骨粗しょう症は高齢者に多い病気のひとつです。実は、日本の総人口の約10%が骨粗しょう症であるといわれており(武田薬品工業株式会社より)、決して他人ごととはいえない病気です。
特に閉経後の女性などがなりやすく、骨折などにより日常生活に大きな影響を与えてしまう場合もあります。今回は、骨粗しょう症で使用される薬についてお伝えしたいと思います。
なぜ骨粗しょう症になるのか?
骨は常に新しいものに作り替えられています。破骨細胞(はこつさいぼう)というものが古い骨のカルシウムを血中に放出させ、骨芽細胞(こつがさいぼう)というものがカルシウムを骨にくっつけて新しい骨を形成していくのです。またカルシウムを血中に放出することを「骨吸収」、新しい骨を形成することを「骨形成」といいます。
通常は、このバランスがうまくとれているため、骨は一定の強度を保ちます。しかし、様々な要因によりバランスが取れず、骨吸収ばかり行ってしまった場合などは、溶けていく骨の方が多くなり、骨自体がスカスカになってしまうのです。この状態が骨粗しょう症です。
そこで、骨粗しょう症の薬物治療では骨吸収を抑制し、骨形成を促進させる薬を用いることになります。
ビスフォスフォネート製剤
成分名(商品名)
アレンドロン酸ナトリウム(フォサマック、ボナロン)、イバンドロン酸ナトリウム(ボンビバ)、リセドロン酸ナトリウム(アクトネル、ベネット)、ミノドロン酸ナトリウム(ボノテオ、リカルボン)、ゾレドロン酸水和物(リクラスト)など
※ゾレドロン酸水和物は、2016年に発売された注射薬です。1年に1回の注射で効果を発揮します。
作用
薬によっては作用機序が少しずつ異なる場合がありますが、いずれも骨を溶かす破骨細胞の働きを強力に抑制することで骨吸収を抑制し、骨からカルシウムが出ていくのを防ぐようはたらきかけます。
服用時の注意
内服薬では、毎日飲むものや1週間に1回、月に1回のものなど様々な薬があります。また注射薬では、月に1回、年に1回のものもあります。投与間隔が様々なため、よく確認するようにしましょう。
ほとんどのビスフォスフォネート製剤は「起床時にコップ1杯の水とともに服用し、服用後30分は横にならないようにして、飲食も服用後30分以上たってから行うようにしてください」「薬を噛んだり、口の中で溶かしたりしないようにしてください」といった飲み方を指示されます。これは副作用である口内炎や食道炎を防ぐために速やかに胃に到達させる必要があるためです。
また、お薬の吸収をよくするために、服用後しばらくは飲食及び他の薬の服用を控えます。
服用時の注意として、水はカルシウムやマグネシウムを多く含んだミネラルウォーターは使わないようにしましょう。こうした成分は、お薬の吸収を悪くしてしまう可能性があります。
副作用
- 胃痛、胸やけ、下痢、便秘
- 顎骨壊死(がっこつえし)
- 外耳道骨壊死(がいじどうこつえし)
- 食道炎、食道潰瘍、口腔内潰瘍
顎骨壊死とは、あごの骨に炎症が起こり、腐った状態になることです。口の中の痛みがとれない、歯茎に白っぽい硬いものが出てきた、顎が腫れる、下唇がしびれる、歯が自然に取れたなどの症状がみられたら医療機関に相談してください。
頻繁に起こる副作用ではありませんが、服用中に抜歯などの外科的な歯科治療やあご付近への放射能治療など行ったときに生じやすいとされています。この薬の服用中に歯科にかかる際は、ビスフォスフォネート製剤を服用中である旨をしっかりと医師に伝えましょう。
さらに、口腔内が不衛生である場合も生じやすいとされているので、毎日の歯磨きを入念に行い、定期的に歯科に通って歯石の除去などを行いまいましょう。
外耳道骨壊死は、最近重大な副作用として追加された項目で、外耳道骨に炎症が起こり腐ってしまう状態です。こちらもまれにしか起こらないとされているため過剰な心配は必要ありませんが、外耳炎や耳だれ、耳痛が続く場合は医師に相談してください。
その他、お薬によって肝機能障害や低カルシウム血症といった副作用が報告されているものがあります。服用する際には、主治医・薬剤師の方によく確認するようにしましょう。
