子宮内膜症は生殖可能年齢の5~10%の女性に見られる疾患で、回を重ねるたびに重くなる生理痛が特徴の病気です。子宮内膜症の検査や治療の流れを知っておくことは、自分の身を守る有効な知識になります。子宮内膜症の概要については、「重い生理痛、子宮内膜症が原因かも…どんな病気か知っていますか?」で紹介しているので、参考にしてください。

目次

子宮内膜症の検査

子宮内膜症の検査は問診から始まります。初潮がきた年齢や生理がきた時に起こる生理自体の症状や、合わせて起こる他の症状を医師に伝えます。その後内診や超音波の検査を行います。

これだけである程度、子宮内膜症と診断がつくのですが、これ以外により詳しい診断としてMRI検査を追加したり血液検査を行ったりします。子宮内膜症では卵巣にチョコレート嚢胞が確認されたり、直腸に子宮が引っ張られて子宮が後ろに反れていることがあるので、そのような画像が見られると子宮内膜症と判断されます。子宮内膜症の確定診断は、腹腔鏡検査になります。お腹に小さな穴をあけて、カメラで腹腔内を観察し、小さな腹膜病変も含めて内膜症がないかどうかを見る検査です。ただ、麻酔も必要な大掛かりな検査になりますので、通常は症状のみから「臨床的内膜症」と診断されたり、超音波検査やMRIでチョコレート嚢腫や子宮腺筋症が確認された場合は、腹腔鏡検査を行わなくても内膜症であると診断されます。

また、不妊治療のために病院を訪ねた場合には、まず一般的な不妊症の検査を行います。その結果、不妊の原因が不明であるために腹腔鏡検査を行うと、その段階で子宮内膜症が発見されることがあります。病変が軽度な場合には手術は行わず、保存療法を行います。

状況に応じてそのまま処置を行うことがあるので事前に医師と相談をしておきます。

子宮内膜症の治療法

カラフルな薬

子宮内膜症の主な治療法や薬物による治療法手術による治療法に分けられています。

薬物療法

薬物療法ではまず疼痛に対する治療として、漢方薬や鎮痛剤の投与を行います。さらに、痛みに対する治療に並行して、ホルモン療法を行うことが一般的です。ホルモン療法では、第一選択として低用量や超低用量ピルの服用や黄体ホルモン療法(ジエノゲスト)が挙げられます。

低用量・超低用量ピルは月経の出血を少なくし、生理痛を軽くする効果があるのでよく用いられる薬です。ジエノゲストは黄体ホルモンの作用により、強い子宮内膜の増殖抑制作用があるため、子宮内膜症の治療に最適な治療法なのです。また、副作用が少ないので長期間の投与が可能な点もよく行われている理由です。

このほかによく行われる薬物療法としては、偽閉経療法という治療法があります。偽閉経療法はGnRHアゴニストという薬を用いることでエストロゲンの分泌を減らし、生理を止める作用がある治療法です。
エストロゲンの作用で増殖する子宮内膜の縮小を行うことができるので、チョコレート嚢胞などの縮小が期待できます。最近では手術の直前に行われることが多く、術前の病変の縮小を目的に行われています。
副作用として、更年期様症状である火照りやのぼせ、骨量の減少などが見られるので6ヶ月以上の継続投与は行いません

手術療法

子宮内膜症は検査を行ってから、手術の適応がなければまずは薬物療法を行います。薬物療法だけで症状が軽快し特にひどい痛みがない場合にはそのまま薬物療法を継続するのですが、チョコレート嚢胞があってサイズが大きい場合や、ダグラス窩閉塞などのように子宮と直腸が固定されてしまい排便時や性交時に痛みが出てくる場合には、手術を行います。

特にチョコレート嚢胞は癌化することがあるので、嚢胞が大きい場合や高齢の場合には摘出を行うことが一般的です。手術を行う前には偽閉経療法を行い病変を小さくすることで、手術の際のダメージを小さくしてから手術を行うこともあります。

手術を行う際には最近では腹腔鏡というお腹に小さな穴を開け、カメラで内部を覗きながら行う治療が一般的です。腹腔鏡で行う手術は術後の傷も小さく、目立たないことが特徴で、治療を行った後にすぐに回復し退院することができます。
腹腔鏡でお腹の中を覗きながらチョコレート嚢胞などの病変を摘出します。ダグラス窩閉塞の場合では、子宮を前に倒した状態でダグラス窩の病変を除去し、癒着を剥がしていきます。

早期の治療を行うことで、不妊症になる可能性を下げることができます。医師と相談しながら治療の計画を立てましょう。

子宮内膜症と妊娠出産の関係

お腹が痛そうな女性

子宮内膜症が長い間続くと、腹腔内で癒着が生じたり卵巣にチョコレート嚢胞ができてしまい、上手く妊娠ができなくなることがあります。卵巣に生じたチョコレート嚢胞によって卵巣の機能が低下することや、卵管が癒着により閉鎖する可能性があるので注意が必要です。

また、ダグラス窩閉塞などでは子宮が後ろに引っ張られてしまい、子宮の形の異常が出てきます。これらの原因によって不妊症になることがあるので注意が必要です。

まとめ

子宮内膜症は子宮外の子宮内膜ができる場所によっては症状に気づかず、症状が出てきた時にはお腹の中で広範囲に癒着が広がっていることがあります。現時点で画像診断では明らかな内膜症病変が確認できない人でも、ひどい月経痛や過多月経の状態が続くと内膜症の発生リスクが高いことが指摘されています。将来の不妊原因を作らないためにも、鎮痛剤が必要なレベルの月経痛があったり、過多月経を伴っている場合には予防的治療を開始することをお勧めします。生理のトラブルというのはなかなか相談することが難しいのですが、定期的に産婦人科のドクターに相談し、自分の状態を正しく把握することが大切です