およそ100人に1人弱がかかる「統合失調症」は、10代後半から30代に多い病気といわれています。その発症のピークは10代後半から20代、多感な思春期から青年期です。この病気の原因はよく分かっていませんが、進学や就職、結婚など人生の進路における変化が、発症のきっかけになることが多いようです。

今回は「統合失調症」の経過とその治療について詳しくみてみましょう。

目次

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「統合失調症」の経過

急性期:数週間単位

神経が過敏になり、幻覚や妄想などの「陽性症状」が目立つ。症状の程度が強いので、薬物治療と安静な環境を要する。幻覚や妄想による、判断力低下、コミュニケーション障害、昼夜逆転、食欲不振などがおこることもある。

消耗期:数週間~数カ月単位

エネルギーが枯渇し、心身ともに疲れ切っている状態。感情の平板化や意欲の低下、無気力、抑うつ気分などの「陰性症状」が中心となる。受け身的な態度、ひきこもりなども見られる。

小さなきっかけで急性期に逆戻りしやすい時期でもある。

回復期:数カ月~数年単位

ゆっくりと症状が治まり、無気力から脱する。

必要な物だけを取捨選択して注意を向けたり、過去の類似体験に基づいて判断することなどができなくなる「認知機能障害」が現れることもある。

病期別の治療

急性期治療

薬物療法を中心に、まずは症状を抑える。

抗精神病薬によって、幻覚・妄想などの「陽性症状」をできるだけ早く抑える。症状が出始めた初期段階で投薬を始めれば、回復の可能性もそれだけ大きくなる。

慢性期治療(休息期および回復期)

心理社会的療法により社会生活機能の回復を目指す。

陽性症状に遅れて現れる「陰性症状」や「認知機能障害」に起因する生きづらさを和らげるためのリハビリテーション期。

維持治療

慢性疾患と捉え、症状消失後も再発予防のための治療を継続する。

治療のポイント

白衣の女性-写真

様々な症状のもととなる神経伝達物質の機能異常を調整する薬物療法と併せて、患者本人と家族に対して心理社会的療法を行うことで、高い治療効果を期待できます。

心理社会的療法

「統合失調症」の心理社会的療法には精神療法と心理教育があります。

精神療法

支持的精神療法: 医師が患者の辛さに共感をしめし、カウンセリングする。

認知行動療法: 妄想や幻聴を肯定しながらも、その内容への非合理性を自覚させ、対処できるように指導する。

集団精神療法: グループディスカッションを通じて自分の病気を客観視させ、また、孤独感を緩和する。

SST:SST(social skill training)は社会生活に必要な技能を学んでいく訓練です。 統合失調症では陰性症状や認知機能障害によって社会的機能が低下してしまっているため、 訓練によって回復を目指します。

心理教育

症状や原因、薬物治療、などについて教え、病気に対する正しい理解を促進する教育的支援。

統合失調症治療において大きな鍵を握る「アドヒアランス」(患者自身が積極的に治療医参加する姿勢)を高める。

また、認知行動療法のために必要な情報を提供する、という意味でもその治療的意義は高い。

「統合失調症」からの回復

厚生労働省によると、統合失調症の軽症群(日常生活に支障をきたさない程度の症状がある)の20~30%、中等症群の25~30%、重症群の15~25%は、回復、または社会的治癒(医療を行う必要がなくなって、社会復帰していること)に至る、という研究結果があるそうです。

このように、統合失調症患者の約半数が社会的生活を営むことができています

また、2014年5月には「ハローワークを通じた障害者の就職件数が4年連続で過去最高を更新/精神障害者の就職件数が身体障害者の就職件数を初めて上回る」という報告結果が出るなど、統合失調症を含む精神障害を持つ人達の就労機会は増えています。

統合失調症についてさらに詳しく知りたい方は、「統合失調症ってどんな病気?治療法や、受診のタイミングとは」をご覧ください。