子供が寝ている時に、熱もないのに、突然泣き叫んだり、歩き回ったりしたことはありませんか? なだめても治まらず、どうしたらいいのか分からず、困ったことがある方もいらっしゃると思います。そのような症状は夢遊病や夜驚症と呼ばれるものかもしれません。ここでは、子供が寝ている時に起こる夢遊病と夜驚症(やきょうしょう)について解説します。

目次

睡眠リズムについて

睡眠中は、浅い眠りの「レム睡眠」と深い眠りの「ノンレム睡眠」を交互に繰り返しており、脳と体はそれぞれが別々のタイミングで休息を取っています。

レム睡眠時の脳は覚醒状態に近く、夢を見るのもこの時です。脳は起きている状態なのですがからだはしっかりと休んでおり動くこともできないため、寝返りもしません。いわゆる金縛りが生じるのもこの睡眠中と考えられています。

一方、ノンレム睡眠時の脳はしっかりと休んでおり、夢を見ることはありません。しかしからだは起きている状況であり寝返りを打ったり、動かしたりすることができます。脳がしっかりと寝ているタイミングのため、ノンレム睡眠期の人を起こそうと思ってもなかなか起きてくれませんし、無理矢理起こされることになるため寝起きも非常に悪くなります。

ノンレム睡眠は、うとうとした眠り(第1段階)すやすやした眠り(第2段階)深い眠り(第3・4段階)まで、眠りの深さによって4段階に分けられます。第3段階と第4段階は、脳の活動を記録する脳波検査で、徐波(脳が休んできる時に出現する波)の頻度で分けられます。レム睡眠は上述の通り脳が覚醒している状態であるため、脳波検査だけでは寝ているのかどうかの区別を付けることはできません。

入眠したばかりではノンレム睡眠が深く長く出現し脳の休息を最優先としますが、時間が経つにつれて浅く短いレム睡眠が増えていき、起床に向けて準備を整えるのが一般的な睡眠のリズムです。

赤ちゃんが目をさます頻度はどのくらい?

新生児の頃は夜中に何度も起きるのが一般的ですが、月齢を重ねるにつれてまとまった睡眠がとれるようになってきます。しかしそれでも、1歳頃では一晩に2回以上目を覚ますこともあります。その後さらに目を覚ます頻度は減っていき、5歳を過ぎると夜間に目を覚ますことがなくなることが多いです。このように、徐々に大人と同じ睡眠リズムになっていきます。

子供の睡眠障害とは?

何らかの理由・原因で睡眠の質・量・リズムが狂ってしまうことを睡眠障害といいます。

睡眠障害にはいくつかの種類がありますが、ここでは子供によくみられる「夢遊病」と「夜驚症」について解説します。

夢遊病とは

寝ているにも関わらず、突然起き上がり、歩き出すなどの行動をするのが夢遊病です。睡眠時遊行症とも呼ばれます。

夢遊病は眠りについてから1~3時間程度で生じることが多いです。この時間帯は、ノンレム睡眠の時間にあたります。3歳頃から小中学生くらいに発症します。子供の約15%程度に、少なくとも一度は夢遊病の症状を認めるといわれます(メルクマニュアルより)。

突然起き上がって、部屋を歩き回ったり、服を着替え始めたりします。からだはしっかり動かしているのですが、ノンレム睡眠中なので脳は眠った状態であり、呼びかけてもほとんど反応はなく、目を覚ますこともありません。数分で収まることもあれば、20~30分持続することもあります。その後は再び寝てしまいます。このような行動について、本人の記憶はありません。

夢遊病は、次で解説する夜驚症と一緒に起こることもあります。

ちなみに、夢遊病という名前ですが、名前から連想するように夢を見ながら歩いているわけではありません。夢を見ない深い眠りのノンレム睡眠時に起こるため、夢を見ていないのに夢を見ているかのように歩いている、ということになります。

夢遊病の原因は?

夢遊病の原因や、どのようにして夢遊病が起きているのかは分かっていません。

子供から大人への成長過程で、脳の一部の機能(睡眠リズムをコントロールする働き)が未発達であることが原因と言われていますが、はっきりとしていません。

大人でも夢遊病を起こすことがあります。大人では睡眠不足やストレス、飲酒などが原因になります。

また、遺伝も影響しているといわれています。両親や兄弟・姉妹に夢遊病を認めたことがある場合には、そうでない場合と比べて発症しやすいといわれます。

夢遊病の対処法は?

夢遊病は子供特有の病気であり、大人になるに連れて自然に治癒することがほとんどであるため積極的な治療は必要ありません。しかし、夜間無意識のうちに歩き回ることから不慮の怪我を引き起こす可能性もあります。夢遊病を起こしているお子さんが怪我をしないための配慮や、症状が出現した場合も親御さんが迅速に対応できるように、お子さんが早めに就寝するよう促すことも大切です。
対処法については、別記事でさらに詳しく解説しています(記事末尾をご覧ください)。

夜驚症とは?

子供部屋

寝ている時(特に 眠りについて1~3時間くらいの深い眠りの時)、突然目を覚まして大声をあげる、泣き叫ぶ、呼吸が速く不規則になる、汗をかく、嘔吐するといった症状が出現します。また、興奮状態・錯乱状態にあり、起き上がって動き回ることもあります。時間は数十秒から5分程度(長い場合は10数分程度)続きます。このような行動が、多い時には一晩に3~4起こることもあります。

このような言動を認めますが、夢遊病と同様に深い眠り(ノンレム睡眠)で起こるため、話しかけても反応はなく、本人は翌朝も何も覚えていません。2歳~小学校低・中学年の間に見られることが多いです。

夜驚症の原因は?

夜驚症の原因についても、夢遊病と同様にはっきり分かっていません。ただ、成長過程における脳の働きの未熟性(うまく睡眠覚醒のリズムがコントロールできないこと)が影響していると考えられています。

また、学校で先生に怒られた時や、環境が変わった時などに起こることも多く、夜驚症では何らかの恐怖体験や不安などがきっかけになることもあると考えられています。

夜驚症の対処法とは?

夢遊病同様、夜驚症も成長を待つことで自然治癒することが充分期待できます。また、夜驚症状を引き起こした日中の体験を特定できる場合にはきっかけになった出来事に対応することで、夜間の症状を軽減できることもあります。

まとめ

夢遊病も夜驚症も何の前ぶれもなく、突然起こり、その行動や激しい泣き方などに驚かされます。また、夜に突然起こるため、どうしたらいいのか分からず困ることもあるかと思います。この記事が少しでも参考になればと思います。