糖尿病にかかっている患者さんの数は近年増加傾向にあり、2014年度の調査では約316万6,000人に達しました(厚生労働省より)。遺伝や感染症など不可抗力な原因によって糖尿病を発症することもありますが、実際は不規則な生活習慣などで発症するケースがほとんどです。そんな数多くの糖尿病の患者さんに幅広く利用されているのが血糖自己測定です。血糖自己測定は、病院などで実施されている血糖値の測定を患者さんが自分自身で行うもので、インスリン等の薬剤の服用者や妊婦さんは保険適応となります。ここでは、血糖自己測定の正しいやり方、そして検査値の見方について確認していきましょう。

目次

血糖自己測定の意味って?

食事によって摂取した糖分は、少しずつ血中に取り込まれます。食後1~2時間に血糖値はピークを迎え、その後次の食事摂取まで時間をかけて少しずつ低下していきます。したがって、血糖値は一日中数値が上下していることになります。また、薬剤やホルモンなどの様々な要因によっても血糖値は変化します。

来院前の食事や服薬の影響を血糖値が受けている可能性があるため、病院に通院したときに血糖値を測っただけでは、患者さんの正確な血糖値の変化を把握することはとても難しいのです。そこで、家庭の様々な場面で血糖自己測定を行う必要が生じます。ここで活躍するのが、血糖自己測定です。

血糖自己測定って難しいの?

病院でやってもらっていたことを自分でするとなると、とても面倒で難しいというイメージを持つかもしれません。ですが、血糖自己測定のやり方は非常にシンプルで、一度慣れてしまえばとてもスムーズに実施することができます。以下で、最も一般的な血糖自己測定のやり方について説明しましょう。

準備するもの

血糖測定器、センサー、穿刺具、消毒綿、針捨てボックスなどを準備します。これらは糖尿病の状態にもよりますが、医療保険の補助を受けて購入できることもあります。

感染症対策

針を刺して血液を体外に露出させる検査であるため、手指の衛生は徹底する必要があります。検査前には、きちんと手洗いを行い、よく乾かした後にアルコールなどで消毒します。

針を刺し、血糖値を測定する

やはり感染症対策のために、針を刺す場所をアルコール綿で丁寧に拭いて消毒します。そして指先に針を刺して少量の血液を吸いとり、それを測定器に取り込みます。ほとんどの測定器では数秒で結果が表示されるのでしばらく待ちます(なお、指先以外の部位で測定した血糖値は一般的に信頼性がそれほど高くないとされています)。

片づけ

片づける際に気をつけるべきことは、針の取り扱いです。血液によって汚染された針を他人が誤って刺してしまうと、肝炎やHIVなどの感染を引き起こすこともあり非常に危険です。針専用のボックスなどできちんと管理し、各自治体のルールにしたがって安全に処分しましょう。

血糖値のみかた

血糖値が126mg/dl以上(空腹時)、または200mg/dl以上(食後2時間値)を超えると糖尿病域であるとされています(日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン 2016)。この様な数値を参考にしながら、測定結果をみてみると良いでしょう。また、血糖自己測定の最大の意義は「血糖の数値変動を知る」ことなので、測定値をノートなどにしっかりと記録しておき、医師の診察時に役立てられるようにしておくことも重要です。

まとめ

血糖自己測定を実施している患者さんは、数多い糖尿病罹患者のなかでも少数派かもしれません。ですが、血糖値のコントロールにおいて血糖自己測定の果たす役割は非常に大きいものです。特に、インスリン注射を利用している患者さんは血糖値の変動が非常に激しいため、血糖自己測定の必要性は高くなっています。これをきっかけに、血糖自己測定への正しい向き合い方を再確認しておきましょう。