学校健診と聞くとどういったことを想像されるでしょうか。幼い頃、裸になってお医者さんに聴診されたり、朝からトイレでおしっこをとったりした記憶がある親御さんも多いことと思います。春の風物詩的な印象もあるかもしれませんが、法律でしっかりと規定されている、子供の保健衛生上極めて重要な行事の一つです。本記事と別記事では、学校健診について親御さんが知っておくべきことについて解説してみようと思います。

目次

学校健診の変遷

学校健診の始まりは1888年(明治21年)に遡り、当時は欧米諸外国と対抗するために子供の健康増進を行うことが非常に重要であると考えられていました。現在では「諸外国との対抗」という意義は薄まっていますが、「子供の健康管理増進」という別の意味合いが学校健診には付加されるようになっています。学校健診は決して慣習的な年中行事の一つとして看過されるべきものではなく、健康についてみんな(親御さん含めて)で意識を高めるための重要な意味合いを含んでいます。

現在、学校健診は「学校保健安全法施行規則」という法律内の第二章において明確に規定されています。自治体毎に実施時期や項目にはある程度の違いはありますが、この法律に基づき毎年4月1日から6月30日までの間に、小学1年生から大学生を対象に健康診断を行うことが義務付けられています。

法整備のもと健康診断が行われることは諸外国と比較すると稀な部類にあり、日本が世界に誇る健康推進システムの中心的役割を担っていると捉えることができます。

学校健診の目的・意義

教室で挙手をする子供たち-写真

学校健診にはその歴史的な流れから判る通り主に二つの側面があります。すなわち、一つは健康管理を達成させるためスクリーニング的な側面、二つ目は健康について子供が自己的に考える教育的な側面、の二つです。

1.スクリーニング的側面:病気の早期発見・早期介入を!

学校健診では校内中の生徒全員を対象としているため、短い時間の中で細かい病気を正確に診断することはできません。かといって大きな病気や異常を見逃すことを避ける必要があるため、少しでも気になる点があれば「要再検」の結果が通知される傾向にあります。学校健診はスクリーニング的な側面が強いことを強調することは、結果を解釈する親御さんにとって非常に重要なことであり、この点に関して後半の記事にて詳しく述べようと思います。

2.教育的側面:健康についてもっとよく知ろう!

学校健診の変遷でも述べましたが、学校健診という仕組みは日本が世界に誇る健康増進システムです。諸外国の多くはこうした仕組みはなく、健康管理に関しては自己責任の側面が強いです。例えばアメリカを例に見てみると学校が毎年健診の機会を設けることはほぼなく、health check upという形でかかりつけの先生を自分で受診する必要があります(MedlinePlus)。またその内容も身長・体重の測定や簡単な問診だけに終止することもある一方、日本で施行される項目の充実さは眼を見張るものがあります。

さらに日本では社会的な背景に合わせて、検査項目を変更する試みも一定期間毎に行われています。例えば平成28年の改訂においては、「習いごとやクラブ活動で激しい運動を続ける子供たちの中に、現代的な健康課題の一つとして運動器障害を抱える子供も見られる」状況を受け、文科省学校の健康診断に、運動器障害の早期発見に向けた新たな検査項目も追加されています(産経ニュースより。下図参照)。社会背景を含めて学校健診を捉えることは、親御さんが現代のお子さん特有の健康問題を考えるきっかけになるでしょう。

運動器の検査例-図解

また、歯科健診等においては歯磨きの大切さを認識することができますし、視力が低下していればゲームをしすぎていないかを見直すこともできます。一つ一つの検査項目は生活習慣と密接に関連しているため、健康について学び、日常生活を見直すいい機会として活用してください。

まとめ

ともすれば与えられて当然の機会のようにも感じられる学校健診ですが、ぜひ、この機会を家族みんなで健康について考える向き合う絶好のチャンスと捉えるようにしてください。異常結果を受け取った時はもちろんですが、正常な結果を見た時にもきっと学べることはあるはずです。