本来、ヒトの胸にある乳頭(乳首)は外に出ています。しかし中には乳首が引っ込んで外から確認できない場合もあります。この状態を陥没乳頭、もしくは陥没乳首といいます。見た目に引け目を感じるだけでなく、授乳の問題になったり病気が潜んでいたりする可能性があります。今回は陥没乳頭について説明します。

目次

陥没乳頭の種類と原因は

陥没乳頭は乳頭が乳輪より奥に引っ込んでいる状態です。普段は引っ込んでいても指で出せたり刺激で起き上がってくるタイプは仮性陥没乳頭、指で引っ張りだしたり刺激を与えても突出しないものは真性陥没乳頭と呼ばれています。

先天性の場合は乳房と乳管の成長速度に差が出てしまったと考えられています。母乳が出るための腺である乳管が短いので、乳頭が乳管に引っ張り込まれて内側に入っています。

後天的に陥没乳頭が起きた場合は乳腺炎乳がんのおそれも考えられます。乳がんの症状はしこりや形の変形、乳頭から分泌物が出るなど様々で、あくまでも陥没乳頭は症状の一つです。陥没乳頭が起きたからといって乳がんと決めつけず、他の症状が出ているか確認して気になった場合は病院を受診してください。

陥没乳頭によって起こる問題

お母さんの母乳を吸う赤ちゃん

乳頭が陥没しているとまず美容上の問題を気にしますが、次に挙げるような問題もあります。

授乳困難

赤ちゃんが母親の乳房から直接母乳を飲む時、口蓋(口の中の上の部分)と舌に乳頭をはさんで飲みます。出産すると母親は母乳が作られ乳房が張ってきますが、乳頭が陥没していると赤ちゃんは上手に咥えられません。

母乳保育の妨げになる他、赤ちゃんは母乳をうまく飲めずに泣いてしまい、母親も母乳を出せなくて痛んでしまうなど両者ともストレスが溜まる状況が生まれます。

乳腺炎

陥没している乳頭は細菌が繁殖しやすい状況です。乳管から細菌が侵入してしまうと、乳腺炎になります。乳房が赤くなったり、痛みを伴ったり、発熱があったりします。

乳輪下膿瘍

乳腺炎が慢性的に起こると乳頭や乳輪の下に膨らんだ腫瘍ができます。赤みや痛みを伴い、腫瘍から膿が自然と出てくる場合があります。

腫瘍部分から膿を出したり、抗菌薬を服用したりしても再発しやすい特徴があります。

陥没乳頭の治療方法

陥没乳頭の治療は程度が仮性か真性かによって異なってきます。

仮性陥没乳頭の場合

乳頭の吸引や付近のマッサージを続けることで改善が見込めるため、根気よく取り組みます。

吸引では小さなスポイトのような器具を乳頭に装着し、常に吸引し続ける状態を保つこともあります。マッサージは、乳頭を出した状態で乳頭そのものや乳輪を丁寧に柔らかくするように行います。妊娠中から取り組んでおくと良いでしょう。

垢がたまると乳腺炎の原因になるので、入浴中に陥没した乳頭をしっかり洗って垢が溜まらないにしましょう。

ただし、仮性陥没乳頭であっても、授乳困難や乳腺症・乳腺炎などの何らかの支障がある場合には手術を考えてもよいでしょう。真性陥没乳頭に比較して、手技が容易で再発も少ないです。

真性陥没乳頭の場合

吸引やマッサージを試しても改善しないようなら、手術を検討します。将来妊娠を希望する人など授乳する可能性がある場合は、乳管を切らないよう周りの組織をはがして、乳管を引き出すようにします。また授乳する可能性が無い場合は乳管を切断し、乳頭を引き出す方法もあります。

陥没の程度がひどい場合は、元の陥没乳頭に戻ってしまう例もあります。再発を予防するためには医師の指導を受けながら、吸引を続けていくと良いでしょう。

まとめ

陥没乳頭は、子供を望んでいる方にとって、トラブルを防ぐためにも事前に解決したい問題です。また、放置していると乳首に細菌が溜まって乳腺炎などを引き起こす可能性があるなど衛生的に良くありません。将来の予定などを踏まえながら、医師と相談して陥没乳頭のケアを行いましょう。