「はしか」とも呼ばれる麻疹。子供のころに、ワクチン接種をしたことがある人も多いと思います。麻疹を経験した世代、ワクチン接種によって麻疹を予防している世代、さまざまではありますが、現在でも日本では子供、大人関係なく麻疹に罹患しています。麻疹とはどんな病気かしっかりと知っておきましょう。

なお、近年の麻疹の流行状況など最新情報については「感染の広がる麻疹(はしか)~忍び寄る輸入感染症、その予防や合併症」をご参照ください。

目次

麻疹はどんな病気?

麻疹は、全身に赤い発疹(紅斑)発熱鼻水などの症状が出る感染症です。感染力がとても強く、人から人へうつります。重症の場合は命の危険も伴います。麻疹は子供がかかる病気と思われがちですが、大人もかかります。

免疫を持っていない人が感染するとほぼ発症しますが、1度かかれば回復した後も一生免疫が持続するといわれています。

麻疹の原因となるウイルス

麻疹ウイルスの感染によって起こります。このウイルスはパラミクソウイルス科に属しています。麻疹ウイルスの直径は100~250nm(ナノメートル)です。100nmの大きさをミリメートルであらわすと約1万分の1mmということになります。この麻疹ウイルスの感染力は非常に強いです。

麻疹の症状とは

体温計

前述のように、発熱と全身の発疹が特徴です。ウイルスが侵入すると10~14日間ほどの潜伏期間(症状のでない期間)を経て、症状が出始めます。感染した場合、ほぼすべての人に症状が出ます。

38度近い高熱が出て、咳や鼻水などの風邪に似た症状が2~3日続き、その後いったん熱が下がりますが再び高熱が出ます。2度目の高熱とともに、口の中にはコプリック斑と呼ばれる白い斑点がいくつもできます。そして、発疹が全身に広がります。

合併症を起こさなければ2度目の発熱は5日ほどすれば下がり、発疹の色も褪せ、皮もむけてきます。しかし、肺炎中耳炎などの合併症を起こしてしまうと重症化することが知られています。

麻疹の感染経路

麻疹ウイルスは、人から人へうつります。

感染者が排出したウイルスが空気中を漂い、それを吸い込むことで起こる空気感染が主な感染経路です。その他にも、感染者の咳やくしゃみ、会話したときに発生するウイルスを吸い込むことによる飛沫感染、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染もあります。

発症した人が周囲に感染させる期間は、発疹が出現する4日前から発疹出現後4~5日くらいまででとされており、感染力が最も強いのは発疹出現前の期間です。

麻疹は発熱の頂点が2度あるのが特徴ですが、最初の熱の時に麻疹と判断するのは難しく、ただの風邪と思って見過ごしてしまうことがあるかもしれません。しかし、麻疹にかかったと知らずに学校や会社などに行くと、排出された麻疹ウイルスにより感染が拡大することもあります。ウイルスが蔓延してしまうので、学校保健安全法では解熱後3日経つまでは登校・登園ができないと定められています(ただし、病状により医師において感染の恐れがないと認めたときはこれに限りません)。

麻疹のここが恐ろしい:合併症の危険

机

麻疹の恐ろしいところはその合併症です。腸炎中耳炎のほか、肺炎脳炎等の合併症も発生することがあります。重度の肺炎、脳炎となると致死率は高く、麻疹による2大死因ともされています。特に脳炎の後遺症は重く、知能の障害やけいれん、失明、麻痺などが起きることもあるのです。

また、妊娠中の女性が麻疹にかかった場合、流産や早産を起こす可能性があるとされています。

まとめ

麻疹は、発症すると高熱の期間も長く、他の症状も決して軽いものではありません。重度の合併症を起こさないためにも、麻疹に感染しないようにすることが大切です。