2016年に開催されたリオオリンピック。たくさんの日本人選手の活躍が見られましたね。実際にブラジルへ足を運んだという方もいることと思います。

さて、海外渡航にあたって気を付けたいのが、ブラジルをはじめ中南米で流行している様々な感染症です。自分の身を自分で守るため、どのようなことに気をつけるべきでしょうか?渡航前に知っておきたいことを解説します。

目次

ブラジルに行く前に!受けておきたい予防接種

ブラジルに行く際、特に「これを受けるように」と定められた予防接種はありません。しかし、WHO(世界保健機関)はブラジルのいくつかの地域を黄熱ワクチン推奨地域に定めています。

黄熱は、蚊が媒介する感染症の一つです。感染した場合、3~6日の潜伏期間を経て、以下のような症状が現れます。

重症化した場合は黄疸や、様々な臓器からの出血がみられることもあります。

黄熱は、死に至ることの多い病気です。特効薬や特別な治療法はなく、もしも感染してしまった場合はすみやかに治療を受け、体力を保つことが必要となります。ですから、感染する前にワクチンでしっかりと予防をすることが大切です。

黄熱のワクチンは、1回の摂取で、接種後10日目から生涯有効です。接種後28日間はほかのワクチンを接種することができないため、複数のワクチンを受ける予定がある場合は、接種の順番について医師と相談すると良いでしょう。

黄熱ワクチンを接種できる施設は限られているので、事前に確認しておくことをおすすめします。

 

在リオデジャネイロ日本国総領事館はこの他、A型・B型肝炎破傷風のワクチン接種も推奨しています。

蚊が媒介する病気、ジカ熱デング熱に要注意!

虫除けスプレー

様々なメディアで話題になっているためご存知の方も多いと思いますが、蚊を媒介とするジカ熱やデング熱の流行者数が増えています。

リオデジャネイロ州健康局によると、リオ州内では2015年の1年間で69,516件のデング熱感染疑い例があり、そのうち22名が死亡したといいます(同年は、日本国内での発生例はありませんでした)。ジカ熱についてはリオ州公式のデータはありませんが、リオ州内でジカウイルスに感染した母親から小頭症の子供が生まれた数は100例を超えているという発表があります(在リオデジャネイロ日本国総領事館より)。いずれも、予断を許さない状況といえるのではないでしょうか。

ジカ熱

ジカ熱の主な症状は、以下の通りです。

  • 微熱
  • 頭痛
  • 筋肉痛・関節痛
  • 結膜の充血
  • 疲労感

妊娠中の女性が感染した場合、胎児が小頭症になるリスクが高くなるとされています(証明はされていませんが、小頭症は赤ちゃんが小さい頭で生まれるか、生まれた後に頭の成長が止まってしまう状態で、成長につれて身体障害や学習障害が表れる可能性があります。妊娠中の方は、可能な限りブラジルへの渡航・滞在を控えてください。やむを得ずブラジルへ渡航する場合は、後で説明する予防措置をしっかりと講じてください。

デング熱

デング熱に感染すると、2~14日(通常は3~7日)の潜伏期間を経て、主に以下のような症状がみられます。

  • 38~40℃の発熱
  • 激しい頭痛
  • 筋肉痛・関節痛
  • 発疹(発症から3~5日後、解熱とともに表れる)

デング熱には4種類あり、同じ型のウイルスであれば、2度目の感染時は免疫がついているため軽症で済みます。しかし、違う型のウイルスに感染した場合は免疫が過剰に働き、デング出血熱またはデングショック症候群と呼ばれる重症状態になることがあります。稀に死亡することもありますが、致死率は低い病気です。

ブラジルではインフルエンザも流行中

もう一つ、気をつけたい病気がインフルエンザです。ブラジルでは例年、気温が下がり始める5月頃からインフルエンザの流行が始まり、6~8月にピークを迎えます。つまり、リオ五輪が開催される時期はちょうど、インフルエンザの流行シーズンなのです。

