保育園や幼稚園では、季節や時期によってあらゆる感染症が流行するので、対策をとっていても自分の子供がその感染症にかかってしまうことがあります。溶連菌感染症も、そうした感染症の一つです。

ここでは、溶連菌感染症とはどのような病気なのか、原因菌や症状、合併症、潜伏期間などについて解説します。

目次

溶連菌感染症の原因となるのはどんな菌?

溶連菌の正式名称は「A群β溶血性レンサ球菌」

「溶連菌」は、正式には「A群β溶血性レンサ球菌(化膿性レンサ球菌)」といいます。決して珍しいものではなく、日常的にみられる菌の一つです。

A群β溶血性レンサ球菌は、侵入する部位によって様々な症状を引き起こします(「溶連菌感染症」は、それらの病気の総称です)。例えば、上気道に感染した場合は咽頭炎扁桃炎を引き起こしますし、皮膚に感染した場合は丹毒伝染性膿痂疹(とびひ)蜂窩織炎などの原因になるのです。この他、猩紅熱(しょうこうねつ)、丹毒(たんどく)、中耳炎肺炎、化膿性関節炎などの原因となることもあります。

溶連菌には90種類以上のタイプがあるので、一度感染したら二度とかからないというわけではなく、異なる流行種にその都度かかることも考えられます。

大人も子供も要注意。流行しやすいのは春~夏と冬

子供から大人まで、あらゆる年代に感染がみられますが、学童期に多く、3歳以下や高齢者ではあまりみられません。特に4~7に多くみられ、5歳が最も多いというデータもあります(2000~2006年全国のA群β溶血性連鎖球菌咽頭炎患者年間年齢別発生報告数)。

また、横浜市の統計によると流行には季節変動があり、春から夏にかけての6月頃冬の12月頃に多いといいます。

潜伏期間は2~5日、その後発熱や喉の痛みなどの症状が

A群β溶血性レンサ球菌に感染した場合、2~5日の潜伏期間(症状が出ない期間)を経てから症状が出始めます。潜伏期間にほかの人に感染するかどうかは、まだ分かっていません。

典型的な症状(上気道炎)は、以下の通りです。

  • 発熱(38~39℃)
  • 喉の痛み
  • 倦怠感
  • イチゴ舌(舌にイチゴのようなブツブツがみられる)

この他、嘔吐を伴ったり、手足に赤い発疹が出たりすることもあります。また、合併症として肺炎・髄膜炎敗血症などの化膿性疾患や、糸球体腎炎血尿浮腫高血圧)やリウマチ熱心筋炎・関節炎・発熱)などを発症することがあります。糸球体腎炎やリウマチ熱は、場合によっては一生付き合わなければいけない病気となることがあり、要注意です。

溶連菌感染症では、この他にも病気によって様々な症状がみられます。ここでは、いくつかの特殊な病態を紹介します。

猩紅熱(しょうこうねつ)

猩紅熱では、悪寒・発熱、喉の痛みがみられます。発熱から1~2日後に、淡く小さな赤い発疹があらわれますが、顔面にはあまりみられないのが特徴ですまた、額と頬が赤くなり、口の周りが蒼白に見えることも特徴の一つです。

舌は白苔に覆われ、その後白苔がはがれ苺舌となります。急性期を過ぎると、顔面から皮膚の皮がむけ始め全身に広がります。抗菌薬によってしっかりと治療を行えば、その他の合併症につながる前に治療を行うことができます。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症

けがをした部位や分娩時に、溶連菌が皮膚や筋肉、脂肪組織に感染すると、劇症型溶連菌感染症となることもあります。これは俗に「人食いバクテリア」とも呼ばれる、死亡率の高い状態です。全身状態が悪化し多臓器不全となるため、ただちに集中治療を行うことが必要となります。30歳以上の成人、とくに糖尿病や腎臓疾患などの病気をお持ちの方に多くみられます。

溶連菌感染症は、集団生活の場でうつりやすい

手を洗う

溶連菌は、くしゃみなどが飛び散ることで近くの人に感染(飛沫感染)したり、菌が付着した食品や手などを介し口に入ることでも感染(経口感染)したりします。 そのため、家族や兄弟間での感染保育園や幼稚園などの集団生活の場での感染が多いです。特に、感染したお子さんに兄弟がいる場合、できれば一緒に検査を受けておくと安心です。

予防に際しては、手洗い・うがいなど基本的な事柄が何より大切です。

まとめ

溶連菌感染症は集団生活の場での感染が多く、子供たちの間で流行しやすい感染症でもあります。合併症がなければ、早期の治療で軽快するとされています。集団生活をするうえではこのような感染症は覚悟しなければなりませんが、それ以前に予防行動をしっかりとることで感染症にかからないように注意していきましょう。