家族や大切な人が抑うつ状態になったら、何ができるでしょうか。治療にご家族の協力はもちろん大切ですが、「自分のせいで病気になった」と責任を感じたり、悲観する必要はありません。重症のうつ病と診断された場合でも、いつかは必ず改善していきます。焦らず正しく病気を理解し、適切に対応していきましょう。ここでは家族にできるサポートについてまとめました。

目次

うつ病とは?

うつ病とは「憂うつな気分」「気持ちが重い」という抑うつ状態が、ほぼ1日中2週間以上続く状態をさします。睡眠・食欲・性欲などの意欲が低下したり、身体的に多様な自覚症状を伴います。

私たちには自然治癒力が備わっていますので、様々な不具合があっても、通常は時間とともに回復していきます。しかし、うつ病の場合は、回復するためのエネルギーが欠乏しており、時間が経っても不調が改善せず、日常生活に支障をきたすようになるのです。

抑うつ症状を呈する疾患としては、うつ病以外にも認知症・アルコール依存症・統合失調症などの精神疾患や、甲状腺疾患・糖尿病などの一般的な身体疾患があります。さらには薬の副作用が原因で抑うつ症状を呈することもあります。正しい原因を知り、適切な治療を受けるためにも、まずは医師に相談してみるとよいでしょう。

抑うつ状態とそうでない場合の境目は、周囲から見るとあいまいなことも多く、「ただ怠けているだけ」と誤解してしまいがちです。病気であることを理解し改善するためには、家族が正しく本人の状況を理解し、長い目で見守りつつ関わっていく必要があります。

家族にできるサポート

うつ病_話し合い-写真

うつ病と診断される前のかかわり

 

ゆったりと話を聴く

ゆったりした気持ちで本人の話を聴いてみましょう。話の内容に同意できなくても敢えて否定せず、相手の気持ちを理解することに重点をおくようにします。質問攻めにしたり、話したくないのに無理に聞き出すことは避けましょう。

安心して休息できる環境をととのえる

抑うつ状態になったら、安心して休息することが一番大切です。本人が「動けなくて申しわけない」と焦っている場合も多いので、「休んでいてもいいんだ」と思えるように声をかけたり、環境をととのえるよう心がけましょう。

病院の受診を勧めてみる

症状がなかなか改善しない場合は、病院の受診を勧めてみましょう。とくに「抑うつ状態だから」「うつ病かもしれないから」などと言う必要はありません。心配している気持ちを丁寧に伝え、できれば病院に付き添っていきたいものです。

うつ病と診断されたら

病気の原因を探さない

うつ病の原因はさまざまな要因が複雑に絡みあっており、専門医でも特定が難しいものです。原因を追求するのではなく、今ここからできることを考えましょう。ただ、明らかに本人にとってストレスとなっていることが分かっている場合は、その原因を取り除くようにしましょう。

励まさない

うつ病では「頑張れない自分が悪い」などの自責の念に苦しんでいる場合が多く見受けられます。そのため「頑張って」「やればできるよ」等と励ますと、さらに症状を悪化させることになります。本人はすでに頑張りすぎて病気になってしまっていることを理解し、ありのまま受け止めることが大切です。

焦らせない

「早くよくなって」「早く職場に復帰できるといいね」などと声を掛けたくなることがあるかもしれませんが、うつ病の患者さんに焦りは禁物です。上の「励まさない」とも通じるところがありますね。焦りは、うつ病からの回復を遅らせる原因となります。「休むのが仕事」であることをと伝え、ゆったり構えると良いでしょう。

無理に気分転換を勧めない

健康であれば日常生活から抜け出す旅行などが気分転換になりますが、心のエネルギーが消耗しているうつ病の場合、それは逆効果です。本人の気持ちをよく聞いて、無理に気分転換を勧めないようにしましょう。

大きな決断をしないようにアドバイスする

うつ病のときは、心理的に視野が狭くなり、判断能力も低下する傾向にあります。結婚・離婚・就職・転職・退職といった人生における大きな決断は、回復してから下すようにアドバイスしましょう。

可能な限り受診に付き添う

可能であれば、受診に付き添って主治医の話を一緒に聴くことをお勧めします。それによって、主治医に家族としての意見を伝えることもでき、サポートの仕方について学ぶこともできます。ただ、あくまでも付き添いですので、うつ病の本人と医師の会話を中心に考えましょう。

自殺のサインに注意する

「自分は駄目だ」「責任を果たしていない」「皆に迷惑をかけている」などの自責の念が強いときは、自殺のリスクが高くなります。次のようなサインが数多くみられる場合は、ためらうことなく早めに主治医に連絡をとったり、専門家に相談しましょう。

自殺予防の十個条

  1. うつ病の症状に気をつける
  2. 原因不明の身体の不調が長引く
  3. 酒量が増す
  4. 安全や健康が保てない
  5. 仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う
  6. 職場や家庭でサポートが得られない
  7. 本人にとって価値あるものを失う
  8. 重症の身体の病気にかかる
  9. 自殺を口にする
  10. 自殺未遂に及ぶ

(出典:厚生労働省「職場における自殺の予防と対応」)

どんなところに相談したらいい?

専門医療機関

専門的な意見を求めたり、必要に応じて治療して欲しい場合は、精神科医・心療内科医をお探しください。大学病院や個人の診療所など、様々な選択が可能です。かかりつけ医がいる場合は、そこから紹介してもらえることもあります。

その他の相談機関

専門医療機関にいくことがためらわれる場合は、電話などによる無料の相談機関を活用しましょう。また、就業している場合は、職場の産業医、保健師、臨床心理士などに相談することも考えられます。職場の専門家には守秘義務の厳守が法律で定められています。家族が職場の専門家に直接相談する場合は、本人の了解を得るようにしましょう。

まとめ

うつ病の治療は、家族のサポートが得られる場合とそうでない場合とでは、回復に大きな差があります。あなたがこのサイトを訪れたこと自体、うつ病の本人を大切に思い、支えようとしている証拠です。それは病に苦しむ本人にとって何よりうれしいことなのです。思うように病状が改善しなくとも、「いずれかならず良くなるから大丈夫」というゆったりとした気持ちで本人に関わっていきましょう。