選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)

成分名(商品名)
ラロキシフェン塩酸塩(エビスタ)、バゼドキシフェン塩酸塩(ビビアント)
作用
女性ホルモンのエストロゲンは、骨吸収を抑制し骨形成を促進する作用があるため、骨を丈夫にするために必要なホルモンです。このお薬は骨などに対してエストロゲンと同じような働きをし、骨吸収抑制作用をもっています。
服用時の注意
血栓のリスクが高まる恐れがあります。長時間動くことができない場合(長時間の飛行など) は、こまめに水分を摂ること、定期的に足を動かしたりふくらはぎのあたりを揉みほぐしたりすることを心がけましょう。
副作用
- 乳房が張る
- ほてる
- 多汗
- 胃部不快感
- 吐き気
- 血栓症
血栓症は血の塊ができ血管が詰まってしまうことで、頻度は少ないものの重大な副作用として報告されています。手足やふくらはぎのしびれや痛み、突然の息切れや急な視力低下などの症状が出たらすぐに医師に相談してください。
カルシウム製剤
成分名(商品名)
乳酸カルシウム(乳酸カルシウム末など)、L-アスパラギン酸カルシウム(アスパラ-CAなど)
作用
血中のカルシウム濃度をあげることで、骨からカルシウムを放出する骨吸収を抑制します。
特徴
骨を作るカルシウム自体を補給させる薬です。他のお薬と併用することが多いです。
服用時の注意
特定のお薬(テトラサイクリン系抗生物質など)と一緒に服用すると、その特定のお薬の効果が落ちてしあうことがあるため、2、3時間あけてから服用するようにしてください。
副作用
腹部膨満感や胸やけなど
活性型ビタミンD3製剤
成分名(商品名)
アルファカルシドール(アルファロール、ワンアルファ)、カルシトリオール(ロカルトロール)、エルデカルシトール(エディロール)
作用
腸管からのカルシウム吸収を促進して、血中カルシウム濃度をあげます。その結果、骨からカルシウムを放出する骨吸収を抑制し、骨を新たに形成する骨形成も促進させます。
副作用
カルシウムを吸収しすぎて高カルシウム血症になる恐れがあります。治療しないまま放置しておくと腎臓の働きが悪くなるなどの症状が出てきますので定期的に血中カルシウム濃度の検査を行うとよいでしょう。
ビタミンK製剤
成分名(商品名)
メナテトレノン(グラケー)
作用
骨を形成する骨芽細胞の働きを助け、骨を丈夫にしますが作用は緩やかです。
特徴
ビタミンKは脂溶性ビタミンであるため、食後に服用することで吸収が良くなります。
服用時の注意
ワルファリン(抗血栓薬)服用中の方は、ビタミンKを服用するとワルファリンの効果が薄れてしまうため、一緒に服用することができません。
副作用
胃部不快感、吐き気など
ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤
成分名(商品名)
デノスマブ(プラリア)
作用
デノスマブがRANKL(破骨細胞分化促進因子)と結合し、破骨細胞の成熟を妨げ、骨吸収を抑制します。
投与時の注意
6ヶ月に1回注射します。低カルシウム予防のため、血中カルシウム濃度が高値でない限り、毎日カルシウム及びビタミンDを一緒に飲みます。また、定期的に血中カルシウム濃度を確認します。痙攣やしびれなどが出た場合は医師に相談してください。
副作用
- 低カルシウム血症
- 顎骨壊死
ビスフォスフォネート製剤と同様に、頻度は少ないものの顎骨壊死が起こる恐れがあります。この薬の服用中に歯科にかかる際は、服用中である旨をしっかりと医師に伝えましょう。
まとめ
骨粗しょう症の治療目的は骨折のリスク増大を抑えることです。そのため骨折リスクの高い患者さんの場合は積極的に薬を使っていく必要があります。
しかし、骨粗しょう症の薬物療法では、薬の処方率が低いこと、きちんと服薬を守らない方が多いことが問題視されています。万が一骨折してしまうと、ADL(日常生活動作)を低下させたり、認知症を発症したり、他の生活習慣病の治療に制限が出たりするなどのおそれがあります。
薬をしっかりと服用し、また運動や食生活に気を付けて骨を丈夫にして健康寿命を延ばし、より快適な老後が送れるよう意識して生活しましょう。