女性なら誰もが気になる乳がん。食生活の欧米化によって日本人の乳がん患者も増え、とても身近な病気になっています。2014年のデータでは、30歳から64歳までの女性の、がんによる死亡の1位にもなっています(日本対がん協会)。
でも、乳がんは自分で見つけられる可能性の高い、数少ないがんの一つです。胸に気になるしこりがあったら、それは乳がんかもしれません。ここでは乳がんの概要とセルフチェック、さらに乳房のしこりが起こる病気について解説します。
乳癌ってどんな病気?
乳癌の種類
乳がんには、乳房にできるがんです。大きくは非浸潤がん、浸潤がん、パジェット病の3つに分けられます。
- 非浸潤がん:乳管の壁から発生して乳管の中を広がる(乳管内進展)がんで、患者全体の約20%。
- 浸潤がん:乳管の壁を破って乳管の外に広がるがんで、最も患者数が多い。
- パジェット病:乳頭のびらん(ただれ)によって発見されるがんで、全体の1%未満。
※乳房のなかには乳腺という組織があり、女性の乳腺は赤ちゃんにミルクをあげるために発達しています。乳腺は、ミルクを作る小葉と、ミルクを乳頭まで運ぶ乳管から成り立っています。
浸潤がんの場合はしこり(腫瘤)として触って分かることもありますが、非浸潤がんは触れても全くわからないことも多く、マンモグラフィや超音波などの検査が必要です。乳頭がただれてなかなか治らない場合は、パジェット病の可能性があります。
乳がんは、男性にも発生することがあります。年間の死亡数でいうと女性の100分の1と、非常にまれながんです(日本医師会より)。
乳癌にかかりやすいタイプ
乳がんの発生には、エストロゲンという女性ホルモンが関わっています。
エストロゲンは女性の体にとって大切なホルモンではありますが、エストロゲンにさらされる期間が長いと、乳がんにかかりやすくなります。近年、食生活の欧米化に伴って女性の体格がよくなり、「初潮が早く閉経が遅い人」が増えたため、乳がんの発生率は上がっていると考えられています。
また、高脂肪の食生活や肥満なども乳がんのリスクを高めます。
以下の項目に多くあてはまる場合、乳がんにかかりやすいタイプであるといえます。
- 月経:初潮が早い、閉経が遅い(55歳以上)
- 出産や授乳:初産年齢が遅い、高齢で出産経験がない、授乳経験がない
- 遺伝:血のつながった家族や親戚に乳がんにかかった人がいる
- その他:長期間のホルモン補充療法をしたことがある
ちなみに、遺伝性の乳がんは、乳がん全体の5~10%程度だといいます(国際医学情報センターより)。近親者に乳がんの人が多い場合は、注意をしておきましょう。
乳癌の初期症状とは?
乳がんの初期には自覚症状がないこともありますが、以下のような症状がでることがあります。
- 乳房やわきの下にしこりがある
- 乳房にひきつれ、くぼみがある
- 乳頭の異常(湿疹・ただれ・分泌物)がある
- 乳房の皮膚に異常(発疹・はれ・ただれ)がある
- 乳房の膨大感(初赤・痛みを伴う)がある
しこりは硬い消しゴムか、硬くなったチーズのような感触で、触ってもあまり動きません。初期にはほとんど痛みはありません。また、体調不良や食欲不振といった変化はあまりみられません。
月に一度は乳癌セルフチェック!

乳がんは、早期に発見すれば治る確率の高い病気です。20歳を越えたら乳がんのリスクは徐々に上がっていきますので、自分でチェックするように心がけましょう。
自分で見つけられるしこりの大きさは2cm以上といわれていますが、日ごろからチェックをしていると、1cmでも見つけられるようになります。ぜひ習慣づけてください。
セルフチェックは月に1度を目安に行います。閉経前の人は、乳房の張りが少ない月経終了後1週間くらいの間に行い、閉経後の人は毎月覚えやすい日にちを決めるとよいでしょう。ここからは、具体的なチェックの方法をご説明します。
ステップ1:目で見てチェック
鏡の前に立って頭の後ろで両手を組み、胸の筋肉を緊張させて、変化を見ます。
チェックポイント
以下のような異変がないか、確認しましょう。
- 乳房のくぼみ、ひきつれ
- 変形
- ただれ
- 左右の差
- 変色
ステップ2:さわってチェック
親指以外の4本指をそろえて、乳房全体と脇の下を小さく「の」の字をたくさん書くようにして触ります。入浴時に手に石鹸の泡などをつけて触ると、より分かりやすくなります。
チェックポイント
- 気になるしこりはないか
ステップ3:つまんでチェック
乳頭をやさしくつまみます。軽くしぼるようにして、乳頭を観察してください。
チェックポイント
- 分泌物や出血はないか
ステップ4:仰向けになってチェック
仰向けになって、背中の下に低めの枕かタオルを入れ、乳房の外側から内側へ指の腹を滑らせます。
チェックポイント
- 気になるしこりはないか
乳房のしこり=乳がん、とは限らない
上記のチェックを行って、乳房にしこりなどの異常があった場合でも、すべてが乳がんとは限りません。乳腺症や乳腺線維腺腫、乳腺炎などの病気の可能性もあります。ここからは、乳房のしこりが症状として表れる病気を紹介します。
乳腺症
乳房のしこりを見つけて受診する人の中で、最も多い病気が乳腺症です。30代後半から閉経前後の女性に多く、両方の乳房にしこりが見られるほか、乳房の痛み、乳頭からの分泌物がみられます。月経の前に症状が強くなり、月経が終わると症状が軽快します。また、しこりを触るとよく動くという特徴もあります。
乳腺症の多くは閉経後に自然によくなるので、治療を行わず経過観察を行うケースが多いです。しかし、痛みが強い場合は薬による治療を行います。
乳腺線維腺腫
10代後半から20代にみられる乳房のしこりは、ほとんどが乳腺線維腺腫です。腫瘍ではなく、女性ホルモンによって乳腺組織が異常に増殖してしまった状態です。しこりは触ると弾力があり、コロコロとよく動きます。
基本的に切除する必要はありませんが、大きくなってしまった場合には摘出手術を行います。
乳腺炎
授乳中の胸のしこりは、乳腺炎の可能性があります。乳腺炎は、授乳中のトラブルとしてよくみられるものです。乳房の中に乳汁がたまって炎症を起こしてしまううっ滞性乳腺炎と、乳頭にできた傷などから細菌が侵入してしまう化膿性乳腺炎とがあります。
症状としては乳房のしこりや痛みに加え、発熱、乳房の赤みや熱感などがみられます。乳腺炎については「授乳のトラブル、原因は乳腺炎かもしれません。その症状とは?」をご参照ください。
これらの病気は、自分では判断が難しいものです。いずれにしても、乳房のしこりがみられたら、必ず乳腺専門医の診断を受けるようにしましょう。
まとめ
胸のしこりのセルフチェック方法を紹介しました。乳がんにかかりやすいタイプでなくても、絶対に大丈夫とは言い切れません。毎月ちょっとした時間をみつけてセルフチェックをするだけで、乳がんを早期に発見でき、完治の可能性もぐっとあがります。自分だけは例外などと思わずに、ぜひ毎月のチェックを習慣にしていきましょう。