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C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(別名HCV)の感染により肝細胞が壊れて肝臓の働きが悪くなる病気です。感染すると約60~80%が持続感染者(HCVキャリア)になるといわれています(熊本大学大学院生命科学研究部消化器内科より)。そしてそのうちの3人に1人が、約20〜25年後に肝硬変肝臓がんへと進行する心配があります(富山医師会より)。

現在、C型肝炎の感染者は世界で約1億7000万人、日本では約150〜200万人と推定されています(日本肝臓学会・C型肝炎治療ガイドライン(PDF)より)。肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、自覚症状がほとんどないのが特徴です。病気が進行して発見されると治療は難しくなります。そのため、定期的な健康診断や人間ドッグを受けることはとても大事です。

肝炎ウイルスは、どこで感染する?

C型肝炎ウイルスは、主に感染者の血液から感染します。通常の生活で、他人の血液に直接触れる機会がなければ、感染の恐れはほとんどありません。空気感染や経口感染もありません。

母子感染や性行為による感染の確率は低く、唾液や汗、尿などで感染することもほとんどありません。また、現在使われている輸血用の血液や血液製剤は、十分な検査が行われているため感染の心配はないでしょう。現在では、次のような感染経路が懸念されています。

  • 感染者とのカミソリや歯ブラシの共用
  • 汚染された注射器や注射針による医療行為(民間療法を含む)
  • 消毒されていない針やグライダーを使った刺青彫り
  • 消毒されていない器具を使ったピアスの穴開け

感染予防の「ワクチン」は現在ない

C型肝炎ウイルスの感染予防ワクチンはまだ開発されていません。感染を予防するには、感染者の血液に触れないことが大切です。もし感染した場合、約2~14週間の潜伏期間を経て急性肝炎を起こします。

ところが急性肝炎は、自覚症状がほとんどないため気づかない人が多いようです。放置されたまま、定期検診などによって「自分がC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)である」と判明する人が多くいます。HCVキャリアの方の約65~70%は、初診の検査で慢性肝炎と診断されています(日本医師会より)。

自覚症状は約13%、なぜ「沈黙の臓器」か?

肝臓は約3000億個の肝細胞で構成され、人間の体でもっとも大きい臓器です。栄養分(糖質、タンパク質、脂肪、ビタミン)を貯蔵する、有害物質を解毒するのが主な働きです。

肝細胞は一部が障害を受けても、残った細胞でその働きを代償する機能(代償機能)や、多少の障害を受けても元に戻る機能(再生機能)を持っています。少々の傷害では症状として現れないのが特徴です。そのため「沈黙の臓器」といわれています。しかしそれは、症状が現れたときには、病気が進行しているという恐ろしさにも繋がります。

C型肝炎ウイルスに感染すると、全身の倦怠感・食欲不振・嘔吐・黄疸(皮膚や目が黄色くなる症状)などの症状が現れます。しかしほとんどの場合、自覚症状がないまま経過し、「慢性肝炎」にまで進行して発見されます。自覚症状が感染の発見に繋がるのは、約13%です(富山県医師会より)。ほとんどの人は健康診断・献血・人間ドックなどで見つかっています。

その他、手のひらが赤い、足のむくみが見られる、お腹が膨らんでいる、鼻血が出やすいなどの症状があるときには、肝硬変の疑いがあります。すみやかに消化器内科を受診してください。できれば、肝臓の専門医を受診すると良いでしょう。

C型肝炎の治療方法

まずは抗ウイルス療法によりウイルスの完全駆除を目指しますが、適応がない場合には肝庇護療法が採用されます。ここ数年の新薬登場により、ほとんどの患者さんに抗ウイルス療法が適応となり、話題になりました。

抗ウイルス療法

抗ウイルス療法は、ウイルスの駆除により肝炎の完治を目指す治療法です。治療に至るまでに、抗体検査によりC型肝炎ウイルスに対する抗体の有無の確認、C型肝炎ウイルス核酸増幅検査による現在の感染有無の確認、そしてウイルスの型(ジェノタイプ)の検査を行います。C型肝炎はウイルスの型によって効果が大きく異なるため、型を調べたうえで一番効果が期待される治療法を選択します。

インターフェロン療法、飲み薬との併用療法

従来から行われている治療法で、インターフェロンという注射薬を使用する方法です。治療期間は24~72週間かかり、単独での治療の場合、有効率(ウイルスが完全に駆除される割合)は約30%とされてきました(日本医師会より)。抗ウイルス薬であるリバビリンという飲み薬との併用療法の登場したことで、有効率は40~50%(日本医師会より)に改善されたものの、副作用が強いことやウイルス量が多い場合には効きづらいことなどが課題でした。

インターフェロンフリー療法

これまではインターフェロン療法で効果がない場合や副作用が強い場合などは、抗ウイルス療法が行えないため、C型肝炎は完治が難しい疾患とされてきました。しかし、新薬が開発・承認されたことで、抗ウイルス療法の新たな選択肢が増え、現在ではほぼ100%に近い患者さんに対してウイルスの駆除が可能となりました(東京医科歯科大学消化器内科より)。新薬の登場により、これまで適応がなかったウイルスの型にも対応できるようになったのです。さらに、飲み薬を用いた治療で、治療期間も12~24週間とインターフェロン療法に比べて短く、副作用も軽減されたことが、治療にかかる患者さんの負担を大きく改善してくれました。

抗ウイルス療法の適応がない場合

インターフェロンフリー療法が認められるまで抗ウイルス療法に適応がない患者さんも多く、その場合には肝庇護療法肝がんの早期発見・早期治療による延命治療が行われてきました。肝庇護療法は、ウルソデオキシコール酸やグリチルリチン配合剤といった肝臓の炎症を抑える薬を投与する対炎症療法です。加えて、画像検査や血液検査による腫瘍マーカーなどの値の測定を用い、炎症の進行具合を確認し、肝硬変や肝がんの早期発見に努めます。

ウイルスが消えても、定期的に通院する

C型肝炎の治療は、新薬の開発により、高い確率でC型肝炎ウイルスを排除することができますが、悪化した肝臓病が完治するわけではありません。引き続き、医療機関で経過観察を受けることが必要です。肝硬変や肝がんなど深刻な状態に進行しないよう、定期的な診察と検査が大事です。

まとめ

C型肝炎は、C型肝炎ウイルスによって肝細胞が壊れる感染症です。主に、感染者の血液に触れることで感染します。初期には自覚症状がなく、検診や人間ドックで発見されるケースがほとんどです。新薬の登場によりほとんどの患者さんが抗ウイルス療法が選択できるようになり、ウイルスの完全駆除により完治が目指せる病気となりました。一方で、ウイルスが排除されたあとでも、肝硬変などの心配が残るため、定期的な診断を受けることが大事です。