子宮内膜増殖症という病気をご存じでしょうか?この病気は、病型によっては子宮体がんを発症する可能性もあり、注意が必要なものです。実際に早期の子宮体がんと共存し一緒に発見される場合もあります。ここでは、子宮内膜増殖症の症状とその治療法についてお話ししたいと思います。

目次

子宮内膜増殖症とは?

子宮内膜増殖症は、子宮内膜が過剰に増殖する病気です。この増殖した細胞が異型(通常とは違う形)の場合、子宮内膜異型増殖症と呼ばれ、がん化する可能性が高くなります。子宮内膜異型増殖症の20%程度の人が子宮体がんになるというデータもあります(神奈川県立がんセンターより)。

症状は?

不正出血や無排卵周期症などの症状がある場合が多いです。また、不妊や生理不順を伴う場合があります。

どんな人がなりやすい?

年齢的には30歳代以降に多いとされています。平均47.5歳というデータもあります(日本産婦人科学会より)。

子宮内膜増殖症の原因となるのが、エストロゲンによる長期間の刺激です。下記のような病気や状態により、エストロゲンとプロゲステロンの均衡が失われた状態が長期間続く可能性があります。

エストロゲン製剤の長期投与

更年期のホルモン補充療法や、カウフマン療法(月経周期の異常などに対して行うホルモン療法)でエストロゲン製剤が投与されます。

肥満

脂肪組織から出る酵素によって男性ホルモンからエストロゲンが生成されます。

多囊胞性卵巣症候群(PCOS)

排卵障害に起因する月経異常、不妊、多毛、肥満などの症状を有する病気で、卵巣が多囊胞化(排卵できない未熟な卵子が溜まった状態)し、血中ホルモンの異常を示します。

無排卵周期症

基礎体温で、低温相のみで高温相がみられないまま生理になるものを無排卵周期症といいます。排卵がない状態です。

黄体機能不全

基礎体温で、高温相の持続が9日以内の場合や、高温相と低温相の温度差が0.3℃以内の場合、黄体機能不全が疑われます。高温期が持続しないため、不妊の原因にもなります。

エストロゲン産生腫瘍

卵巣がんにおいて、エストロゲンを産生するがんがあります。

治療法は?

悩む女性-写真

子宮内膜増殖症はまず、内膜組織診という検査を行って、内膜の細胞の状態を確認して病型を判断します。細胞の異型の有無によって以下のように治療方針が変わってきます。

子宮内膜増殖症の場合(異型なし)

経過観察し、状態が軽快しなければMPA(酢酸メドロキシプロゲステロン)というエストロゲン拮抗作用のある薬剤を周期的に投与します。

子宮内膜異型増殖症の場合(異型あり)

内膜の全面掻把(内膜全体を掻き取ること)を行い、細胞の状態をより詳しく検査します。この時にがんが発見される場合もあります。異型の細胞があった場合はがん化の恐れがあるため、妊娠希望がない場合は子宮摘出術と卵巣などの付属器の摘出術を勧められます。妊娠希望がある場合は、高容量MPA投与と内膜全面掻把を行い、治療をしつつ、がん化していないかを継続的にチェックする保存療法が選択されます。

まとめ

子宮内膜増殖症は、その病型によってがん化する可能性が高いものがあるため、上記のような症状や状態の方は早めに産婦人科を受診することをお勧めします。
もし保存療法で良くなった場合も再発やがん化の可能性のある病気のため、長期的に経過を見ていく必要があります。

妊娠の希望がある場合は、がん化のリスクを考える必要がありますが、妊娠できないわけではありません
保存療法で妊娠した症例もあります。妊娠の可能性を取ればがん化のリスクがあり、子宮を全摘してがん化のリスクを失くせば妊娠の可能性もなくなるという非常に難しい選択になります。後悔のない選択ができるようにご家族・医療スタッフとしっかり話し合うことが大切です。