初潮を迎えてから閉経まで女性は毎月生理を経験していきます。女性の一生はホルモンによってコントロールされていて、毎月定期的に生理が来ることで女性としての体の機能を整えるようになっているのです。昔よりも妊娠する機会が減ったことにより生涯経験する生理の回数が増えているため、生理に関連する病気やトラブルも増えています。生理痛や月経前症候群など、生理にまつわる悩みというのは女性誰しもが抱えている悩みだといえます。月経痛を引き起こす病気として代表的なのが子宮内膜症です。しっかりと病気の仕組みや病状を理解すると早期発見に役立つかもしれません。

目次

子宮内膜症とは

子宮内膜症という病気をご存知でしょうか?子宮内膜症は何らかの原因で子宮内膜様組織(子宮内膜に似た組織。本来、子宮内膜は子宮内にしか生じない)が子宮の中以外の場所に生じてしまい、痛みや不妊の原因になってしまう疾患で、生殖可能な年齢の女性の5~10%にみられるといわれています。子宮以外にできてしまった子宮内膜が増えたり出血したりすることで体の中でトラブルが起こすので、生理に伴って症状が現れることがあります。

子宮内膜症は20~40の女性に多く見られ、子宮内膜様組織がエストロゲンというホルモンによって増加することがことで発症します。子宮と直腸の間にあるダグラス窩という部分や卵巣に子宮内膜が発生してしまうことが多いです。

妊娠・出産を経なければ、一度症状が出てからは閉経期まで病変が続くことが多いので、症状が辛い人は婦人科の医師と相談しながら治療を継続する必要があります。

重い生理は子宮内膜症かも

お腹に手を添える女性

子宮内膜症の一番の症状は回を重ねるたびに重くなる生理痛です。初めて生理が来たときから徐々に生理痛が辛くなり、日常生活に支障をきたす位痛みがひどくなることが子宮内膜症の特徴です。また不妊も合わせて覚えておきたい症状の一つです。

このほかにも、性交時や排便時にも痛みが出ることがあります。これは子宮と直腸の間に子宮内膜ができた場合に特徴的で、子宮の動きが悪くなってしまうことで起こる症状です。

知っておきたい子宮内膜症の3つの病変

子宮内膜症の特徴的な病変は3種類あります。

腹膜病変

子宮内膜が、子宮の表面や腹部の内臓を覆っている腹膜の表面にできてしまったときに見られる病変です。病変の深さとしては表面に薄く子宮内膜ができる様な病変なのですが、子宮内膜がお腹の中で徐々に大きくなりその数を増やしてしまうことが特徴的です。

病変が炎症を起こしますが、初期では特に自覚症状が出ないので気づかないまま放っておいてしまうことが多いのが特徴です。画像診断ではなかなか確認ができないので、腹腔鏡などで見つけることができます。

卵巣チョコレート嚢胞

卵巣に子宮内膜ができてしまった病変をチョコレート嚢胞といいます。内膜組織からの出血が卵巣内にたまるため卵巣が大きくなり、場合によっては周囲に癒着も引き起こして卵管の閉塞を起こすこともあります。

画像診断でも確認しやすく、超音波MRI などで確認することができる病変です。

ダグラス窩閉塞

ダグラス窩というのは女性に特有の構造で、子宮と直腸の間に見られるくぼみのことです。この部分に子宮内膜用組織が発生し、生理の周期に合わせて出血することで強い痛みが出てきます。繰り返し炎症を起こし線維化したりすると癒着を生じてしまい、子宮の動きが制限されてしまいます。

ダグラス窩に起きた子宮内膜症は性交痛や排便痛などの原因になるので、症状や痛みのタイミング、画像診断などから特定が可能です。

その他、稀に見られる病変

腹膜病変やチョコレート嚢胞やダグラス窩閉塞だけでなく、肺や胸膜、小腸や膀胱に病変が見られる場合があります。肺や胸膜に病変が見られる場合は生理の周期と重なって喀血したり、に血が混じったり、気胸を引き起こしたりします。小腸に病変が見られた場合も同様に、生理の周期に合わせて下血をしたり強い腹痛を感じることがあります。また、膀胱に病変が見られた場合には、血尿や尿管の痛み・頻尿が現れることがあります。

いずれにせよ、生理の周期と重なって強い痛みが現れる場合には注意が必要です。生理痛の異常と合わせて、不安な場合は産婦人科の医師と相談して検査を受けることが大切です。

知っていると役に立つ子宮内膜症のリスク因子

資料を見て悩む女性

子宮内膜症は、女性ホルモンのエストロゲンの作用を長く受け続けていると症状が悪化していきます。エストロゲンの分泌量が増加したり、腹腔内に逆流する月経血の量が増加すると、子宮内膜症の発生リスクが上がると考えられています。

このため、初潮が早かったり、月経周期があまりに短かったり、出産経験が無かったりすることがリスク因子となります。社会的にも初潮の低年齢化や晩婚化・少子化などで出産経験を有しない女性が増加していることから、子宮内膜症は増加傾向にあるといわれています。

まとめ

長い間子宮内膜症を放置していると、生理痛の悪化だけでなく、将来の不妊につながることが知られています。あまりに症状が重い生理痛や生理周期に合わせた体調不良が続いている場合には、一度婦人科の検査を受けることが必要になるかもしれません。