関節リウマチと診断された患者さんやその家族にとって、病気との向き合い方は大きな課題の一つだと思います。病気とうまく付き合い、少しでもQOL(Quality Of Life=生活の質)を高めるためにはどのようなことを心掛ければ良いのでしょうか?多くのリウマチ患者さんと向き合い続けてきたリウマチ専門医が解説します。(いしゃまち編集部)

目次

ストレスは溜めない、病気とは前向きに付き合う

関節リウマチは、患者さんの精神状態によって病状が悪くなったり、良くなったりすることがよく知られています。安定した精神状態で毎日を過ごすことは、療養生活のポイントと言える大切なことです。ストレスを溜めずに、病気と向き合う心構えを作っていくようにしましょう!!ストレスを溜めない生活には、次のようなことをヒントにされてください。

病気や治療について理解する

現在の関節リウマチについての正しい知識を得ることは、不安以上に希望が得られるはずです。また、病気や治療について勉強していれば、医師にも相談・質問しやすくなり、治療にも積極的に取り組めるでしょう。

プラス思考で考える

ご病気がある、ないにかかわらず、マイナス思考で生活を送るより、プラス思考で生活を送られた方が、一日を心の平静を保ちながら送れます。依然原因が不明な関節リウマチは、ご本人が何も悪いことをしていないのにかかってしまうご病気であり、何事にもマイナス思考に考えてしまいがちだと思います。しかし、現在の関節リウマチ治療薬、そしてかかりつけの先生を信じて、どうかプラス思考に考えるようにしてください!!

一人で悩まない

だれにも分かってもらえない「痛み」。患者さんの多くは、そのつらさを一人で抱えています。ご家族に理解されずに、職場内でも理解されずに悩まれてらっしゃる方は大勢いらっしゃいます。ご家族と一緒に通院し、関節リウマチについて、また現状について、これからの展望についてなど先生からよく話していただくことで、ご家族一緒に病気を乗り越えていく、克服していくということはとても大切なことです。

よく笑い、たくさん泣くなど豊かな感情を持つ

関節リウマチにかかったからといって、人生が終わるわけではありません。これからも大切な人生が、生活が待っています。

笑いや涙などには、関節リウマチを悪化させるサイトカインという物質を減らす効果があることが分かっています。これからも感情豊かに、大切な人生を歩んでいかれてください!!

毎日少しずつでも関節や筋肉を動かす

関節リウマチの発症・進行を防ぐために、1日に最低でも1回はすべての関節を動かしましょう。ただし、痛みがあるのに無理をして動かすことは禁物です。「無理なく、動かせる範囲」で行ってください。

※リウマチ体操をやってみましょう!

回数は10回を1セットとして、1日2セットを目安に行います。ただし、痛みや疲れが出ない範囲で調整しましょう。午後と入浴後の1日2回がおすすめです。

リウマチ体操のポイント

  • 関節が動く範囲をしっかり動かす
  • 痛みが現れる手前まで動かす
  • 翌日に痛みや疲れが残らない程度に行う

関節の状態は人それぞれであり、「ここまで動かす」などの決まりはありません。今動かせる範囲をしっかり動かすことが大切です。

また、痛みや腫れがあるときに無理をして動かしたり、頑張りすぎて疲れや痛みが出てしまったりすると、かえって関節に負担をかけ、炎症を進めることになってしまいます。無理のない範囲で、毎日続けることを目標にすると良いでしょう。

リハビリ方法

深呼吸

背筋を伸ばし、腕を後ろへ振り胸を反らせながら大きく息を吸い、腕を元に戻しながら吐きます。ゆっくり行いましょう。

肩・腕の運動

  • 肩の上げ下げ(肩周辺の筋力アップ・肩関節の可動域の維持):両手を体の横につけ、力を抜いて、肩を上げ下げします。
  • 肩をねじる(肩関節の可動域の維持):肘を伸ばしたまま、両腕を少し開いて、手のひらを前後に返します。
  • 腕の上げ下げ(腕の筋力アップ・肩関節の可動域の維持):背筋を伸ばして、両腕を前へ上げます。次に、体の後ろへ引きます。
  • 腕を外側に動かす(腕の筋力アップ・肩関節の可動域の維持):腕を体の横につけます。遠くの方に伸ばすようなつもりで、腰から上へ動かします。

体幹の運動

  • 体を左右にねじる(体幹の関節の可動域の維持):「気をつけ」の姿勢から体をゆっくりと左右交互にひねります。

前腕・手首・手の運動

  • 肘の曲げ伸ばし(肘関節の可動域の維持):「気をつけ」の姿勢から、右手で右肩を、左手で左肩を触れるように肘を曲げます。次に右手で左肩を、左手で右肩を触れるようにします。
  • 前腕の回転・手首の運動(前腕の筋力アップ・手首の関節の可動域):肘を曲げて脇につけます。前腕を回転させ、手のひらを上下に返します。次に、手首を曲げ伸ばしします(机の上で行っても構いません)。
  • 手の指の運動(手の指の関節の可動域の維持):手を握ったり開いたりします。次に、指をそろえたり離したりします(どちらも、できる範囲で構いません)。

股関節・脚・足首の運動

 

  • 股関節を曲げる(太ももの筋力アップ・股関節の可動域の維持):椅子に座って、膝を交互に上げます。
  • 膝を伸ばす(脚の筋力アップ・股関節の可動域の維持):膝を交互に伸ばします。
  • 足首の運動(足首の関節の可動域の維持):かかとを床につけたまま、つま先を床につけたり離したりします。

病気に負けない食事療法

関節リウマチには、特別な食事療法はありません。たんぱく質を中心としたビタミン、ミネラルを多く含む、バランスの取れた食事が大切です。落ちた筋肉をつける・関節の負担を和らげるために、たんぱく質を多く含む肉や魚を積極的に摂りましょう!!また、いわし、さんま、さば、にしん、ぶりなど青魚には、抗炎症作用があるEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれています。関節リウマチでは、骨粗しょう症や貧血を合併しやすいため、カルシウムや鉄分を多めに摂取するように心掛けましょう。

まとめ

現在の関節リウマチ治療は、患者さんがやりたいこと・したいことを、やりたいだけ・したいだけしていただくためにあります。日常生活での不安事、心配事は、積極的に先生に相談していただき、当たり前のことを当たり前に出来る生活を可能な限り送っていってください!!