甲殻類やピーナッツなど、特定の食品で引き起こされる食物アレルギー。実は命を落とすリスクがあるほど危険な症状なのです。子供は食物アレルギーを起こしやすいため、子育て中の方やこれから妊娠・出産の予定がある方は特に注意が必要です。今回は食物アレルギーに関する原因やメカニズムなどを説明します。
食物アレルギーは「タンパク質」を異物とみなす過剰な免疫反応
アレルギーとは免疫反応が特定の物質に対して過剰に働くことです。また、免疫とは体の中に異物が入り込んだ際にそれを攻撃して体を守ろうとする働きです。
アレルギーといえば花粉、食品、ペット、金属など様々な種類がありますよね。これらは全て過剰な免疫反応によるものです。
食物アレルギーの場合は食べ物に含まれるタンパク質が異物(アレルゲンといいます)と認識されます。したがって、食物のほかの成分の作用によるものは食物アレルギーには含みません。
たとえば牛乳の乳糖を体質的に分解できない人は下痢を起こすことがあります。これは乳糖不耐症といい、牛乳アレルギーとは異なるのです。
食物アレルギーが子供に多くみられる理由
食物アレルギーは子供に多くみられるのが特徴です。6歳以下の乳幼児が患者数の80%近くを占め、1歳に満たない子の10~20人にひとりが発症しています(ファイザー株式会社|アナフィラキシーってなあに.jp|食物アレルギーってなあに?より)。
子供がアレルギーを発症しやすい理由は、主に次の4つだといわれています。
1.タンパク質を分解する能力が低い
アレルゲンであるタンパク質は分解されてしまえば反応を引き起こしません。しかし子供は成人と比べ消化機能が低く、なかなかアレルゲンを分解することができません。
2.腸管粘膜のバリア機能が弱い
粘膜は異物を体の中に入れないようにする、いわばバリア機能です。子供はこの粘膜が完成状態でないため、アレルゲンが簡単に体内に侵入してしまいます。
3.粘液のバリア機能が弱い
バリア機能は他にもあります。体内に備え持っているIgA抗体と呼ばれるものが粘液の中へ分泌され、異物を排除してくれるのです。小さい子にはこのIgA抗体が十分な量ありません。
4.免疫の寛容機能が低い
体は免疫機能を持つと同時に、特定の物質にしかその機能が働かないようになっています。これを免疫寛容と呼びます。成長とともにアレルギー反応が起こらなくなることがあるのは免疫寛容を獲得していくからです。
次の表は年齢別のアレルギー原因食品です。0歳から3歳までは鶏卵、乳製品、小麦が大半を占めています。しかし成長につれて発症の割合は少なくなり、耐性を獲得しやすい食品といえますね。
年齢別食物アレルギーの原因食品
0歳 | 1歳 | 2~3歳 | 4~6歳 | 7~19歳 | 20歳以上 | |
1位 | 鶏卵 | 鶏卵 | 鶏卵 | 鶏卵 | 甲殻類 | 甲殻類 |
2位 | 乳製品 | 乳製品 | 乳製品 | 乳製品 | 鶏卵 | 小麦 |
3位 | 小麦 | 小麦 | 小麦 | 甲殻類 | そば | 果実 |
4位 | 魚卵 | そば | 果実 | 小麦 | 魚類 | |
5位 | 魚類 | 魚卵 | ピーナッツ | 果実 | そば | |
小計 | 89% | 80% | 71% | 66% | 61% | 64% |
出典:厚生労働科学研究班による食物アレルギーの手引き2008をもとにいしゃまち編集部作成
子供に多い食物アレルギーのタイプとは?
食物アレルギーはいくつかの型に分類できますが、中でも多いのが「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎型」と「即時型」です。
乳児アトピー性皮膚炎型
乳児の食物アレルギーで最も多いのがこのタイプです。
乳児アトピー性皮膚炎型のお子さんは、皮脂欠乏症(乾皮症)からくる乾燥肌の子が多く、そこにアレルギーが原因の皮膚炎や湿疹が慢性的に続きます。
症状としては、顔や首・手足などが赤くなり、小さなブツブツができます。それが水泡になり、ジュクジュクしてくる場合もあります。かゆみが強いからといってかきむしると皮膚がただれたようになったり、かさぶたになったり、化膿してしまうこともあります。
乳児のアトピー性皮膚炎には、牛乳や卵のアレルギーが関係していることが多いです。このほか、肉類や魚・大豆・小麦などが原因となることもありますが、多くは成長とともに自然に治っていきます。
アトピー性皮膚炎の症状改善には、皮膚を清潔に保ち、スキンケアを行います。湿疹が起きている箇所には抗炎症薬を塗り、場合によってはステロイドを使用します。
即時型
即時型アレルギーとは、食品を食べてから1~2時間以内に症状が見られるものです。食べた直後に症状が出ることもあります。じんましん、皮膚の赤み、むくみなど皮膚症状が多く見られますが、次いでゼイゼイする、咳などの呼吸器症状が多いです。
即時型の中で最も重症なものがアナフィラキシーです。
アナフィラキシーでは、皮膚・粘膜・呼吸器・消化器・循環器など複数の臓器で同時に症状が現れます。血圧が下がり意識がもうろうとし、生命が危険な状態になることがあります(これをアナフィラキシーショックと呼びます)。口の中に原因の食品が残っていれば、すぐに出して水でゆすぎ、重症度によっては病院を受診する必要があります。
原因となる食物は年齢によって違いますが、乳児では卵・牛乳・小麦が多いです。
厚生労働省の統計でアナフィラキシーの死亡者数は毎年40~70人と報告されています。自分が食物アレルギーを持っていなくても、いつどんな事故があるか分かりません。食物アレルギーは命を落とす可能性があると覚えておきましょう。
最後に
食物アレルギーを持つ方はもちろん、そうでない方も正しい知識を持っておく必要があるとお分かりいただけたでしょうか。子供がアレルギーを引き起こしやすいこと、アナフィラキシーが起こり得ることはぜひ覚えておいてくださいね。