はじめに
もはや国民病とも言うべき糖尿病。日本全体での患者数は300万人を超えています(平成26年度厚生労働省患者調査より)。
糖尿病は、20代や30代といった若い世代の方たちにとっては身近な病気とは言い難いかもしれません。しかし、親族に糖尿病患者がいる場合、決して他人事ではなく、早いうちから予防を意識しておく必要があります。
本記事では、糖尿病を予防するために日頃から気をつけるべきことについて、糖尿病専門医が解説します。
親族に糖尿病患者がいたら、注意が必要
“糖尿病が心配なのですけど…”とよく相談を受けます。糖尿病の90%は遺伝からくる2型糖尿病です。
まずは親兄弟、血の繋がりのある親族(祖父母、叔父・叔母ぐらいまで)に糖尿病の方がいないか確かめてください。血縁のある親族に糖尿病の方がいなければまず心配ありません。
しかし、家系で糖尿病の方がいた場合は、脈々と糖尿病発症遺伝子が受け継がれている可能性が高いですから、糖尿病に対する覚悟と心構えが必要となります。
2型糖尿病に関わる3つの因子
さて、2型糖尿病の多くは遺伝に環境因子が加わって発症します。環境因子としては太りすぎ、運動不足、お酒の飲み過ぎなどがあります。
1.体重
まず体重に関して言えば、5月に東京で開催された日本糖尿病学会総会において、アジア系アメリカ人の糖尿病発症リスクとしてBMI23が基準として提唱されており、それをある大学が所在の県で検証した発表がありました。結果はBMI23.6を超えると糖尿病の有病率が上がったそうです。以前からBMIが24以上で糖尿病の発症率が倍になると言われてきましたが、納得です。
また、世界的に有名なイギリスの学術誌に発表されたのですが、BMI27以上の肥満2型糖尿病患者さんが10~15kgの減量をすると糖尿病が寛解(薬を使わなくても正常血糖値を維持)する可能性があることを示しました。
つまり、太ると糖尿病は発症しやすい!逆に言えば、糖尿病を発症させないためには、“太らない”です!日本での大規模な研究報告でも、成人の2型糖尿病はBMI24以上が5年続いた後に発症する傾向が強かったようです。
さらに思春期までの肥満が糖尿病発症と相関性が高いようです。とにかく一生を通してBMI24以下を維持することが糖尿病発症予防の第一歩と考えてよさそうです。
2.運動
次に運動です。インスリン感受性(インスリンの働きやすさ)は運動でアップすると言われており、適度な運動はインスリン分泌能の低い日本人とっては有効です。また糖尿病発症を抑える可能性もあります。体重のコントロールにも役立ちますし。時間的な余裕があれば運動をできるだけ取り入れてください。
運動の内容については、下記の記事を参考にしてみてください。
3.お酒
最後にお酒です。禁酒か適度な飲酒が勧められます。痩せた糖尿病患者さんの血糖コントロールの悪化因子としてはお酒が挙げられます。
お酒はインスリンの効きを悪くし血糖を上げる作用があります。節制可能なら、飲んでも1日1合までに抑えましょう。
最後に:糖尿病予防には体重コントロールが欠かせない
糖尿病発症には、遺伝と環境因子、特に肥満が関与しています。発症予防には太らないことが重要です。BMI24を超えないように日頃から体重コントロールを心がけてください。また、糖尿病患者さんでお子さんやお孫さんがいる場合は、思春期までの肥満を避けるよう気を付けてあげてください。