生まれつき身体の形や機能に異常が見られる先天異常の一つに、指同士がくっついている合指症、指の数が多い多指症があります。手は人の目に触れやすい場所なので気になりやすいですが、適切な治療によって見た目と機能の改善が見込めます。今回は指に起きる先天異常である合指症と多指症について説明します。

目次

合指症、多指症とは?その原因は?

合指症、多指症のタイプ、原因について説明します。また足に起きることの多い多合趾症についても触れます。

合指症

合指症とは指の一部、または全部が癒合している(くっついている)先天性の形態異常です。足の指(趾)の場合は合趾症と表記されます。

合指症はその癒合の程度によって、皮膚や皮下組織のみが癒合している皮膚性合指、骨にも癒合の存在する骨性合指に分けられます。

1,000~3,000症例に1例の割合で発生するとされています(KOMPASより)。多指症・短指症(生まれつき指が短い)・巨指症(指が部分的に巨大化する)などの手指の先天異常を合併することもあります。

原因

赤ちゃんの指は、胎内で最初から5本に分かれているわけではありません。1枚の板状の形をしていた手足のもとになる組織が、組織の壊死によって分けられていくことによって指の形が作られていきます。合指症はその指を形成する過程がうまくいかなかったために起きますが、その原因については特定の事柄が明らかになっているわけではありません。

多指症

名前の通り、正常よりも指の数が多い状態を多指症といいます。こちらも足の場合は多趾症と表記されます。増えた指の形は完全なものから、小さなイボのような形でわずかに突出しているものまで様々なタイプがあります。

手では親指、足では小趾に多く、1,000~2,000症例に1例の割合で起きるとされています(KOMPASより)。なお、足の場合は小指に生じた多趾が他の趾と癒合し(4趾5趾6趾が癒合することが多い)、多合趾症という形態をとることが多いです。

原因

合指症は指を形成する過程で組織がうまく分けられなかったために起こりますが、多指症は組織が余分に分けられてしまうために起きます。合指症同様、その原因に関して特定の事柄が明らかになっているわけではありません。

合指症、多指症の治療は?

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合指症、多指症ともに手術によって治療が行われます。

合指症の治療

合指症では指を分離させるための手術を行います。指の分離に伴って皮膚の足りない部分が生じるので、なるべくその部位の質感に近い皮膚を移植する植皮術も併せて行います。内踝(うちくるぶし)からの植皮が用いられることが多いですが、一度に多くの皮膚が必要となるような場合には、腹部の皮膚が用いられることもあります。

手術後はその部位を1~3週間ギプスで固定し、患部を保護します。創部が落ち着いたら傷跡のケアを行いつつ、指を動かしていくようにします。

一般的に、植皮された皮膚は周囲の正常な皮膚と比較して成長する力が若干劣るため、成長に伴い傷跡がひきつれたり、指が変形したりする可能性があります。そのため手術が無事に終わったとしても一定期間は経過観察のための通院を続け、追加治療の必要性などを判断することが重要です。

多指症の治療

正常な指に近い方を選んで残す必要があるため、機能面・整容面の両方から考慮して、切除する指はよく検討する必要があります。特に足の多合趾症の場合には判断が難しいこともあります。指の切除にあたっては、場合によっては骨を削ったり、筋肉を付け替えたりすることもあります。成長過程で傷跡のひきつれが生じたり、指の骨の並び具合(アラインメント)に支障をきたしたりする場合には再度修正のために手術を行うこともあります。

手術後は合指症同様、1~3週間ほどギプスで固定して創部の安静を保つことが多いですが、もともとの状態によって必要な安静期間は変わってきます。

 

手術する時期について

合指症、多指症ともに見た目や手指の使い方、歩行などへの影響を考えて1歳前ごろに手術を選択することが多いです。ただし、指の神経や血管の走行が特殊で、手術によって損傷する危険が高いような場合には、ある程度手足が大きくなるのを待ってから手術を行うこともあります。

部位や、合指・多指の程度にも変わってくるので、手術を受ける時期は医師とよく相談して決定しましょう。

まとめ

指が「多い」「少ない」「くっついている」の形態異常は、生命に直結する疾患ではありませんが、機能的な面でも整容的な面でも、本人の「生活の質:Quality of Life」に与える影響の大きい疾患です。適切に治療(手術)すれば改善が見込めるため、形成外科や整形外科の先生とよく相談し、その子に合わせた治療法を見つけていきましょう。