「自家中毒症」という病気をご存知でしょうか?いつも元気な子供が急に何回ももどすようになったり、元気になったり嘔吐と回復を繰り返す病気です。繰り返し嘔吐をしてしまう原因とは?今回は子供の自家中毒についてご説明します。
自家中毒症ってどんな病気?
自家中毒症は、「周期性嘔吐症」や「ケトン血性嘔吐症」とも呼ばれ、2~10歳くらいの子供に多く発症すると考えられています。原因は様々ありますが、風邪などを引いて熱が出たときや、遠足や発表会など興奮したり緊張したりするような行事の前後など、ストレスがかかった際に急に顔色が悪くなって、吐き気、腹痛や頭痛などを訴え、その後何回も嘔吐を繰り返します。「周期性嘔吐症」という呼び名は、同じような症状を何度も繰り返すことに由来しています。
自家中毒症が起きるメカニズムとは?
私たちの身体は、ブドウ糖を燃やしてエネルギーを作っていますが、自家中毒症のお子さんでは、ストレスなどによりブドウ糖をエネルギー源とする回路が上手に働かなくなり、代わりに脂肪をエネルギー源として燃やすようになります。脂肪が急に燃えると、ケトン体という物質が出てきて、これが身体に溜まると吐き気、腹痛や頭痛などを引き起こし、脳の嘔吐中枢を刺激して頻繁にもどすようになるのです。
2~10歳くらいの子供はまだ脳の中枢や自律神経の機能が安定していません。そのため、精神的、肉体的なストレスが加わると体の消費するエネルギー源がブドウ糖から脂肪に代わって、自家中毒症の症状が現れるのです。
自家中毒症の症状は?
自家中毒症の症状には以下のようなものがあります。
- 吐き気
- 嘔吐
- 腹痛
- 頭痛
- 倦怠感
- 蒼白
- 食欲不振
など
いつもは元気なお子さんが、急に吐き始めて嘔吐を繰り返します。激しい嘔吐の発作は数時間から4~5日程度続き、自然に落ち着き元気になることを繰り返します。発作が起きたときは脱水のために点滴が必要になることさえもありますが、発作のない時は症状がありません。
自家中毒症はなぜ起きる?
自家中毒症を発症するきっかけはお子さんによって様々あり、風邪などの感染症、心理的ストレス、チョコレートなど刺激食品の摂取、睡眠不足などがあります。心理的ストレスというとお子さんに何かあったのかと心配になってしまう保護者の方もいるかと思いますが、発作の引き金になるような例として、遠足の前の興奮やピアノの発表会前の緊張が挙げられます。また、忙しくて夕食などを食べ忘れて発症したエピソードもあります。こういった刺激や低血糖の状態により身体が反応して症状が起こると考えられており、特に繊細で心配性のお子さんや興奮しやすいお子さんに多く起こるとされています。
ご家族に片頭痛の方が多いのも特徴的です。自家中毒症は思春期までには自然に治ることが多いのですが、片頭痛への移行が30%程度に認められます。
自家中毒症の治療法や予防方法は?
尿検査を行ってケトン体という物質を認め、このような症状が繰り返されれば自家中毒症と診断されます。子供が繰り返し嘔吐をするようになれば、早めに小児科を受診しましょう。重症化すると低血糖を合併して入院が必要になることもありますが、早めに受診すれば点滴や投薬などの処置で症状も落ち着く場合が多いと考えられています。
嘔吐をした後は、常温のスポーツドリンクや砂糖水のような甘い飲み物を少しずつ与えます。それ以外の食事は吐き気がおさまってからで、おかゆなど、消化のよいものを、様子を見ながら食べさせます。また、血糖を上げるために飴玉などもよいでしょう。
この病気は同じ症状を繰り返すことが特徴的なので、発症したときにメモを取り症状の前兆やパターンを把握しておくことが役に立ちます。チェックすべき点には以下のようなものがあります。
チェックポイント
- いつ吐いた?
- 1時間に何回吐いた?
- 吐く直前に何を食べた?
- 吐く前に他の症状はあった?(腹痛、吐き気、頭痛、食欲不振など)
- 心配ごとがある?
- その他気になること(症状が落ち着いたときに飲んだもの、食べたものなど)
自家中毒症は治る?
大抵の場合は、成長とともに栄養素の消費方法が改善し、思春期になれば治る病気です。お子さん自身が吐き気を抑えることは難しく、突然の嘔吐は体力を消耗して精神面でも不安になることもあります。しかしお家の方が病気を正しく理解して上手に付き合えれば不安になる病気でも怖がる病気でもありません。前兆があれば早めに対処したり、もどした後の心のケアをしたりするなどすれば、お子さんに安心感も生まれます。普段からお子さんの様子に気を付けて見守ることが大切です。
まとめ
自家中毒症はやせ型の子供に起こりやすく、興奮や緊張するような行事の前後、また睡眠不足や食事を食べない時間が長い時などに、吐き気、腹痛や頭痛などを訴えその後に嘔吐を繰り返す病気です。普段は元気な子供が急に嘔吐を繰り返すと親も子供も不安になりますが、この疾患の場合には、たいては思春期には治ると考えられています。子供の心のケアをしながら、食事・睡眠などを十分にとり無理のないスケジュールでお子さんを見守りましょう。