子癇(しかん)という病名をご存じでしょうか?稀ですが、どの妊婦さんにもかかる可能性があり、脳出血や播種(はしゅ)性血管内凝固(DIC)など死に至る病気が起きる可能性があります

妊娠高血圧症候群の人は特に子癇が合併症として起こるリスクが高いため、ぜひ知っておいてもらいたい病気です。また、突然発症する場合もあるため、妊娠高血圧症候群でない人もその症状や原因・予防法を知っておいてもらいたいです。

目次

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子癇ってなに?

子癇は妊娠20週以降に初めて起きたけいれん発作で、てんかんや脳梗塞など他の症状が否定されたものとされています。

子癇の日本での発症率は0.04%で、発症時期は妊娠中19%、分娩中37%、産褥(さんじょく)期(出産後から6~8週間)44%となっており、分娩時と産後の発症率が高くなっています(産婦人科診療ガイドラインより)。

子癇が一旦発生するとその後DIC,脳出血,臓器不全など重篤な合併症を発生しやすくなるため、母子ともに命の危険があります。

けいれん発作の流れと症状は下記のようになります。

  • 誘導期…失神、顔面蒼白、眼球上転、顔面けいれん
  • 強直性けいれん期…全身が強張り呼吸停止(15~20秒)
  • 間代性けいれん期…全身の筋肉が収縮と弛緩を繰り返す(1~2分)
  • 昏睡期…呼吸回復(いびきのような呼吸)、昏睡状態

この後、発作から回復しますが、発作中の記憶はありません。昏睡期に発作を繰り返す場合(重積発作といいます)は、脳へのダメージが深刻化して意識が回復せず亡くなるケースもあります。

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子癇の原因は?

子癇のけいれん発作が起きる原因として、「急激におこった高血圧によって脳の中の血液が増え、脳の中にむくみが起きて、けいれんを起こす」と考えられています(日本妊娠高血圧学会より引用)が、詳細は分かっていません

子癇発作に先行して高血圧が確認されていた症例は44%という報告があり、発症前には高血圧を示さない場合も30~50%存在するとされています(日産婦誌63巻12号より)。このため、妊娠中に高血圧になっていない人でも子癇に突然なる可能性はあるので注意が必要です

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子癇の危険因子は?

子癇発作になりやすい要因として下記が挙げられます。

  • 初産婦
  • 10代の妊娠
  • 以前の妊娠出産で子癇の既往がある
  • 妊娠高血圧症候群
  • HELLP症候群
  • 尿蛋白陽性
  • 多胎

初産婦は経産婦と比べて約6~9倍子癇になりやすいリスクがあります。また、子癇の頻度は10代の妊娠では他の年代より3倍高く、10代で妊娠高血圧症候群合併妊婦の場合28人に1人の割合で子癇を合併していたという報告もありハイリスクとなります。双胎(双子)の場合、単胎(胎児が1人)に比べて子癇発作の確率が4.8倍高くなるという報告もあります。(日産婦誌63巻12号より)

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子癇の前兆は?

子癇が起こる前に前兆のような症状が現れることがあります。下記のような症状が見られた場合は、すぐに産婦人科医師や看護師に伝えましょう。

  • 頭痛
  • 視覚異常(かすんで見える、星のようなものがチカチカ見える)
  • 上腹部痛(胃痛・みぞおちあたりの痛み)

子癇の予防法は?

高血圧が発症の要因となるため、妊娠中の血圧の管理をしっかりしておきましょう。一般的な妊婦健診では毎回、血圧を測る(厚生労働省より)ので、妊婦さん自身も血圧の変動を意識するようにしましょう。

血圧は、5分以上の安静後 座位で1~2分間隔にて二回血圧を測定し平均値をとります。収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上あるいはその両方の場合に高血圧と判断されます。また、血圧には食事が関係してきますので、食事のカロリーや塩分を摂り過ぎないのも予防の一つです。

妊娠高血圧症候群など子癇を起こしやすい病気にかかっている場合は、子癇を起こす可能性があることを知っておいてください。前兆が起きた場合はすぐ医師や看護師に伝えてください。

また、子癇はまぶしい光・急激な手足の冷えなどの刺激が誘因となって起こることがありますので、照明を暗くした静かな部屋でストレスのない状態でいることも予防になります。

まとめ

子癇はたまに前駆症状なく突然発症することがあり、高血圧を示さない場合も30~50%存在するため日産婦誌63巻12号より)、まったく想定しない時に子癇が起こる可能性があります。

妊娠・出産にはどんな危険があり、どんな症状が出たら危険かを知っておきましょう。その知識があなたや赤ちゃん、家族を救うことになるかもしれません。