伝染性単核球症という病気を耳にしたことがありますか? もしなければ、キス病はどうでしょうか? 耳にしたことがあるでしょうか。文字通りキスをしたりすることで伝染し、発症する病気です。ここでは伝染性単核球症がどんな病気で、原因は何か、どんな症状が出るのかなどを解説します。

目次

伝染性単核球症って?

名前の由来ですが、”伝染性”は文字通り人から人へ伝染することを意味します。

“単核球症”の部分ですが、その前に白血球の説明をします。

血液中で体内の免疫を担当しているのが白血球です。白血球には顆粒球・リンパ球・単球の3種類があります。顆粒球が50~75%、リンパ球が20~50%、単球が5%程度の割合で存在しています(それぞれについて詳しく知りたい方はこちらを参考にしてみてください→ 成熟血球と異常血球の形態|白血球|九州大学)。このうちのリンパ球と単球を合わせて単核球と呼びます。

単核球症は単核球が増えることを意味します。つまり、伝染性単核球症とは「ウイルスが人から人へ伝染し、単核球が増加する病気」です。

しかし正確には、伝染性単核球症では単球は増加せず、正常なリンパ球ではない異型リンパ球と呼ばれるリンパ球が増加します。

原因は何?

伝染単核球症の原因はウイルスの感染です。

その中でも最も多いのが、 エプスタイン・バー ウイルス(Epstein-Barr virus:EBウイルス)です。その他にはサイトメガロウイルスHIVウイルスも原因となることはありますが、EBウイルスほど多くありません。

ここではEBウイルスによる伝染性単核球症についてお話していきたいと思います。

EBウイルスによる伝染性単核球症

初めてEBウイルスに感染したときに伝染性単核球症を発症することがあります。「発症することがある」というのは、EBウイルスに感染した場合に全員が伝染性単核球症を発症するわけではないからです。

感染する時期・年齢によって症状の出方が異なります。乳幼児期に感染してもほとんどが不顕性感染(感染はしても無症状で終わる)です。しかし、思春期以降に感染すると半数程度で伝染性単核球症を発症すると言われています。

思春期以降に感染する場合、唾液を介するディープキスで感染することがほとんどのため、「キス病」と呼ばれます。

日本では23歳までに約70%が、20代では約90%がEBウイルスに対しての免疫を持つといわれています。

どんな症状が出るの?

ぬいぐるみを抱えて寝る赤ちゃん-写真

感染した場合、ウイルスの潜伏期間は長く、感染してから症状が出現するまでに3050日程度かかります。

伝染性単核球症は、発熱咽頭痛(のどの痛み)リンパ節の腫れの3つが特徴的な症状です。しかし、最も感染することの多い1~2歳の子どもでは、発熱と扁桃腺の腫れ・発赤・膿の付着のみのことが多く、特徴的な症状を示すことは多くありません。そのため、伝染性単核球症と診断されることは少ないです。

これが、小学校高学年以降になってから初めてEBウイルスに感染した場合には、特徴的な症状を認めるようになります。発熱期間は、一般的なウイルスの感染症では3日程度なのに対して、伝染性単核球症では57日とやや長い傾向があります。発熱以外に、扁桃腺の腫れ・発赤・倦怠感、リンパ節の腫れ(特に首のリンパ節で目立つ)、ひどい場合には肝臓や脾臓の腫れ などの症状・所見を認めます。また、発疹を認めることもあります。この発疹は、ペニシリン系の特定の抗生剤で増悪するため注意が必要です。

また、倦怠感は数週間、長いと数ヶ月続くことがあります。
症状が長引くことはありますが、自然治癒する病気です。

まとめ

ここでは伝染性単核球症の原因や症状についてまとめました。あまり耳にすることがない病気かもしれませんが、実はほとんどの方がかかったことのある病気です。小学校高学年以降では特徴的な症状を認め、幼少期よりも症状が強く出ることが多いです。そのため、疑わしい症状を認めた際には医療機関を受診するようにしましょう。