先天性心疾患とは、生まれつき心臓や血管の形が正常とは違う病気のことです。自分の子供が先天性心疾患と診断されたら、ちゃんと治すことができる病気なのか不安に思うことでしょう。
最近の医療の発達に伴い、先天性心疾患の診断や治療も大幅に進歩しました。今回は、先天性心疾患の治療について説明していきます。

先天性心疾患がどのような病気かについては、「生まれつき心臓が悪いと言われたら…先天性心疾患にはどんなものがある?」の記事をご覧ください。

目次

先天性心疾患の治療

先天性心疾患には沢山の種類があり、複数の心疾患が合併することも少なくはありません
どの疾患も最初の診断と治療方針の決定が重要です。小児科の循環器専門医がいる病院にかかりましょう。

先天性心疾患の場合、自然閉鎖が期待できる心室中隔欠損症を除いては一般的に手術が適応されます。心臓の形の異常や血管の異常(心臓の穴や動脈と静脈の間に横道がある等)が大きいほど、病状の悪化が早く進んでしまうため、状況によっては早めに手術が必要となることもあります。

病気の状態を確認するために、心電図、胸部レントゲン、心臓超音波検査などの検査を受けますが、多くの先天性心疾患で手術前にカテーテル検査が必要となります。
一部の疾患では、断層心臓超音波検査やCTやMRI検査を併用して、カテーテル検査をせずに手術をするということもあるようです。

※カテーテル検査とは、カテーテルと呼ばれる管のようなものを足の付け根などの血管から心臓の各部屋まで入れて、血圧や酸素の濃度を測ったり、造影剤を入れて心臓内の血液の流れを画像で見たりする検査のことです。この結果から、心臓のどこに、どれくらいの穴が空いているのかなどを判断し、どう治療するか計画し、手術に至ります。

子供の心臓手術

ハート

子供の心臓手術は、大人の心臓手術に比べて難しいとされています。

大人の心臓病の多くでは、もともとの心臓は正常です。
長い間生きてきたことによる弁や動脈の故障が原因として挙げられ、故障した部分を戻すことが治療となります。

一方、先天性心疾患をもつ子供の心臓は、もともと正常な心臓ではなく、あるべきものがない状態のことが多いです。手術は、正常に近い形をつくることが目的です。手術に使用する部品も適したサイズがなかったり、小さい心臓や血管を扱うので細かい手術操作が必要になったりします。

さらに、子供の体は成長していきます。心臓ももちろん形成途中です。そのため、将来を予測して手術を行う必要があり、長期的な経過観察も必要となります。

先天性心疾患の手術について

先天性心疾患の手術には、根治手術姑息手術があります。疾患や病状によって手術の方法も異なります。

根治手術は正常に近い状態に治す手術(最終的な手術)です。
姑息手術は、1回で根治手術ができないときに、その前の準備となるような手術をいいます。

疾患にもよりますが、新生児や小児の手術はいきなり根治手術をすることが容易ではない場合も多く、姑息手術や薬による内科的治療、カテーテル治療などを併用し、治療が選択されていきます。

保護者にできること

ボール遊びをする子供

先天性心疾患の場合、子供の時期も含め、大人になっても充実した生活を送るために、ご家族と周囲の人たちの理解と協力が欠かせません。

日常生活では、赤ちゃんの頃はミルクを飲むことが体に負担がかかる重労働になり、息を切らせる心不全の症状がみられることがあります。
利尿剤の内服などにより水分量を調節して、一度に飲む量を減らして回数を増やすようにしましょう。

また、風邪は状態が急に悪くなる原因の一つです。病状が落ち着くまでは、人ごみなどに行くのはできるだけ控え、沢山汗をかいた時は、体が冷えたり風邪を悪化させたりしないよう、こまめに衣類をかえましょう。

赤ちゃんは泣くのも仕事ともいいますが、ファロー四徴症などでチアノーゼが強い場合は、長い間大泣きした時や、排便時のいきみで状態が悪くなることがありますので、必要以上に長い間泣かせないようにすることや、普段から便秘にならないようにすることも大切です。

幼稚園や小学校に通うころになると、少しずつ病状が安定してくるでしょう。日常生活の中での注意点は病気の種類や術後の状態で異なります。
主治医の意見をよく聞き、また幼稚園や学校の先生とも連絡を取り、無理なく有意義に生活を送れるようにサポート環境を整えましょう。

まとめ

先天性心疾患は子供一人一人の心臓の状態によって、治療法も異なります。また、症例が少ない疾患の場合はより病院や医師によって治療法の意見が分かれることもあります。

今までの経過を一番理解している主治医の説明をしっかり受け、些細なことでも不安や疑問に思うことがあるのならば相談しましょう。もしも違う医師の意見も聞きたいという場合には、セカンドオピニオンを利用するのも一つの手です。