インフルエンザや水ぼうそう(水痘)など、かかった場合に登園・登校できない病気(感染症)があるのはご存知かと思います。このような感染症は他にはどのようなものがあり、どのくらいの期間で症状が出現するのでしょうか。また、治ったらすぐに登園・登校できるのでしょうか。ここでは学校を休まなければならない学校伝染病についてまとめました。

目次

学校伝染病とは?

学校は多くの子どもたちが集団生活を行う場です。そのため、学校で感染症が流行した場合には大きな問題となります。流行しやすい、流行すると問題の大きい感染症を予防するため、「学校保健法」によって学校伝染病が決められています。

学校保健法はこれらの感染症を予防することで、教育を受ける場・集団生活の場として望ましい環境を維持すること、健康な状態で教育を受けられることを目的としています。

主な学校伝染病について

学校伝染病は、第一種・第二種・第三種に分類されています。

第一種

感染することはまれですが、感染症法で定められている疾患で、かかると重症化し、伝染力が強い疾患が分類されています。

  • エボラ出血熱
  • 鳥インフルエンザ
  • 急性灰白髄炎(ポリオ)

など、11種が含まれます。

第二種

空気感染・飛沫感染(感染している人のやくしゃみに含まれる病原体を吸い込んで感染)するもので、子供がかかりやすく、学校で流行が広がる可能性が高いものが分類されています。

の9種が含まれます。

第三種

集団生活の中で流行が広がる可能性があるものが分類されています。

  • コレラ
  • 細菌性赤痢
  • 腸管出血性大腸菌感染症
  • 腸チフス
  • パラチフス
  • 流行性角結膜炎
  • 急性出血性結膜炎
  • その他の感染症

が含まれます。

日常生活で関わりの多い感染症

教室の文具-写真

次に、日常生活で関わることの多い感染症について説明します。

第一種についてはあまり接する機会はありません。

第二種で普段の生活の中で感染することが多いのは、インフルエンザ、百日咳、麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、水痘、咽頭結膜熱です。

また、第三種では、流行性角結膜炎と、その他の感染症感染性胃腸炎・マイコプラズマ感染症)について説明します。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスによる感染症で、悪寒、頭痛、発熱を認めます。呼吸器症状(咳や鼻水)、消化器症状(嘔吐や腹痛)、筋肉痛などを認めます。

抗インフルエンザウイルス薬による治療が可能です。「インフルエンザの初期症状は!?かかった場合の5つの対処法と治療薬」で詳しく解説しています。

百日咳

百日咳菌による感染症で、コンコンと連続した咳の後にヒューと音を立てて息を吸う発作が続き、顔を赤くすることが特徴です。名前の通り、咳が長期間続きます。乳児などの小さい子供では特に肺炎・脳症に注意が必要です。

抗菌剤で治療します。「子供の繰り返す咳…それは百日咳かもしれません」も合わせてご覧ください。

麻疹(はしか)

麻疹ウイルスによる感染症で、発熱と呼吸器症状(咳やくしゃみ)に加えて、特徴的な発疹を認めます。肺炎や中耳炎などだけでなく、脳炎の原因になることがあります。

麻疹ウイルスに対しての薬はなく、症状をやわらげる対症療法を行います。「麻疹(はしか)ってどんな病気?原因となるウイルスや症状を解説します」をご参照ください。

風疹

風疹ウイルスによる感染症で、発熱とリンパ節の腫れ・痛みを認めます。脳炎や関節炎などの様々な合併症を起こすことがあります。妊娠初期の妊婦が感染すると、先天性風疹症候群と呼ばれ、生まれながらの奇形などの原因になります。

風疹ウイルスに対しての薬はないため、麻疹と同様に対症療法を行います。「風疹の症状と感染経路とは~大人こそ、しっかり予防を~」でも解説しています。

流行性耳下腺炎

ムンプスウイルスによる感染症で、耳の下にある耳下腺が急に腫れるのが特徴です。頭痛や嘔吐を引き起こす髄膜炎の原因になることもあります。また、難聴の原因にもなるため注意が必要です。

ムンプスウイルスに対しての薬はなく、対症療法を行います。「おたふくかぜ ~あなどれない成人の合併症と予防~」で関連の情報を解説しています。

水痘(みずぼうそう)

