コレラという病気について、誰もがその名前を一度は聞いたことがあるでしょう。かつては様々な地域で猛威を振るったという事をご存知の方もいるかもしれません。

しかし現在の日本では、ほとんどコレラにかかったという人はおらず、コレラという病気について触れる機会がありません。

今回は意外と知らないコレラという病気について、詳しく見ていきましょう。

目次

コレラとは

コレラとは、コレラ菌という菌によって引き起こされる感染症の一種で、発症した場合約20人に1人で重症化し死に至ることもある病気です。特に下水設備等の公衆衛生が未発達な国で流行がみられ、全世界においては年間で数百万人が感染し、3万〜15万人程度の死者が出ているという推計が出ています(横浜市衛生研究所より)。

一方日本では、上水、下水設備が整っているため、感染者は年間数十人と少なく、その殆どが発展途上国などへの旅行、あるいは発展途上国から持ち込まれた飲食物によっておきた感染とされています。

コレラの原因

コレラの原因となるのは、コレラ菌と呼ばれる菌で、O-1とO-139の2つのタイプが存在します。コレラ菌は水の中に生息しており、コレラ菌に汚染されている水や食物を食べることで人へと感染します。コレラ菌は海水や塩分を含む水も好むため、きちんと浄水されていない水だけでなく、海産物などからも感染することが知られています。

また感染した患者からは、約20日間にわたって便の中にコレラ菌が排出され続けるため、上水・下水設備が整っていない環境ではそれがさらに水を汚染し、感染が広がっていくことになります。発展途上国や災害の被災地でコレラの流行が起こりやすいのはこのためです。

コレラ菌に感染すると、菌が小腸の中で増殖し、コレラ毒素というものを放出します。これが、下痢などのコレラの症状を引き起こすのです。

コレラの症状

コレラ菌に感染すると、数時間から数日の潜伏期間を経て、下痢などの症状が起こり始めます。下痢は軽い場合が多いですが、重症化することもあり、その場合は米のとぎ汁のような臭いのない下痢を、一日数リットルから数十リットルと大量に出すようになり、同時に激しい嘔吐も繰り返すようになります。

下痢によって大量の水分電解質(イオンのこと。細胞の浸透圧調整、神経・筋肉のはたらきに関わる)が失われるため、喉の乾き、尿量減少、脚の痛みや筋肉の痙攣などが引き起こされます。重度の脱水では全身の血液の量も足りなくなってしまい、ショック状態に陥って死亡してしまうこともあるのです。その他に発熱や腹痛がみられる場合もあります。

コレラの治療・予防

ワクチン-写真

治療

コレラの治療は主に、失われた水分や電解質を補充し、自然に軽快するのを待つという方法によって行われます。WHO(世界保健機構)の定める補水液も存在し、流行地域などで用いられていますが、重症例の場合では経口的な補水では間にあわないため、点滴による治療も行われています。

また、重症患者では下痢などの症状が出る期間を短縮するために抗生物質も投与され、代表的なものとしてテトラサイクリンやノルフロキサシンなどが用いられることがあります。

予防

コレラの予防法としては、まずワクチンの投与があります。コレラにはさまざまな種類のワクチンが存在しますが、WHOでは3種類の経口ワクチンの使用を推奨しており、種類にもよりますが、約6割から8割の確率でコレラの感染を防御できるとされています(横浜市衛生研究所より)。

また、コレラの流行地域では、飲食物の安全にも注意が必要でしょう。水や牛乳は必ず一度加熱し、食べ物もできうる限り加熱を行ってから食べるようにします。特に海産物はコレラ菌に汚染されている可能性が高いため、生食は避けましょう。野菜や果物も必ず自分で皮をむいてから食べるようにします。

意外と注意が必要なのが氷やアイスクリームなどの冷たいもので、コレラ菌は冷凍によって死なないため、安全であることをよく確認しなければなりません。

そしてもちろん、こまめに手洗いを行うことも、とても大切なことになります。このようにちょっとした注意と習慣で大きな予防効果が得られるので、海外に行く際は十分に注意すると良いでしょう。

まとめ

コレラは、主に発展途上国での流行が見られる病気で、大量の下痢や嘔吐によって脱水が起こり、筋痙攣やショックなどの様々な症状があらわれる事が知られています。治療は水分の補給や抗生物質の投与によって行われ、ワクチンによる予防もある程度可能です。

海外旅行などでリスクのある場所へ行くときには、あらかじめワクチンの投与を行うのもちろんですが、飲食物への注意や、こまめな手洗いなど、自分の身を自分で守る工夫が大切になってくるのではないでしょうか。