お腹の中にいる赤ちゃんの推定体重が、基準値より少ない状態を胎児発育不全といい、なんらかの原因により赤ちゃんの成長が妨げられている状態ですが、妊娠と出産、そして赤ちゃんにどのような影響があるのでしょうか?

ここでは、胎児発育不全の原因や赤ちゃんへの影響などについてお話ししたいと思います。

目次

胎児発育不全(FGR)とは

妊娠中の赤ちゃんの体重が、その妊娠週数の一般的な胎児の体重と比べて明らかに小さい場合を胎児発育不全(FGR)といいます。定期健診の時に子宮底長(子宮の大きさ)を測定し、子宮があまり大きくなっていない時や、妊娠中期以降に疑われます。

FGRでは赤ちゃんが標準より小さく生まれる確率が高いため、赤ちゃんが生まれた後に様々な病気の発症リスクが高くなることがわかっています。

赤ちゃんが生まれた時の体重が胎内にいた週数の標準と比較して小さい赤ちゃん(LGA児)は、周産期死亡率(妊娠満22週以後の死産と、生後1週未満の早期新生児死亡の確率)が高く、精神発達遅滞生活習慣病高血圧、糖能異常)などの発症率が高いことが知られています。

胎児発育不全(FGR)の原因は?

胎児発育不全は、いくつかの要因が絡み合うことで発症します
FGRになりやすくなる危険因子として、以下のようなものがあります。

赤ちゃんの因子

  • 染色体異常(18トリソミー、13トリソミー、ターナー症候群、3倍体など)
  • 形態異常
  • 多胎妊娠
  • 胎内感染(先天性風疹症候群、TORCH症候群)

胎盤、へその緒の因子

  • 胎盤異常(前置胎盤、胎盤梗塞など)
  • 付着部異常(へその緒の付着位置が胎盤の端すぎる辺縁付着や、表面の卵膜に付着している卵膜付着など)

お母さんの因子

  • 合併症(妊娠高血圧症候群(HDP)、高血圧、妊娠前の糖尿病、腎疾患、甲状腺疾患、自己免疫疾患、抗リン脂質抗体症候群、チアノーゼ型心疾患など)
  • 生活習慣(喫煙アルコール
  • 薬物(シクロフォスファミド、バルプロ酸、ワルファリン)
  • その他(低身長、出生時低体重、LGA児分娩既往、妊娠前のやせ、体重増加不良など)

特に、お母さん側の危険因子はできる限りで取り除かなくてはいけません

胎児発育不全(FGR)だとわかったら

FGRは、赤ちゃんができるだけ元気な姿で生まれることができるよう、適切なタイミングと方法で分娩することが重要です。

分娩の時期や方法を検討するために、妊娠中はNST、BPP、推定体重の推移、羊水量、超音波パルスドプラ法による臍帯動脈血流や中大脳動脈測定などの様々な検査を定期的にすることになります。どのような検査を、どれくらいの間隔で行うかは赤ちゃんの様子を見つつ都度対応していきます。

特に超音波パルスドプラ法による臍帯動脈血流を週に1度計測し、分娩時期の検討を行った場合、周産期死亡が38%減少したという報告もあり(産婦人科ガイドラインより)、検査は重要です。

分娩方法は必ずしも帝王切開術になるとは限らず、経腟分娩のこともあります。

まとめ

赤ちゃんが成長しているかは妊婦健診のエコー検査で診てみないとわからないため、妊婦健診は定期的に受けることが重要です。また、定期的にエコーで赤ちゃんの成長を追いかけていないと正しい分娩予定日を割り出すことが難しくなります。

妊婦健診では推定体重だけでなく、羊水量、胎動、胎児の筋緊張など赤ちゃんの状態をエコーで詳しく観察したり、母体の体重や血圧、尿検査などを毎回行うことで、赤ちゃんやお母さんに異常がないかを診ていくことができます。

異常の早期発見・早期治療には定期的な妊婦健診の受診が重要になりますので、指定された日時に健診を受けるようにしましょう。