仮性アレルゲンとは、食物アレルギーと同じように皮膚の痒みを引き起こす物質です。厳密にはアレルギーではないので毎回症状が起きるわけではありませんが、食品の鮮度や調理方法により回避できる可能性があります。

ここでは、蕁麻疹・痒みなどのアレルギー症状を引き起こす仮性アレルゲンに関して紹介します。

目次

食物アレルギーとは

繰り返しになりますが食物アレルギーは「食物によって引き起こされる、免疫機序を介して生体に不利益な症状」であります。この定義にある「生体に不利益な症状」とは、細菌の毒素自然毒による全ての人に起こりうる毒性物質の現象(貝の毒など)と、特定の人に起こる現象とに大別されます。今回紹介する仮性アレルゲンは、前者に相当します。

仮性アレルゲンとは~痒みを起こす外からの物質

アレルギーが何故起こるのか、に関しては「小児の食物アレルギー ~多彩な症状とアトピー性皮膚炎との関連~」をご参照ください。簡単に説明すると「身体の中での様々な反応が起き、ヒスタミンという物質が作られ、このヒスタミンにより蕁麻疹・かゆみ、ひどい場合では呼吸困難のアレルギー症状が起きる」という症状です。よく鼻炎やかゆみ止めに使われる薬剤(アレジオン、アレロック、アレグラなど)は「抗ヒスタミン薬」と呼ばれ、このヒスタミンを抑えることで、鼻水や痒みなどのアレルギー反応を止めるわけですね。

それでは、身体の外からヒスタミンを与えたらどうなるでしょうか?答えは簡単であり、「アレルギーのような症状を起こします」です。この外からのヒスタミンなどのアレルギーを引き起こす物質を「仮性アレルゲン」と呼びます。

仮性アレルゲン症候群の症状(具体的な食品の例)

仮性アレルゲンによる症状は、多くの場合は皮膚の発赤・痒みなどは比較的軽く一過性であり、1時間以内には消失します。しかし、こうした物質を大量に含む食品を摂取した場合には、全身の蕁麻疹・頭痛・呼吸困難など、アナフィラキシーに似た強い症状を経験する場合もあります。このような強い症状がみられた場合には受診してください。

ここからいくつかの例をあげます。

  • これまで自宅では問題なくイチゴを食べられていた5歳の男の子が、ある日にイチゴ狩りに出かけました。この日には大量のイチゴを摂取し、15分後に顔が真っ赤となり痒みを伴う発疹が全身に出現して近くの救急外来を受診。イチゴに含まれる仮性アレルゲンが原因と推定されました。
  • アセチルコリンという痒みを引き起こす物質を大量に含むヤマイモも、代表的な食品です。とろろ芋で口の周りが赤くなる経験は多くの方が経験しますが、これも仮性アレルゲンによる症状です。
  • また、サバ科の魚(サバ、マグロ、カツオなど)に含まれるヒスタミンも、古くて過剰に発酵したチーズによるチラミンも仮性アレルゲンとして説明が可能です。

仮性アレルゲンを引き起こす化学物質と、含まれている食品の例

仮性アレルゲンを引き起こす4つの化学物質と、含まれている食品の例-図解

ヒスタミン(かゆみ、むくみ、蕁麻疹)

  • ほうれん草
  • なす
  • トマト
  • えのきたけ
  • たけのこ
  • さといも
  • チーズ
  • そば
  • 牛肉
  • 馬肉
  • とうもろこし

など

セロトニン(平滑筋の収縮、血管の収縮)

  • トマト
  • バナナ
  • キウイフルーツ
  • パイナップル

など

アセチルコリン(自律神経失調、血管の拡張、気管支喘息)

  • やまいも
  • なす
  • トマト
  • たけのこ
  • さといも
  • クワイ

など

トリメチールアミンオキサイド(アレルギー反応を悪化させる)

  • かれい
  • たら
  • すずき
  • たこ
  • あさり
  • はまぐり
  • えび
  • かに

この仮性アレルゲンによる症状は、大量に摂取したときに症状が強くなること、アレルギー症状は毎回起こらないことが特徴であります。このうち、実際に食品に含まれるたんぱく質に反応して、摂取ごとに毎回、アレルギー症状が全身に起きる場合もあり、厳密な意味での食物アレルギー検査(IgE抗体の検査)による確認が必要となるケースもあります。

離乳食と仮性アレルゲン~白身魚から始める理由

離乳食と仮性アレルゲン 魚種別にみるヒスチジン含有量-図解

ヒスチジンという仮性アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)は、白身魚にも含まれますが、赤身の魚や青魚量と比べれば少ない量です(具体的な魚と分類に関してはこちらをご参照ください)。

白身魚でも保存が適切でなければ、このヒスチジンによるアレルギー症状を起こすことがあります。特に遠方で収穫し冷凍したものなどでは、鮮度の低下や冷凍の状態が不適切である事が原因と考えられます。その反対では、赤身の魚・青魚の類であっても新鮮で保存状態のよいものであれば、離乳食に使うことはできますし、栄養価としても良好であります。

販売されている魚は「刺身用」→「焼き魚用」→「煮魚用」の順で鮮度が低下していきます。仮性アレルゲンによる症状を懸念する場合には、刺身用の魚を購入し、保冷バッグなどで持ち帰りすぐに加熱調理をするという方法がよいかと思われます。他にも、魚はタンパク質・ビタミンDが多く含まれ摂取の栄養としては良好であります。まずは白身からはじめ次第に赤身の魚→青魚とステップアップをしてみたらいかがでしょうか。

そのほかの食品での調理の工夫

トマト、ブロッコリー、ほうれん草、ナス、肉類なども離乳食として用いられます。まずは、食材としては新鮮なものを調理に使用することが重要です。はじめは加熱・湯切り・あく抜きなどの加工を行い少量ずつ摂取してみてください。体調が悪い時にはこれらの食品は摂取量を少なくしてください。

まとめ

仮性アレルゲンとは、食物に含まれてアレルギー症状を引き起こす「物質」です。この仮性アレルゲンによる症状は、食物アレルギーとはメカニズムは異なり、毎回の摂取で症状が引き起こされないことが特徴であります。症状は発疹・痒みが主であり重症度は比較的軽度です。この症状の回避は体調不良時には摂取を避けること、新鮮な食材を摂取することが重要です。