糖尿病の患者さんは、世界中で年々増加しています。同時に、まだ糖尿病ではないけれどこのままだと糖尿病になるだろうといわれる「糖尿病予備軍」と呼ばれる人々も増えているようです。本記事では、糖尿病専門医が自身の経験や知識をもとに、「糖尿病予備軍」といわれた方々に知っておいていただきたい事柄を解説しています。(いしゃまち編集部)

目次

「糖尿病予備軍」ってどんな状態?

糖尿病予備軍とは境界型糖尿病と言われる、「空腹時血糖が正常値109mg/dlを超えているけど126mg/dl以上と糖尿病まではいかない」あるいはまたHbA1cが正常値の6.2%を超えているけど6.5%まではいかない状態」の人達です。“年に、このうちの5人に1人が糖尿病を発症する”と、医者になりたての頃は先輩医師から教えられたものです。それではどうすれば糖尿病にならずに済むのでしょうか。

糖尿病を防ぐ鍵は、やっぱり「減量」と「運動」

20年以上も前になりますがアメリカで糖尿病予防プログラム:Diabetes Prevention Program(DPP)という糖尿病発症予防の研究がやや肥満気味以上(BMI≧24kg/m2)の境界型糖尿病の人達を対象に行われました。 やはりと思われる方も多いと思いますが、“減量”“運動”が境界型糖尿病から糖尿病への発症予防に有効でした。体重で約5%の減量、体重は左程変わりなくとも150分以上の定期的なウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動が糖尿病の発症を半減させました。ただし、これも継続、維持することが重要でしたが…。

この結果は、糖尿病の治療の基本が食事療法・運動療法であることを考えれば、当たり前と言えば当たり前の話です。また日本人の糖尿病患者さんのBMIが年々上昇して24kg/m2を超えて肥満の域まで近づいている現状を考えれば、上記の結果は日本人にも当てはまるといえます。

 

※BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}で算出し、22のときに最も病気になりにくいとされます。25を超えると肥満と診断されます。

糖尿病予備軍の方に心がけてほしいこと

ランニング-写真
では、具体的にはどうすればいいでしょうか?体重の5%減量ですから50kgの人で2.5kg、60kgで3kg、70kgで3.5kg、80kgで4kg…の減量です。

これを達成するには、カロリーの制限、特に主食やイモ類、他に果物に甘いものといった糖質のコントロールが重要です。まず間食をやめてみる。次にご飯やパンをいつもの半分にしてみてはどうでしょう。量が少なくなる分、野菜で補うとよいです。次の食事の1~2時間前位からお腹が空きだせば丁度良いかと思います。

時間の取れる方は運動も心掛けてください。忙しくしていると、どうしても運動に回すまとまった時間が取れません。週150分に満たなくても運動の習慣をつけることは健康に良いですから。

最後に

健康診断などで「糖尿病予備軍」と判定されたとき、様々な思いが頭に浮かぶことと思います。「まだ糖尿病じゃないから大丈夫」などと思ってしまいがちではありますが、予備軍であっても、放っておくと糖尿病を発症してしまう可能性は大きいです。早いうちから糖尿病を予防できるよう、本記事が少しでも役立つことを願っています。