「髄膜炎」という病気はあまり聞きなれないかもしれません。しかし、髄膜炎はどの年代の方にも起こりうる病気で、早期の治療を行わないと死に至る恐れもあります。ですからこの病気についてよく知り、症状が出たらいち早く病院へ行くことが重要です。そこで、この記事では髄膜炎とは何か、原因と症状について詳しく説明します。

また、次回の「髄膜炎を疑ったら早めに病院へ!どんな検査・治療を受けるの?」という記事では髄膜炎を疑った場合にどうすれば良いか(何科を受診すべきか、どのような検査・診断を受けるか)について説明しますので、こちらも併せてお読みください。

目次

髄膜炎とは

脳や脊髄は髄膜という膜に覆われています。さらに、髄膜は硬膜、クモ膜、軟膜という3つの膜に分けることができます。髄膜炎はこのクモ膜、軟膜、そしてクモ膜と軟膜に囲まれているクモ膜下腔という部分に炎症が起きたものです。

髄膜炎は様々な原因によって誘発され、様々な症状を引き起こします。そして最悪の場合、死に至る恐れがあるため、適切な治療が重要となります。

髄膜炎の原因と分類

ウイルス-写真
髄膜炎は様々な原因によって誘発され、以下の5つに大別されています。

  1. 大腸菌肺炎球菌などの細菌による髄膜炎(細菌性髄膜炎
  2. 結核菌による髄膜炎(結核性髄膜炎
  3. カンジダやアスペルギルスなどの真菌による髄膜炎(真菌性髄膜炎
  4. コクサッキーウイルスやエコーウイルスなどのウイルスによる髄膜炎(無菌性髄膜炎
  5. がんや薬など、感染症以外の病気による髄膜炎

以上5つの原因のうち、いずれかが引き金となり髄膜炎を生じます。さらに、これら5つの原因群は髄膜炎の症状が出る時期(経過)によって以下の3つに分類されます。

.感染性

  1. 急性(1週間以内):細菌性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎
  2. 亜急性~慢性(2~4週間):結核性髄膜炎、真菌性髄膜炎

.非感染性

  1. 亜急性~慢性(2~4週間):がん性髄膜炎、薬剤性髄膜炎

これらの原因やその分類は医師が「患者さんの髄膜炎の原因が何か」を大まかに推定するために役に立ちます。

髄膜炎の症状:髄膜炎の三徴とは

髄膜炎の症状は、髄膜が刺激されることによって生じます。髄膜炎の症状は自分で分かる自覚症状と他者によって誘発される他覚症状に分けて考えるとわかりやすいです。

自覚症状には発熱、頭痛吐き気、嘔吐があります。そして、他覚症状では項部硬直首(項部)が硬くなる(硬直))が代表的です。項部硬直とは、患者さんが仰向けになり、頭を持ち上げて首を前に倒すと抵抗がある状態をいいます。

さらに、これら自覚症状と他覚症状のほかに、意識がもうろうとなったり、意識が消失したりするといった意識障害になることがあります。この意識障害、発熱、項部硬直髄膜炎の三徴といわれ、この3つの症状が見られれば、髄膜炎を積極的に疑います。

子供で注意が必要な「細菌性髄膜炎」

髄膜炎の中でも注意しなければいけないものに、細菌性髄膜炎があります。特に注意が必要なのが、肺炎球菌ヒブによる細菌性髄膜炎です。

肺炎球菌は、子供の感染症の原因として非常によくみられる細菌で、普段から鼻や喉にみられます。感染すると、大人の場合は肺炎を引き起こしますが、子供では肺炎以外にも中耳炎や髄膜炎を引き起こすことがあります。

細菌性髄膜炎では、以下のような症状がみられます。

  • 突然の高熱
  • 機嫌が悪い、泣き止まない
  • 食べない、飲まない(吐いてしまう)
  • ぐったりとしている
  • けいれん

はじめのうちは風邪と区別がつきにくいため、細菌性髄膜炎であると診断されたときには既にかなり進行していた、というケースもあります。また、かかってしまった場合は治療が難しく、発達障害難聴などの重い後遺症が残ることがあるほか、命に関わることもあります。

細菌性髄膜炎を防ぐために欠かせないのが、肺炎球菌ワクチン及びヒブワクチンの接種です。どちらも生後2ヶ月から接種できるワクチンで、初めて接種した月齢・年齢によって接種の回数や間隔が異なります。医師と相談し、必ず受けるようにしましょう。

まとめ

髄膜炎は命を奪う恐れのある病気であるにもかかわらず、一般の方はあまり知らないのが現実でしょう。そしてもちろん、髄膜炎はあまり知られていないため、一般の方が髄膜炎を疑うこともまずないでしょう。そこで、この記事を通じて、髄膜炎がどのような病気であるのか、その原因や症状について理解していただき、髄膜炎をいち早く見つける手助けになればと思います。