子宮腺筋症は耳慣れない病名かもしれませんが、ひどい生理痛(月経困難症)や過多月経(月経量が多い)、不妊で悩まれている方はこの病気が隠れている可能性があります。ここでは、子宮腺筋症とはどんな病気か、詳しい症状や原因についてお話ししたいと思います。

目次

子宮腺筋症ってなに?

子宮腺筋症は、子宮内膜が子宮の筋肉の中にできる病気です。
子宮内膜は本来、子宮の内面を覆うもので、女性ホルモンの作用を受けて厚みを増したり、剥がれたりを繰り返します。生理前に増殖して厚みを増し、妊娠していれば赤ちゃんのベッドとなり、妊娠していなければ剥がれ落ちて月経として体外に排出されます。
この子宮内膜が子宮の内面以外にできることを子宮内膜症と言いますが、子宮の筋肉の中にできるものは原因や治療方法が違うため、子宮腺筋症という名前になっています。

子宮腺筋症の原因は、正常の子宮内膜が何らかの理由で子宮の筋肉のなかに深く潜り込んで行くためではないかと言われていますがはっきりとはしていません。この深さが子宮の筋肉の厚みの80%を越えるとひどい生理痛(月経困難症)を起こします。

子宮腺筋症は20代~更年期の女性に発病しやすく、40歳代がピークとされています。不妊症の合併率は、子宮内膜症(外性子宮内膜症)に比べて少なく、経産婦(出産経験のある方)に多いとされています。子宮筋腫との合併も多く、子宮筋腫がある方の1/3~1/2は子宮腺筋症を合併しているといわれています。

子宮腺筋症の症状

子宮腺筋症の主な症状は下記のようになります。

ひどい生理痛(月経困難症)

子宮腺筋症による月経困難症は、生理開始直前から生理中にかけての激しい骨盤痛が発作性で間欠的に表れるのが特徴です。生理痛がある日突然強くなることが多いですが、数年かけて徐々に痛みが強くなる場合もあります。

生理痛の痛みの度合いを10段階に分けて、0が痛みのない状態、10はこれ以上の痛みは想像できないほど強い痛みとすると、子宮腺筋症の方の多くは「10」と答えられるというぐらい激烈な生理痛に悩まされます。
出産を経験した方が、子宮腺筋症の痛みを陣痛の10倍痛いと表現したという話もあります。重症の子宮腺筋症になると、痛みが足や肛門に放散するようになる場合があります。

過多月経

子宮腺筋症の子宮は全体的に大きくなり、月経量が多くなります(過多月経)。1回の生理でひどい貧血になることもあります。出血が持続してトイレから出られない、夜用のナプキンが30分ほどで溢れてしまうなど、非常に多い月経量になることがあります。

不妊・流産・早産など

子宮腺筋症は不妊の原因となる場合がありますがメカニズムはわかっていません。
妊娠できた場合でも、子宮の筋肉が伸びるのを阻害したり、壊死を起こしたりすることがあるため、流産や早産の危険性が高いとされています。

また、妊娠高血圧症候群や胎児の発育不良などの危険もあり、妊娠中から管理入院の必要が出てくる場合があります。

産後も、子宮の筋肉の収縮を邪魔して子宮復古不全(子宮の戻りが悪い状態)を起こすことがあります。子宮腺筋症合併妊娠の約72%に上記のようななんらかの異常が見られたというデータもあります(日本産科婦人科学会より)。

痛みの原因

お腹をおさえる女性-写真

子宮腺筋症の痛みの原因は全てが解明できているわけではありません。まず、腺筋症になっている部分が通常の部分に比べて固く変化していくため、ひっぱられて痛みが出ます。それにより、生理時の子宮収縮の際にその部分が強くひっぱられるため、痛みが出ることが考えられます。また、プロスタグランジンという子宮を収縮させる物質の分泌量が通常より多いことが原因ではないかと言われています。

まとめ

もし、上記のような症状が当てはまる方は早めに産婦人科を受診しましょう。子宮腺筋症は妊娠・出産に大きく関わってくるため、早期に発見して必要な治療を受けることが重要です。また、子宮腺筋症であることを診断してもらっておくことで、妊娠した時に病院で適切な管理や治療を受けることができ、様々な合併症の発症を防いだり、発症したとしても母子共に安全に出産できる確率が上がります。