前回の記事において歴史的な変遷をもとに親御さんがどのように学校健診に向き合うかについて概説し、正常な結果からも学ぶことがあることを記述しました。今回の記事では学校健診において「引っかかった」場合に焦点を当てて見ようと思います。

目次

「再検査」イコール「異常」!?

学校健診の結果はその内容に関わらず、健康診断を受けた日から21日以内に通知することが法律で規定されています(学校保健安全法施行規則第九条)。検査項目にもよるのですが、結果は大まかには「正常」と「再検査」に分類されます。

ここで注意するべきことは、「再検査」イコール「異常」ではないということです。先の記事でも記載しましたが、学校健診は異常を早期発見するスクリーニング的な性格が強いです。可能な限り異常を拾い上げるシステムとなっているため、正常なお子さんに対しても「要検査」の通知をすることも多々あります。また本当に異常であった場合にも、早期介入をすることでお子さんが安心して学校生活を送ることが期待できます。

「要検査」の通知が来ると不安な気持ちになるかもしれませんが、「学校健診は早期介入を目的としたスクリーニグ」ということを理解しつつ、早めに指定通りの行動をとるよう心がけてください。

検査項目毎の注意点

ランドセルを背負って走る子供たち-写真

次に、学校健診で初めてひっかかることが多く、かつ親御さんが特に不安になるであろう「尿検査」「心臓検査」について詳細を述べようと思います。その他の検査項目(例えば視力検査や歯など)についても「児童生徒等の健康診断マニュアル」にて記載されていますので、必要に応じて参照ください。

尿検査について

当時「腎臓病」は学校を長期に欠席するお子さんの第一位の理由であったことから、早期発見を目的として尿検査が昭和49年(1974年)4月から学校健診の検査項目に含まれるようになり、以後健康増進に多大なる貢献を果たしています。また近年においては「糖尿病」を原因とする腎不全が増加の一途をたどっており、学校健診による尿検査が「糖尿病」早期に発見する役割を担うようにもなってきています。その他、腎臓病には自覚症状がないものも多く、学校健診で初めて病気が指摘されることも稀ではありません。

学校健診で行われている尿検査では、尿の中に血液・たんぱく・糖が認められていないかを調べるよう規定されています。しかし、尿検査の結果を正しく解釈するためにも、採尿に際して以下の項目を遵守することが必要不可欠です(通常は「採尿方法」として事前に通知を受けます)。

  • ビタミンCを含む飲み物を避ける(潜血反応が間違って陽性になりうるため)
  • 寝る前に排尿をする。朝一番の尿のうちでも特に中間の尿を採る(いずれの検査項目も疑陽性で出てくる可能性があります)
  • 生理日を可能であれば避ける

尿検査では採尿自体の不手際が原因として「要検査」となることも多いです。尿検査結果によっては迅速に病院を受診する必要がある場合もありますが、多くの場合は本当に腎臓病であるのかどうかを決定するために繰り返し尿検査を受けることが重要です。要検査を受けた際にはまずは再検査を行い、状況を見つつ専門医による診察を受けるかどうかを決定することが必要です。最終的に腎臓病であると判断された場合には、重症度に応じて学校生活管理指導を受けることもあります。

(「学校検尿のすべて」参照)

心臓検査について

心臓疾患の中には、特別な自覚症状がないまま経過し突然死を引き起こすような病気があります。またその他の心疾患においては、心臓への負担を軽減するために運動制限を設ける必要がある病気もあります。これら病気を早期発見するために学校健診で行われる心臓検診には、下記の3ないし4つの項目が含まれています。

  • 問診
  • 聴診
  • 心電図
  • 心音図(自治体による)

これらスクリーニングでおよそ2-5%のお子さんが要検査の通知を受けると考えられています(学校心臓検診の実際、p.39)。要検査では小児循環器専門医による診察や運動負荷心電図、エコー検査、レントゲン写真などを組み合わせ、最終的に異常かどうかを決定します。さらに心疾患が指摘された場合には重症度も判定し、必要に応じて学校生活における運動制限(生活指導管理区分)や突然死予防の対策を講じることになります。

尿検査と同様、要検査だからといってすぐ病気というわけではありませんが、最悪の場合突然死を招く病気の可能性もあります。要検査の通知を受けたら、早めに二次検査を受けるようにしましょう。

(「学校心臓検診の実際」参照)

まとめ

いわゆる「学校健診で引っかかる」場合は、通常の検査とは違った心持ちをもつ必要があります。お子さんが本当に病気であるのか、また病気である場合にも適切な管理を行うことで健康な学校生活を送ることを促すためにも、早めの対応をすることを心がけましょう。