不正出血は、生理と区別がつきにくいものです。多少出血があったとしても、少し生理が遅く来た・早く来たなどと思ってしまいがちですよね。ですが、その不正出血は何らかの病気のサインかもしれません。ここでは、不正出血で疑われる病気とその治療について、医師・柴田 優子先生による監修記事で説明していきます。「いつもの生理とは違う」と思うことがあれば、早めに婦人科を受診することをおすすめします。不正出血が起こる理由については、「生理中じゃないのに…不正出血が起こるのはなぜ?」の記事でまとめていますので、こちらをご覧ください。

目次

【図解】「不正出血での産婦人科受診の流れ・早わかり」はこちら

不正出血の診断は?

不正出血が起こった場合、いくつか原因が考えられます。そのため、何が原因で起こったかを調べ、それに対して治療が行われます。

受診すると、まず問診を受けます。問診では、不正出血が始まった時期、出血の量、出血の持続期間、痛みの有無、病気の既往歴や飲んでいる薬などを聞かれます。問診によっても検査方法が変わる場合がありますので、不正出血が始まったらその時期をメモしておく、既往歴や飲んでいる薬は事前に確認しておくなど、できるだけ正確に伝えるために準備をしておくと良いでしょう。

不正出血で問診の後行われる検査

不正出血は、①外陰・膣②子宮の出口③子宮内 のいずれかからの出血である可能性があります。それを確認しつつ、以下のような検査を行います。

  • :膣に指を入れて卵巣や子宮の様子を見たり、圧迫での疼痛などを観察します。
  • 超音波検査:お腹の上から検査する経腹法と膣から検査する経膣法があります。
  • 宮鏡検査:子宮の中にカメラを入れて子宮腔内の筋腫やポリープの状態を観察します。
  • 血液検査:腫瘍が良性か悪性かを判断したり、全身性の病気がないかを調べます。
  • 細胞診:子宮頚部と体部の組織を綿棒などで採取し、癌細胞がないかを調べます。
  • CTMRI検査:コンピューターにより子宮や卵巣の様子を画像で診断します。

不正出血での診断の流れ

不正出血での診断の流れ-図解

不正出血の病気別治療法

子宮筋腫

子宮筋腫の治療は、手術があります。筋腫が良性と判断され、筋腫による症状がみられない場合は経過観察となりますが、症状がある場合や急速に増大する筋腫は手術の対象となります。

手術には、筋腫だけを取り除く筋腫核出術と、子宮ごと取ってしまう子宮全摘術があります。子宮を残す患者さんの場合、筋腫核出術を行います。子宮筋腫は、再発することがあります。

経過観察中に薬を使う治療では、偽閉経療法があります。これは、薬を使って閉経状態にする治療です。治療を行っている間は筋腫の大きさが20~40%程度に縮小する方もいますが、大きさが変わらない方もおられます。またこの治療は治療効果と保険診療上、半年間しか行えません。治療を中止すると元の大きさに戻ってしまいます。さらにこの治療は女性ホルモンの分泌が少なくなるため、更年期に似た症状が現れることがあります。そのため、この方法は手術前あるいは閉経までの一時的な治療法として用いられます。

子宮内膜症

月経困難症の原因ともなる子宮内膜症には、卵巣にできる内膜症性卵巣嚢腫(チョコレート嚢腫)と子宮内にできる子宮腺筋症があります。この治療には手術か薬を用いたものがあります。

内膜症性卵巣嚢腫では、ある程度以上の大きさになると手術を行います。今後の妊娠を望む場合、嚢腫だけを核出する手術となりますが、手術によって卵巣機能が低下し妊孕性が低下するケースがあるので、すぐに手術をしない場合もあります(ただし、もともとの卵巣機能と年齢、腫瘍の大きさによって判断します)。妊娠の予定がない場合は、病巣部に加えて卵管・卵巣を摘出する場合もあります。

薬による治療では、まずホルモン量の少ない薬から使用します。

また、卵巣の内膜症性卵巣嚢腫(チョコレート嚢腫)は、稀に癌化することがあります。経過観察が大切です。

癌(子宮頚癌子宮体癌膣癌)

基本的に、手術による治療が行われます。手術ができない時には放射線療法、化学療法が取られます。

これらの癌は、早期発見すれば治癒が見込める病気です。そのためにも、不正出血などの症状がみられたらすぐに受診することが大切なのです。

子宮頚管ポリープ子宮頚管炎膣炎

子宮頚管ポリープは、診察中に簡単に取れるものもありますが、手術が行われる場合もあります。

子宮頚管炎や膣炎は、真菌や細菌が原因であるため、抗真菌剤や抗生剤が内服薬として処方されたり膣内投与されたりします。

卵巣機能不全

排卵がある場合、特別な治療は行わないこともあります。無理なダイエットが原因であることも多く、原因を突き止め改善することで治ることがあります。

不正出血はあっても月経がない(無月経)場合や、無排卵による月経不順・不正出血、更年期障害などではホルモン療法が取られます。

<血液性疾患>

白血病・特発性血小板減少性紫斑病

白血病の場合は、化学療法と造血幹移植が主流となります。また放射線治療が行われる場合もあります。特発性血小板減少性紫斑病の場合は、ステロイドや免疫抑制剤などの薬が使われます。

妊娠によるもの

妊娠初期の不正出血では、流産子宮外妊娠の可能性もあります。特に子宮外妊娠は生死に関わる経過を遂げることもあり、緊急手術が必要になります。妊娠中にみられる不正出血は、切迫流早産かもしれません。切迫流早産の場合は、安静にして、無理な運動などを中止し、医師の指示に従います。

不正出血が起こったら…

安心

不正出血があっても、基礎体温をつけていれば、ホルモンのバランスが崩れているせいなのか、妊娠性のものなのかといった確認ができます。普段から、基礎体温をつけてみると良いでしょう。また不正出血で受診した場合、基礎体温表を医師に見せることで、診断がより早く正確に行えるようになります。

婦人科外来には行きたくない人が多いものですが、少しでも不安な症状があったらできるだけ早めに医師に相談してください。内診には恥ずかしさや抵抗があるという方もいると思いますが、リラックスしていれば大丈夫です。安心して受診しましょう。

子宮がん検診などを受ける機会があれば、受けておきましょう。定期的に検診を受けることで、癌を早期の状態で発見できるかもしれません。

まとめ

不正出血は、様々な病気のサインである可能性があります。不正出血が起こっているのに、自己判断で大丈夫だと思い込むのは危険です。おかしいと思ったら、一度検査を受けてみてください。「内診を受けるのが恥ずかしいから」などと我慢してしまいがちですが、検査を受けて何も問題がなければ、それで安心できますよね。まずは、婦人科で相談をしてみましょう。