数日発熱が続いて、のどの痛みがでてきた。そして首のリンパ節が腫れてきた…そのような時には伝染性単核球症を疑います。伝染性単核球症にかかった場合、どのような検査が必要となり、どのような治療が必要になるのでしょうか。受診のタイミングを含めて解説します。

目次

伝染性単核球症の原因・症状について

詳しくは「キス病とも呼ばれる伝染性単核球症、いったいどんな病気?症状や原因ウイルスとは」にまとめています。

伝染性単核球症は、多くの場合EBウイルスが原因です。EBウイルスが唾液を介して伝染し、その結果 単核球(異型リンパ球)と呼ばれる白血球の一種が増加する病気です。

日本では2~3歳までに約70%が、20代では約90%がEBウイルスに対しての免疫を持つと言われています。

症状としては、発熱・咽頭痛(のどの痛み)・リンパ節の腫れが特徴的な症状ですが、最も感染することの多い幼少児ではこれらの特徴的な症状はあまり認めません。小学校高学年以降で初めてEBウイルスに感染した場合では、発熱が持続して、前述の特徴的な症状を認めるようになります。あわせて、倦怠感や肝臓・脾臓の腫れなどの症状・所見も認めるようになります。

医療機関の受診は必要?

最も感染することの多い2~3歳ではあまり特徴的な症状を認めません。数日程度の発熱、のどの痛み(扁桃腺の腫れ・発赤)がほとんどです。この場合には他のウイルスによる風邪や咽頭炎と区別することは難しく、医療機関を受診するタイミングは難しいです。

ただし、一般的な風邪での発熱期間は3日程度のことが多いので、3日以上熱が続く場合には受診するようにしましょう。

症状が強く出現するようになる小学校高学年以降では、発熱・のどの痛み・リンパ節の腫れ(首で認めることが多い)を認めた場合には医療機関の受診が必要です。伝染性単核球症以外の感染症などでも同様の症状を認めることはあります。伝染性単核球症の診断や他の病気との鑑別のために、下で述べるような検査が行われます。

必要な検査は?

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EBウイルスに感染すると、それに反応してウイルスを処理するために白血球の一種(リンパ球)が増加します。急激に増加するリンパ球は未熟なため、普段見られるリンパ球とは異なる形態をしており、異型リンパ球と呼ばれます。

伝染性単核球症では白血球数の全体数の増加と、そのうち異型リンパ球の出現が特徴的であり、それを確認するための血液検査を行います。血液検査で白血球の数や白血球の種類の割合を確認します。

また、肝臓や脾臓の腫れを認めることがあります。診察では分かりにくくでも、超音波検査をすることで肝臓や脾臓の大きさを確認できます。

血液検査では、白血球の種類を確認するだけでなく、肝臓の機能を確認する必要があります。肝臓の機能を示す血液検査の異常は、伝染性単核球症の約95%で認められると言われます(MSDマニュアル プロフェッショナル版|伝染性単核球症より)。肝炎など他の感染症との区別が必要になることもあります。

これ以外に、EBウイルスに感染しているのかどうかを確認するために、血液検査でEBウイルスに対しての抗体を確認することがあります。以前は伝染性単核球症の患者さんで特徴的な抗体(Paul-Bannell抗体/ポール・バンネル抗体)を用いた検査も行われていましたが、現在では直接EBウイルスの感染を確認できる抗体検査が行われることが多いです。

また、発熱・リンパ節の腫れを認める他の病気との鑑別のために、リンパ節を取って検査するリンパ節生検が必要になることもあります。

どんな治療が必要?

多くのウイルス感染症と同様に、EBウイルスに対しての治療薬はありません。そのため、伝染性単核球症でも症状に合わせて行う対症療法が中心です。

発熱に対しては解熱薬を用いて経過を見ていきます。多くの方で肝臓の機能の異常を認めます。この悪化を予防するために安静が必要です。

のどの痛みが強く飲水が難しい場合、肝臓や脾臓の腫れが強い場合、肝臓の機能異常の値が非常に高い場合などには入院の上、点滴を行ったり、安静管理が必要になったりすることもあります。

稀に、発熱が長期に持続する場合、全身の状態が良くない場合などにはガンマグロブリン投与など特殊な治療が行われることもあります。

伝染性単核球症の予後

伝染性単核球症の急性期は一般的には2週間程度と言われています。発熱やのどの痛みなどの症状が良くなれば、通常の生活に戻れますが、倦怠感・疲労はその後もう数週間持続することがあります。

肝臓の機能の異常を認めた場合には正常になったことを血液検査で確認します。また、脾臓の腫れを認めた場合には破裂する可能性もあるため、発症後1ヶ月程度は激しい運動や力仕事は避ける必要があります。

まとめ

伝染性単核球症の診断・治療についてまとめました。伝染性単核球症を治す治療はありませんが、肝臓の機能や脾臓の腫れなど注意しなければならないこともあります。症状からだけの診断は難しく、血液検査や超音波検査が必要になります。適切な診断のため、注意すべき所見の確認のために、伝染性単核球症が疑われる場合には医療機関を受診するようにしましょう。