血液中に溶けています。しかし、過食・大量飲酒・肥満・ストレスなどが原因で急激に血中尿酸濃度が上昇したり、温度の低い環境などが原因で尿酸が血液中に溶けにくかったりすると、尿酸の結晶化が起こりやすくなります。これが、痛風発作を引き起こす原因となるのです。

そのため、もともと血中の尿酸値が高い人は痛風になりやすいといえます。

痛風発作の症状とは?

それでは、痛風の症状にはどういうものがあるでしょう?

有名なのは、足の親指の付け根に突然激痛が起こり、真っ赤に腫れるという関節炎の症状でしょう。急性の症状としてはこれが最も多く、全体の7割を占めるといわれています。

これは、足の付け根の関節が

  • 心臓から遠い位置にあって血流が乏しいため冷えやすい
  • 運動量が多く酸性化しやすい

という、上で述べた尿酸塩結晶を作りやすい環境にあるためだといわれています。

この関節炎症状は、通常何も治療しなくても1週間以内には治まります。しかし治療をせずに放置すると、痛風の起こる頻度は数年に1回から年に数回へと次第に増加し、他の色々な関節にも発作が見られるようになります。

また、足の付け根や手の指・耳に尿酸塩結晶が析出して無痛性の痛風結節ができるほか、さらに重症化すると、腎臓にも尿酸塩結晶が沈着して腎機能障害がみられるようになります。

30歳以降の男性は特に注意!~痛風の疫学~

男性6

かつて、日本では痛風は非常に稀な疾患とされていました。しかし食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加に伴い、罹患率も増加しています。

痛風を発症するのは、男性がほとんどです。女性はホルモンの働きによって尿酸が体外に排出されやすいため、痛風患者の男女比はおよそ20:1と、圧倒的に男性の方が多くなっています(愛知県薬剤師会より)。

男性において痛風の有病率は、30歳以降では1%を超えていると推定されます。さらに、痛風の原因となる高尿酸血症については、30歳以降の日本人男性では30%に達していると推定され、現在も増加傾向です(Mindsより)。

痛風の治療は?

痛風発作が起こっているときは、抗炎症薬(NSAIDsやコルヒチン)を用いて治療します。

発作が治まっているときは、痛風のもとになっている高尿酸血症の治療を行います。まずは生活習慣の改善です。高尿酸血症を促進させる原因で有名なのは、プリン体を多く含む食品(例えば魚の干物やレバー、乾物、ビール)です。また、アルコール(ワイン、焼酎、日本酒など)は体内のプリン体分解を促進して尿酸を増加させ、さらにアルコール分解に伴って生成される物質が尿酸の排泄を妨げるため、高尿酸血症を引き起こしやすくなります。

ほかにも、内臓脂肪の蓄積は尿酸の産生を促進するため、尿酸値を上げてしまいます。そのため、プリン体の少ない食事・飲酒制限・食事や運動による肥満の解消といった生活習慣の改善を第一に行います。

これらを行っても尿酸値が低下しない場合は薬物療法も考慮します。

最後に

ここまで、痛風の病態や症状・治療について解説しました。痛風は生活習慣の改善で防止することができる病気です。痛風発作を起こしてしまうと本当に辛いので、日々の生活を見直して健康で楽しい人生を送りましょう!