水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、水のたまったような発疹(水疱 すいほう)を認めます。頻度は低いですが肺炎や脳炎などを合併することもあります。

症状の強い時などには抗ウイルス薬での治療が可能です。

咽頭結膜熱

アデノウイルスによる感染症で、発熱・咽頭炎・結膜炎(目のかゆみや充血)が起こります。プールを介して流行することも多いためプール熱とも呼ばれますが、プールでだけではなく、飛沫感染や接触感染でどこでも感染は広がります。

アデノウイルスに対しての薬はなく、対症療法を行います。

流行性角結膜炎

咽頭結膜熱と同様、アデノウイルスによる感染症です。目の炎症(角膜炎・結膜炎)を起こします。症状としては、目の充血・まぶたの腫れ・流涙・目やになどがあります。人から人へ感染しやすいです。

症状をやわらげる対症療法での治療を行います。

感染性胃腸炎

さまざまなウイルスが原因となることが多いです。嘔吐と下痢が突然始まることが特徴です。ノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎は冬季に多い傾向があり、アデノウイルスによる胃腸炎は年間を通じて発生します。

これらのウイルスに対する薬はなく、治療は対症療法となります。

マイコプラズマ感染症

肺炎マイコプラズマによる感染症で、咳が主な症状です。咳や発熱、頭痛などの風邪症状がゆっくり出現し、咳は徐々に悪化していきます。しつこい咳が1ヶ月程度続くことがあります。中耳炎や発疹を合併することもあります。

抗菌剤で治療します。「マイコプラズマ感染症…より正確な診断と治療をめざして」も合わせてご覧ください。

潜伏期間は?

細菌やウイルスなどの病原体に感染してから、症状が出るまでの期間を潜伏期間といいます。

感染してから長時間症状が出現しないものもあり、注意が必要です。

インフルエンザ 約2日
(1~4日)
百日咳 約7~10日
(5~21日)
麻疹 約8~12日
(7~18日)
風疹 約16~18日
(14~23日)
流行性耳下腺炎 約16~18日
(12~25日)
水痘 約14~16日
(10日未満や21日程度のことも)
咽頭結膜熱 2~14日
流行性角結膜炎 2~14日
感染性胃腸炎 ノロウイルス:12~48時間
ロタウイルス:1~3日
マイコプラズマ 約2~3週間
(1~4週間)

出席停止期間は?

感染の強さなどを考慮して、出席停止期間が決まっています。出席停止期間は適切な治療あるいは自宅での安静が必要です。

ここには主なものの出席停止期間を載せています。

第二種

インフルエンザ 発症後5日、かつ
解熱後2日(幼児3日)が経過するまで
百日咳 特有の咳が消失するまで、または
5日間の適正な抗菌剤による治療が
終了するまで
麻疹 解熱してから
3日を経過するまで
流行性耳下腺炎 耳下腺などが腫れてから
5日間経過し、かつ、
全身状態が良好となるまで
風疹 発疹が消失するまで
水痘 すべての発疹がかさぶたになるまで
咽頭結膜熱 主要な症状が消失してから
2日経過するまで
結核 症状により、医師が
感染のおそれがないと認めるまで
髄膜炎菌性髄膜炎 症状により、医師が
感染のおそれがないと認めるまで

第三種

コレラ 症状により、医師が
感染のおそれがないと認めるまで
細菌性赤痢 症状により、医師が
感染のおそれがないと認めるまで
腸管出血性
大腸菌感染症
症状により、医師が
感染のおそれがないと認めるまで
腸チフス 症状により、医師が
感染のおそれがないと認めるまで
パラチフス 症状により、医師が
感染のおそれがないと認めるまで
その他の
感染症
感染性
胃腸炎
下痢・嘔吐が改善し、
全身状態が改善するまで
マイコ
プラズマ
咳の激しい期間が過ぎ、
全身状態が改善するまで

まとめ

感染すると出席停止となる感染症についてまとめました。これらの感染症は日常生活で接することの多い感染症も含まれます。また、特にウイルスによる感染症の場合、特効薬がなく対症療法で症状をやわらげることしかできないものが少なくありません。

正しい知識も大切ですが、ワクチンを含めた何よりも予防が大切です。日頃からの手洗い・うがいを心がけ、休養をとるようにして、感染症にかからないようにしましょう。