「嘔吐」は、胃の中の異物や毒物などを吐き出す防御反応です。一方「吐き気」は脳の嘔吐反射中枢が刺激されることで起こります。疾病が原因となって生じる吐き気なども存在しますが、今回は日常生活で経験しやすい事柄に注目して、吐き気と嘔吐のメカニズムをご説明します。

目次

1.過剰なアルコール摂取

体内に入ってきたアルコールは、肝臓でアセトアルデヒドという物質に分解されます。アセトアルデヒドの血中濃度が高まることで、様々な中毒症状をもたらします。吐き気もその一つです。また、エタノール自体も中枢神経系に対して催吐作用をもちます

また、お酒の中に含まれる不純物として、例えばメタノールのような物質が挙げられます。メタノールは、肝臓でホルムアルデヒドやギ酸といった毒性をもつ物質に分解されます。少量ならば問題はありませんが、これらが多量に入ってくると、毒物として体の外へ追い出そうとする防御反応が生じるのです。

2.末梢神経が刺激される(乗り物酔い、ストレス)

末梢神経とは、中枢神経(脳と脊髄)から体の各方面へ延びる神経を指します。中枢神経は末梢神経を取りまとめる働きをもつため、末梢神経の刺激や乱れが、嘔吐中枢を刺激することにも繋がるのです。

一つの例が乗り物酔いです。車や船での上下左右の揺れを、内耳に存在する器官が異常な刺激と受け取るとその信号が中枢神経(脳)へ送られ吐き気を催します。

もう一つの例はストレスです。ストレスは末梢神経の中でも、「意識とは無関係に働いている器官を制御している神経」です。自律神経の乱れは間脳の視床下部へと伝わります。強いストレスによって吐き気を催すのはこれらが原因となっているようです。

3.食中毒

食中毒は、細菌に感染した食品を摂取し、体内で増殖した細菌が病原性を持つことで起こる「感染型」と、食品内で細菌が産生した毒素を摂取することで起こる「毒素型」に分類されます。毒素そのものを摂取した「毒素型」では、食べてすぐに吐き気を催します。

どちらのタイプも体が毒物として認識し、防御機構が作用するといったメカニズムで吐き気が生じます。そのため、嘔吐までにかかる時間に違いが出るというわけです。

4.疾病による嘔吐

これまでは日常生活で原因となりやすい事柄について説明しましたが、病気による嘔吐にも触れておきたいと思います。例えば胃の出口に腫瘍などができて狭くなると、胃の内圧が上昇し、結果的に嘔吐してしまうといったことが挙げられます。

また、腸閉塞も嘔吐を引き起こす病気の一つです。開腹手術を受けた方などでは、なんらかの原因で起こる腸管の癒着により、腸閉塞となることがあります。詰まってしまった部分よりも先に胃腸の内容物が進まないため、吐き気や嘔吐に至ります。

この場合は、これまで挙げてきた嘔吐とは別の問題になるので、病院に行って診てもらう必要があります。

最後に

吐き気や嘔吐はつらい症状ではありますが、人間が備え持つ防御機構の一つです。飲み過ぎによる嘔吐は未然に防ぐことが可能なので、飲み会の多い季節には特に注意をしてください。