腰からお尻、脚にかけて痛みがあってしびれたり、歩くこともままならなかったりする坐骨神経痛。症状がひどくなる前に治したいものですね。ここでは坐骨神経痛の治療法について解説していきます。

目次

まずは検査による原因特定から

坐骨神経痛はそもそも1つの病名ではなく、「主におしりから足にかけて痛みがある」という症状を指しています。
ですので痛みを起こしている原因は人によって違い、原因を特定するためにもまずはX線やMRIなどを使って検査をする必要があります。

坐骨神経痛の原因となりうる病気には、主に下記の2つが挙げられます。

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症

このほかにも、稀ですが梨状筋症候群、脊椎・脊髄や骨盤内の腫瘍(良性の場合も悪性の場合(がん)もあります)が原因で坐骨神経痛を起こしているケースがあります。

坐骨神経痛の治療方法

原因疾患や患者さんの状態に合わせて治療方法は変わっていきますが、坐骨神経痛ではまず、保存療法によって痛みを緩和していくことがほとんどです。
保存療法とは手術などの外科的治療を除いた治療法のことです。保存療法では効果がない場合などには手術療法も検討されます。

以下では、主な原因疾患である腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄における治療方法についてご紹介します。

腰椎椎間板ヘルニアの場合

腰椎椎間板ヘルニアの場合は、椎間板が飛び出すことで、神経を圧迫して痛みが出ます。

痛みやしびれは、急に起こる場合もゆっくり起こる場合もありますが、急に起こるのは比較的若い人に多いようです。

安静

腰椎椎間板ヘルニアの患者さんは、痛みの強い時は安静にすることが大切です。
コルセットをつけることもあります。

薬物療法

薬による治療では、鎮痛消炎薬(痛み止め)を利用したり、神経ブロックを行ったりします。

鎮痛消炎薬(痛み止め)

多くの場合、NSAIDs(エヌセイド:非ステロイド性抗炎症薬)を利用します。NSAIDsは痛み止めとして幅広く使われている薬で、市販の頭痛薬などにも用いられているものです。

なお、NSAIDsは副作用として胃腸障害や腎臓に障害がみられることがあるため、医師に指導された用法・用量を必ず守ってください

また、最近では神経痛に効く薬(プレガバリンなど)もありますので、必要に応じて使用されます。

ブロック療法

痛みの強い患者さんに用いられる方法で、痛みや炎症を抑える薬を注射によって注入する方法です。
腰部から針を刺し、硬膜外腔と呼ばれる脊柱管の内側に局所麻酔薬やステロイドなどを注入します(硬膜外ブロック)。
ただし、この治療は血液を流れやすくする薬(アスピリン、ワーファリンなど)を内服している人や糖尿病の方は、神経のそばの出血や感染のおそれがあるため、できない場合があります。

これによって痛みが神経に伝わるのをブロックできます。治療開始後、早い段階で痛みを抑えられる可能性があります。

理学療法

理学療法とは、運動や、電気・熱などの物理的手段を用いてリハビリテーションを行う治療のことです。

腰椎椎間板ヘルニアでは、腰を温めることで症状が和らぐとされています。
また、痛みが軽い時期に、骨盤の牽引を行ったり腹筋を鍛える運動療法を行うこともあります。

手術療法

上記の方法でも痛みなどの症状がよくならない場合や、著しい筋力の低下、膀胱や直腸に障害が見られる場合(排尿や排便の障害が出ます)には手術を検討します。
具体的には、神経を圧迫している椎間板を切除する手術を行います。
手術と聞くと身構えてしまうかと思いますが、最近では内視鏡を利用して、傷口を最小限に抑える方法も広まっています。

腰部脊柱管狭窄症の場合

腰部脊柱管狭窄症の場合は、年齢に伴って余分な骨ができたり、靭帯が厚くなったりすることで神経を圧迫して痛みが出ます

したがって最初はしびれから始まり、痛みが徐々に進行する場合が多く、60歳以上の高齢者に多い病気です。

姿勢の注意

腰部脊柱管狭窄症では、神経の通り道が狭くなり、その圧迫が痛みを引き起こしています。

典型的な症状は、間欠性跛行です。間欠性跛行とは歩いているうちに足に痛みやしびれを生じて歩けなくなる症状のことです。ただしこちらの症状は、座るなどして少し休むとまた歩けるようになります。このような症状は、下肢の血行障害でも起きることがありますので、自己診断をせずに医師にご相談ください。

腰部脊柱管狭窄症では背筋をまっすぐ伸ばすことで神経の圧迫は強くなるため、腰をかがめることが痛みの緩和につながります
歩く時の工夫としては、杖をつくと良いでしょう。また、自転車を漕いでの移動も痛みを起こしにくいとされています。

薬物療法

腰椎椎間板ヘルニアの項目でも説明した鎮痛消炎薬(痛み止め)や神経ブロックのほかに、血行を良くする薬を利用することがあります。

理学療法・運動療法

ストレッチや運動には、腰部脊柱管狭窄症を改善するという十分なエビデンスは得られていません。しかし筋肉の緊張をほぐすため、理学療法と組み合わせることでつらい痛みをやわらげる効果はあると考えられています。また、運動療法は心理的にも痛みを改善することが知られていますので、こちらも医師や理学療法士と相談しながら取り入れていくと良いでしょう。

手術療法

保存療法で効果がみられず、痛みやしびれなどで仕事や日常生活に支障をきたす場合に手術による治療を行います。

腰部脊柱管狭窄症の手術の方法は神経除圧術です。椎弓と呼ばれる脊椎の背中側の骨の一部を切除することにより、神経に対する圧迫を解消し、痛みをとります。また、骨がずれるような腰椎すべり症などを合併している場合は、骨を固定する場合もあります。

まとめ

坐骨神経痛は患者さんの痛みの状況や原因などによって、選択される治療法が異なってきます。
しかしその多くは、保存療法で痛みのコントロールができるようになるといわれています。

病院に行かず痛みを我慢してしまうと、症状が悪化したり、手術をしないといけない状態になってしまったりすることもあります。また、がん等の命にかかわる病気でないことを調べるためにも、おはやめに整形外科を受診しましょう