平成14年より、食品衛生法に基づき、加工食品では特定原材料を含む旨の表示が義務付けられております。その一方で、アレルギー表示では、アレルゲンと表示が類似しているために誤解しやすい、紛らわしいアレルギー表示があります。

ここでは、アレルギー物質の表示の方法、紛らわしい食品表示に関しての知識を、食物アレルギーガイドライン2016をもとに解説します。

目次

加工食品のアレルギー表示とは

平成14年より、食品衛生法に基づき、加工食品のアレルギー表示が義務化されております。その品目は下記の通りです。

加工食品のアレルギー表示-図解

 特定原材料(義務表示7品目)

卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに

特定原材料に準ずるもの(推奨表示20品目)

大豆、牛肉、鶏肉、豚肉、カシューナッツ、くるみ、ごま、さば、さけ、あわび、いか、いくら、バナナ、オレンジ、もも、りんご、キウイフルーツ、ゼラチン、まつたけ、やまいも

また、このアレルギー表示では、アレルゲンと表示が類似しているため紛らわしい表示があります。その例として挙げられるのが「卵殻カルシウム」です。これは卵の殻を加工したもので、焼成・未焼成ともに卵たんぱくの残存は無視できる程度ですので、除去は不要です。また、”乳”の文字がついていても、「乳酸カルシウム・乳酸ナトリウム」「乳化剤」「乳酸菌」は牛乳とは関係のないものです。ですので、卵や牛乳に対して食物アレルギーがあっても摂取することは可能です。食べられないものだと誤解しないようにしていただきたいと思います。

例えば、麦茶のパックの原材料やお菓子のラムネにも「卵殻カルシウム」と記載されております。卵アレルギーがあるお子さんにはあげられないと誤解をされる方がいらっしゃいますが摂取は可能です。紛らわしい食品表示については後述します。

原材料が同じでも表示方法が異なる場合がある

食品の表示方法にはいくつかありますが、「このように表示しなければいけない」という規定はありません。ですので、ここで紹介する3つの表示については全て読めるようにしておくと良いでしょう。

ここでは、コンビニエンスストアで販売されているシュークリームを例にあげてみます。

個別表示

名称:シュークリーム

原材料名:フラワーペースト(小麦粉、コーンスターチ、砂糖、大豆油)、卵、牛乳、砂糖、小麦粉、でんぷん(小麦粉)、食塩、乳化剤、香料(卵・大豆由来)

どの原材料にアレルギー物質が含まれているのか個別に表示されます。

一括表示

名称:シュークリーム

原材料名:フラワーペースト、卵、牛乳、砂糖、小麦粉、でんぷん、食塩、乳化剤、香料(原材料の一部に小麦、大豆、卵を含む)

どの原材料にアレルギー物質が含まれるか分かりません。また、「○○を含む」と表示されているもののアレルギー物質の量が少ないとは限りません。

個別表示省略あり

名称:シュークリーム

原材料名:フラワーペースト、卵、牛乳、砂糖、小麦粉、でんぷん、食塩、乳化剤、香料

重量の多いアレルギー物質の表示が省略されることがあります。この例では重量の多いフラワーペーストの中の小麦粉が、原材料の小麦粉と重複するため省略されております。また、フラワーペーストの大豆油・でんぷんの小麦粉、香料の卵・大豆も同様に省略されております。

表示義務の対象とならない場合も

注意しなければいけない生活における場面としては、コンビニエンスストアや露店などの対面販売・飲食店のメニューです。コンビニエンスストアでは、弁当はアレルギー表示がありますが、店内で調理されるおでん・お惣菜、露店の食材には表示がありません。これは、容器包装された加工食品・添加物が表示法の対象であり、それ以外は対象外とされているためです。

包装されたお弁当や菓子類などは工場での製造なのでアレルギー表示がされています。その一方で店内調理のおでん・お惣菜・露店の食材は店員に原材料を尋ねることができるという理由から表示法の対象外になっています。

飲食店においても、この表示法は対象外です。最近では食物アレルギーの認識が高まり、アレルゲンの表示をしている飲食店がありますが、あくまでサービスで行われているもので、アレルギー表示法に基づく管理ではありません。

紛らわしい食品表示

混乱する男性-写真

以下に原材料表示とその用語の解説をします。

鶏卵

  • 魚卵:卵白との交差抗原性(ある食物に対する抗体がほかの食物にも反応し、アレルギーを起こすこと)はありません。
  • 卵殻カルシウム:卵の殻から作られるカルシウムですが、鶏卵アレルギーの卵白の成分はありません。

牛乳乳製品

  • 乳化剤:混ざりにくい液体を混ぜるために使われるため牛乳とは関連はありません。また、卵から作られる場合には必ず乳化剤(卵由来)と記載されます。
  • 乳酸カルシウム:栄養強化剤として添加されるもので牛乳とは関連はありません。
  • 乳酸菌:乳酸菌とは乳酸を作る菌のことです。乳酸菌飲料は乳成分を含みます。
  • ピーナッツバター/カカオバター:ピーナッツやカカオから作られ牛乳由来の「バター」ではありません。
  • ココナツミルク:ココナッツから作られており牛乳由来の「ミルク」ではありません。
  • マーガリン:植物性の油から作られる固形油脂であり、牛乳は含まれません。
  • 乳糖:二糖類の名称で牛乳を原材料としておりますが、ほとんどタンパク質を含まないため、牛乳アレルギーの方では除去する必要はありません。

小麦

  • 麦芽糖:米やイモなどのでんぷん全般を分解してできる糖の名前であり、小麦から作られているものではありません。
  • でんぷん:主にイモ・トウモロコシから作られます。小麦を含む場合には(小麦を含む)と追記されます。

たんぱく加水分解物

肉や大豆、小麦などのたんぱく質を主成分とし、調味料として用いられるものです。

原材料に表示義務があれば表示されます。分解度は不完全で、抗原性があります(アレルギーを引き起こしやすい傾向があります)。

まとめ

食物アレルギーがある方でも、アレルギー物質の表示の原則、また紛らわしい表示に関しての知識を確認することにより、不要な食品制限は免れるものと思われます。さまざまなアレルギー表示がありますが、自らで表示を見分けられる正しい知識を身につけ、不安の少ない健やかな食生活を楽しんでいただければ幸いです。