さらに今年は、豚インフルエンザと呼ばれるインフルエンザA型(H1N1型)が流行しています。特にサッカーの行われるサンパウロ州では、死者が554人にものぼっています(在リオデジャネイロ日本国総領事館より)。

基本的な予防法は日本にいる時と変わらず、手洗いうがいです。その他の予防法については「【インフルエンザ】早めの予防をこころがけよう!」をご覧ください。

感染症を防ぐためにできること

花

蚊の対策

南半球に位置するブラジルでは例年、8月には気温が下がります。それに伴い蚊の数も減りますが、完全にいなくなるわけではありません。そのため、虫除け対策をきちんと講じることが必要です。

具体的には、以下のような事柄に気をつけてください。

  • 長袖・長ズボン、足の指先をしっかり覆う靴、帽子を着用し、できるだけ皮膚の露出を避けます。シャツの裾は、しっかりとズボンにたくしこみましょう。
  • 宿泊先には、網戸がしっかりされていて、蚊の駆除を行っている施設を選びましょう。また、事前に蚊帳を用意しておけば、網戸がなかった場合にも安心です。
  • 虫除け剤を正しく使いましょう。アメリカ合衆国疾病管理予防センター(CDC)は、皮膚に直接使える虫除け剤として、ディートユーカリ油ピカリジンを推奨しています。製品の注意書きに従って使用してください。
  • 虫除け剤は、皮膚の露出部に使用するか、衣服の上から使用します。目・耳・口や傷がある部位、皮膚が敏感な部位には使用しないでください。
  • 日焼け止めと虫除け剤を併用する場合、日焼け止めを先に使用してください。
  • お子さんに虫除け剤を使う場合は、必ず大人がつけてあげましょう。

ジカウイルスやデングウイルスは、すべての蚊が保持しているわけではありません。ですから、蚊に刺されたからといって心配しすぎる必要はないといえます。どうしても気になる場合は、帰国時に空港の検疫所などで相談すると良いでしょう。

蚊以外にも、注意したいこんなこと

ジカ熱では、性交渉による感染も認められています。ブラジル滞在中は性交渉を控えるか、必ずコンドームを使用してください。また、帰国したら男性は最低でも8週間(パートナーが妊娠中の場合は全妊娠期間中)、性交渉の際にはコンドームを使用するようにしましょう。女性の場合は、帰国してから最低でも8週間は妊娠を避けてください。

その他、以下にも気を配っておくと安心です。

  • 水道水は、たとえ都市部であってもそのまま飲むことは控えてください。一度沸騰させてから飲むか、ミネラルウォーターを飲むようにしてください。
  • 生ものは極力食べないようにしてください。消化器系の感染症やウイルス性肝炎(A型、B型など)には、1年を通して感染することがあります。
  • サシガメ(カメムシの一種)、サシチョウバエネズミなどから感染する病気も確認されています。蚊だけでなく、これらの生物が生息する場所に行く際にも、刺されたり噛まれたりしないように十分気を配りましょう。このほか、狂犬病も毎年発生しているので、野犬やコウモリなどの動物にも近寄らないでください。
  • 河川や湖にはむやみに入らないでください。皮膚から体内に侵入する寄生虫がいます。
  • リオ市の8月は、乾季となります。空気が乾燥するだけでなく、1日の温度差が大きくなるため、風邪や肺炎には十分に気をつけましょう。

帰国後に気になる症状が出たら…

ジカ熱やデング熱をはじめとする病気には、感染してから症状が出るまでにしばらく時間がかかります(潜伏期間といいます)。そのため、ブラジル滞在中は健康であっても、帰国してしばらく経ってから発熱などの症状が出るかもしれません。その場合は速やかに医療機関を受診してください。

この他、受診に際して知っておきたいことは「海外で病気になってしまったらどうすればいい?!」をご参照ください。

最後に

今回は、ブラジルに行く際に気をつけるべき病気について解説しました。スポーツ観戦に熱狂するあまり自身の健康管理を怠ってしまうと、思わぬ病気への感染に繋がってしまうかもしれません。自分の身は自分で守るための対策をしっかり講じましょう!