出産を望まれる子宮腺筋症の方にとって、妊娠できるかどうかは非常に重要なテーマかと思います。
妊娠できるかどうかだけでなく、妊娠できれば次は流産しないか、流産の時期を過ぎれば早産しないか、妊娠高血圧症候群にならないか、赤ちゃんの成長に問題が出ないかなど様々なことを不安に思うかもしれません。

ここでは、子宮腺筋症の方の妊娠・流産の確率や、妊娠・出産時のリスク、治療法についてお話ししたいと思います。

目次

子宮腺筋症は妊娠可能?流産の可能性は?

2013年のデータですが、子宮腺筋症患者さん535人の子宮腺筋症のタイプを2タイプに分けて調査した結果が以下の通りです(日本産婦人科学会参照)。

1.びまん性型

腺筋症の部分と正常な子宮筋との境界が不明瞭なタイプの子宮腺筋症です。妊娠率は42.9%、流産率は33.1%になります。このタイプは手術療法や薬物療法によって妊娠率や流産率に大きな変化は見られていません。

2.腫瘤形成型

境界が明瞭で、子宮筋腫のように腫瘤(こぶ)を作るタイプの子宮腺筋症です。妊娠率は43.2%、流産率は24.7になります。このタイプは妊娠前に手術療法を行うことで流産率が0%になっています。

これらのデータから、子宮腺筋症になっても妊娠は可能と言えるでしょう。
ただし、40%の人が妊娠できている一方で、そのうち約30%が流産する結果となっています。

妊娠後のリスク

子宮腺筋症患者さんで妊娠された方248人のうち、妊娠経過で異常がみられた頻度は約72%でした(日本産婦人科学会参照)。子宮腺筋症合併妊娠のリスク因子とその頻度は以下のとおりです。

流産早産どちらも24.4%

子宮腺筋症では子宮の伸びが悪い場合が多く、そのため流産や早産のリスクが高くなります。

胎児発育不全11.8%

子宮の伸展が妨げられるため、赤ちゃんの成長に影響を及ぼす場合があります。

妊娠高血圧症候群9.9%

妊娠後に高血圧や蛋白尿が出る病気で、致死的な合併症を引き起こす恐れがあります。

このほか、子宮感染、前期破水、前置胎盤、弛緩出血、子宮内胎児死亡、子宮破裂などのリスクがあります

治療法について

看護師に相談する女性-写真
子宮腺筋症を完治させる方法は子宮摘出術を受けて子宮自体をなくすことですが、妊娠を希望されている方にはあまりに酷な選択です。これ以外の治療法とし下記のような治療法があります。

薬物療法

鎮痛剤によって痛みを和らげる方法と、ホルモン療法があり、どちらも子宮腺筋症の痛みを抑える効果があります。
ホルモン療法は女性ホルモンの働きを抑える作用があり、過多月経も抑えることができますが、ホルモン療法を続けている間は、妊娠はできません
ピルもこのホルモン療法に含まれるのですが、避妊薬と同じ作用があるため、妊娠を希望した場合にはホルモン療法を中断する必要があります。しかしホルモン治療を中断することで、ひどい生理痛や過多月経が再発してしまいます

ミレーナ

女性ホルモン製剤をしみこませてある、子宮内に装着する避妊具です
女性ホルモン製剤が持続的に放出されることによって、子宮内膜に作用して生理の量を減少させます。
この効果は、子宮筋腫や子宮内膜症の場合にもある程度期待できるのですが、子宮腺筋症の場合は子宮が大きくなる場合があり装着が困難なうえ、過多月経に対する効果はあるものの、生理痛に対する効果は不明です

手術療法

子宮腺筋症核出術という手術によって、子宮の腺筋症部分だけを取り除く方法です。

ある調査ではこの手術により、全例で過多月経がなくなり、生理痛の程度も軽くなるという結果が出ています。生理通の痛みの度合いを10段階に分けて、0が痛みのない状態、10はこれ以上の痛みは想像できないほど強い痛みとすると、手術前は平均9.1だったものが、手術後9か月で1.3、33か月で1.9、57か月には2.8という結果になっています。

手術後の妊娠率ですが、手術後1年以上経過していて、手術時に40歳未満の既婚で妊娠希望のある方を対象すると、21.6%(計264例中57例)でした

手術療法の問題は、手術後に妊娠した際に子宮破裂の可能性が通常よりも高いことです。腺筋症の部分を切除したところがどうしても弱くなるため、子宮が大きくなっていくのに耐えれずにそこから裂ける危険性があります。

 

以上、この様に色々な選択肢がありますが、担当の先生とご家族とよく話し合って方針を決めましょう。

まとめ

子宮腺筋症によって妊娠する確率は確かに下がりますが、妊娠が不可能なわけではありません
妊娠を希望される場合は、まず主治医に相談してみましょう。